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ICLとIPCLの違い
~誰も知らない、誰も教えてくれない違い~

眼内レンズ専門医だから言えるスペックの詳細です。ネットにも乗っていない情報も多数かと思います。一般の方には難しいかもしれませんが、ICL、IPCL術者の知識の拠り所になるかと思い、以下をまとめます。
やはり、ポイントは、ICL,IPCLの手術に熟達した、深い知識を持った眼科専門医かつ眼内レンズ専門医の手術を受けるのが良いということです。

  1. 基本情報と材質
  2. 度数範囲とサイズ
  3. 光学設計と性能
  4. 構造デザインと物理的特徴
  5. 手術と臨床パラメータ
  6. 臨床成績と安全性
  7. 合併症と有害事象
  8. サービスと納期
  9. 特徴的な利点まとめ
  10. ICLとIPCLの違い まとめ

1.基本情報と材質

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
メーカー STAAR Surgical Care Group (AddVision)
材質 Collamer (HEMA/ブタコラーゲン含有ポリマー)
ややコシがある
強化ハイブリッドハイドロフィリックアクリル
非常に柔らかい
動物由来成分 あり(ブタコラーゲン) なし
厚さ 標準 ICLより約30%薄い
含水率 38% 26%
屈折率 1.465 1.465
アッベ数 記載なし 60(高いアッベ数は色収差が少ないことを示す)
UVカットオフ 377-388 nm 420 nm
表面品質 具体的データなし 電子顕微鏡による測定で表面粗さが少ない

2.度数範囲とサイズ

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
球面度 -0.5D 〜 -18.0D (EVO) -30.0D 〜 +15.0D
数範囲 -0.5D 〜 -14.0D (EVO+)
円柱度数範囲 +1.0D 〜 +4.0D(トーリックモデル) +0.5D 〜 +10.0D
老視用度数 なし +1.5D 〜 +4.0D(老視矯正モデル)
全体径 12.1mm、12.6mm、13.2mm、13.7mm(4サイズ)(今後サイズ展開あり) 11.0mm 〜 14.0mm(0.25mm間隔、13サイズ
光学部径 4.9〜5.8mm (EVO)
5.0〜6.1mm (EVO+)
標準:5.8mm
カスタム:最大7.5mm
中央孔径 0.36mm(単純な円柱形状) 内径420μm/外径380μm(円錐形状)

3. 光学設計と性能

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
光学部設計 凹/凸型(concave/convex)設計 非球面(Aspheric)設計
Myopia :negative meniscus ,
Hyperopia:Positive Meniscus
光学特性 詳細な非球面設計については明記なし 非球面
中央孔の形状 単純な円柱形状 円錐形状(漏斗効果による房水流と光反射の低減?)
追加開口部 ハプティクスに2つ 上部光学縁に2つ、光学-ハプティック移行部に4つの追加開口部
老視矯正技術 あり 特許取得済み回折-屈折技術・動的エネルギー転送(DET)
角度可変ステップ設計(6°〜65°)
アポダイゼーション設計

4. 構造デザインと物理的特徴

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
ハプティック設計 4点接触ハプティクス 6点接触スプリングハプティック
ハプティック機能 固定位置 スプリング効果により過度の張力に対応
ハプティック機能 固定位置 スプリング効果により過度の張力に対応
ボールト(間隙) フォワードボールト設計 1.2mm〜1.8mm
トーリック設計 軸に合わせた回転が必要 「スマートトーリック」:常に0-180°の水平位置
位置合わせマーキング ハプティックとレンズ軸に位置マーキング フットプレート上の位置マーキング

5. 手術と臨床パラメータ

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
切開サイズ 3.5mm以下 2.8mm
挿入システム MICROSTAAR注入器
MSI-PF/TF(SFC-45カートリッジ)
ヒンジ付きカートリッジ
前房深度要件 3.0mm以上(角膜内皮から水晶体前嚢) 3.0mm以上(角膜内皮から水晶体前嚢)
年齢制限 21〜45歳? 21〜45歳?推奨(老視対応モデルは40歳以上も)
最小内皮細胞密度 年齢別要件(21-25歳:2800 cells/mm²以上) 左同

6. 臨床成績と安全性

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
裸眼視力改善 術前検査予測にほぼ合致。
長期に安定
術前検査予測にほぼ合致。
長期に安定
予測可能性 非常に高い 非常に高い
視力改善 術前CDVA比較で術後UDVA同等以上が多数 術前CDVA比較で術後UDVA同等以上が多数
症例数/経験 数百万眼以上 130,000以上の症例(25カ国以上)
国内承認 あり あり
ボールト安定性 経年的にややボールトは落ち着く 3年間のボールト測定で十分な安定性

7. 合併症と有害事象

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
白内障形成 非常に少ない 非常に少ない
瞳孔ブロック 中央孔設計により発生率低下
ほぼ発生しない
中央孔およびマルチホール設計により防止
光学部設計条件により発生しうる
ハプティクスくびれ
眼圧上昇 ほぼなし(当院) ほぼなし(当院)
内皮細胞減少 最小限 最小限
網膜剥離 高度近視の一般的リスクと同じ(手術の有無にかかわらず) 高度近視の一般的リスクと同じ(手術の有無にかかわらず)
グレア/ハロー 光学部サイズとの関連性
初期は感じる。
光学部サイズとの関連性
初期は感じる。

8. サービスと納期

EVO/EVO+ ICL IPCL V2.0
標準納期 一般的に1〜2週間
4~6ヶ月(製造)
2ヶ月半(すべて製造)
カスタマイズ対応 限定的 すべてのレンズがフルカスタマイズ
特急対応 地域による 市場によって対応可能
バックアップレンズ トーリックは無し 標準設定
計算サポート STAARの計算ソフトウェア オンライン計算ソフトウェア
トレーニング 医師認定プログラム必須 移植前トレーニング提供

9. 特徴的な利点まとめ

EVO/EVO+ ICLの利点 IPCL V2.0の利点
  • 米国FDAの承認取得
  • 豊富な臨床データ
  • 確立されたメーカー実績
  • より広い度数範囲(+15.0D〜-30.0D)
  • 13種類の詳細なサイズ選択肢
  • 「スマートトーリック」設計(回転不要)
  • 老視矯正モデル(+1.5D〜+4.0D)
  • バックアップレンズ標準提供

10. ICLとIPCLの違い まとめ

ICLは30年以上ものインプラントによる臨床成績があり、それに付随するソフトも成熟している。IPCLはそれに比べると新参。ハードソフトの改善余地もある。しかし、フルカスタマイズで作れたりなど勝る点も多く、ポテンシャルが高い。屈折矯正の必要度数などを考慮し、熟達した術者による選択、手術が最も重要である。

●ICL(EVO)・IPCLの手術については、こちらのページをご覧ください。

ASUCAアイクリニック 仙台マークワンは、眼内レンズ手術、硝子体手術、目の周りのまぶたなどを治療する手術専門クリニックです。
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記事監修者について

野口 三太朗

  • ASUCAアイクリニック 仙台マークワン 主任執刀医
  • 社会医療法人 三栄会 ツカザキ病院 眼科 医長
  • 日本眼科学会認定 眼科専門医

2006年、東北大学医学部卒業。その後、東北大学医学部眼科学教室、ツカザキ病院、石巻赤十字病院眼科などで経験を積む。2021年に大阪大学大学院博士課程修了。2022年、宮城県仙台市に位置する「ASUCAアイクリニック」の主任執刀医を務める。専門分野は白内障手術・網膜硝子体手術。
数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。
日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会ほかの各会員。医学博士。

免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。