白内障手術のとき、乱視矯正をしない手はない
トーリック眼内レンズ完全ガイド:乱視矯正の革新的選択肢
~多焦点眼内レンズに並ぶプレミアム付加価値レンズ~
- トーリック眼内レンズとは
- 乱視とは:原因と症状
- 乱視がある見え方 vs 乱視がない見え方
- なぜ眼内レンズによる乱視矯正が必要なのか
- トーリック眼内レンズの仕組みと特徴
- 保険診療で受けられるトーリック眼内レンズ移植
- トーリック眼内レンズを提供する医療機関の特徴
- トーリック眼内レンズ移植の手術プロセス
- 術後の経過と注意点
- トーリック眼内レンズに関するよくある質問
トーリック眼内レンズとは
トーリック眼内レンズ(Toric Intraocular Lens)とは、白内障手術時に挿入される特殊な眼内レンズの一種で、従来の球面眼内レンズとは異なり、乱視を同時に矯正する機能を持っています。
通常の眼内レンズが球面(すべての方向で同じ屈折力)であるのに対し、トーリック眼内レンズは非球面で特定の軸に沿って異なる屈折力を持つように設計されています。この特性により、角膜乱視を効果的に補正することができます。
トーリック眼内レンズは、白内障と乱視を同時に治療するための革新的なソリューションとして、10年以上前から急速に普及しています。
乱視とは:原因と症状
乱視の原因
乱視は、角膜(目の表面)や水晶体の形状が完全な球面ではなく、ラグビーボールのような形状になっていることで生じます。正常な角膜は均一なカーブを持ちますが、乱視がある場合は角膜の湾曲が不均一となります。
乱視には主に以下の種類があります。
- 規則性乱視:角膜の湾曲が一定のパターンで不均一
- 不規則性乱視:角膜の湾曲が不規則(外傷や疾患による場合が多い)
乱視の症状
乱視があると、光が網膜上の一点に正確に集まらず、以下のような症状が現れます。
- 映像のぼやけやゆがみ
- 眼精疲労や頭痛(特に長時間の読書やデジタル機器使用時)
- 視力低下(遠方や近方の視力が不安定)
- 目を細める習慣(無意識に視力を改善しようとする行動)
乱視がある見え方 vs 乱視がない見え方
乱視がある場合の見え方
乱視がある目では、光が網膜上の一点に焦点を結ばないため、物体がぼやけたり歪んだりして見えます。以下はその特徴です。
- 明暗のコントラストが低下する
- 夜間に光源の周りににじみや尾を引いたように見える
乱視がない場合の見え方
乱視がない正常な視力では、以下のような見え方となります。
- 輪郭がシャープで明確
- 文字や数字がくっきり読める
- 光源がシャープに見え、にじみがない
見え方のシミュレーション
乱視がある場合とない場合の見え方の違いを理解するために、以下のようなシミュレーション画像を比較すると分かりやすいでしょう。
乱視がある見え方の例: 街の風景や交通標識がゆがんで見え、特に夜間の信号や街灯が放射状に広がってにじんで見えます。テキストを読むときは文字の一部がぼやけ、長時間の読書は目の疲れや頭痛の原因になります。
乱視がない見え方の例: 同じ風景でも、輪郭がくっきりと見え、交通標識の文字も明確に読み取れます。夜間の光源も鮮明で、長時間の読書や画面作業も疲れにくくなります。

なぜ眼内レンズによる乱視矯正が必要なのか
白内障手術では混濁した水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入します。しかし、従来の球面眼内レンズでは乱視を矯正することができません。そのため、以下のような問題が生じます。
従来の手術における課題
- 術後も乱視が残存:通常の眼内レンズでは乱視は改善されず、白内障が治っても視力が完全に回復しない
- メガネ依存の継続:乱視矯正のためにメガネが必要となる
- 視力の質の低下:コントラスト感度や夜間視力の低下
- 日常生活への影響:運転、読書、デジタル機器の使用などに支障が出る
- 追加治療の必要性:場合によっては乱視矯正のための追加手術やレーザー治療が必要
トーリック眼内レンズのメリット
トーリック眼内レンズを使用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 一度の手術で白内障と乱視を同時に治療
- メガネ依存度の大幅な軽減
- 視力の質の向上(特にコントラスト感度)
- 日常生活の質の向上
- 追加治療の回避
- 長期的なコスト削減(メガネの更新費用の節約)
トーリック眼内レンズの仕組みと特徴
基本構造
トーリック眼内レンズは以下のような特徴を持っています。
- トーリック設計:異なる子午線に沿って異なる屈折力を持つレンズ
- マーキング:正確な軸合わせのための目印が付いている
- 生体適合性の高い素材:長期使用に適した素材で作られている
種類と選択基準
トーリック眼内レンズには様々な種類があり、乱視の程度や患者さんのニーズに応じて選択されます。
- 単焦点トーリック眼内レンズ:特定の距離(通常は遠方)に焦点を合わせる
- 多焦点トーリック眼内レンズ:乱視矯正と老眼対策を同時に行う(保険適用外)
- EDOF(焦点深度拡張型)トーリック眼内レンズ:広い焦点範囲を持つ
国際的な位置づけと最新動向
国際的には、トーリック眼内レンズは基本的に単焦点レンズであるものの、多焦点眼内レンズと同様に「プレミアム眼内レンズ」として扱われています。これは通常の球面レンズと比較して、明らかな付加価値を持つレンズであるため。その分、コストも多くなるのが常識です。
乱視矯正機能の有無は患者さんの術後視力の質に大きく影響します。乱視矯正がない眼内レンズと比較して、トーリック眼内レンズを使用した場合の視力の質や日常生活の快適さは格段に向上します。この点が「プレミアム」としての価値を生み出しています。
海外では日本と同様に、角膜乱視0.5D以上の症例にも乱視矯正トーリック眼内レンズが開発・製造され、広く使用されています。わずかな乱視でも視力の質に影響するという考え方に基づき、多くの患者さんが恩恵を受けられるようになっています。
日本国内でも医学的には角膜乱視0.5D以上から使用可能であり、実際に様々な度数のトーリックレンズが使用されています。
保険診療で受けられるトーリック眼内レンズ移植
日本ではトーリック眼内レンズの移植が保険適用です。これは患者さんにとって大きなメリットです。(海外では追加費用が必要)
保険適用の条件
以下の条件を満たす場合、トーリック眼内レンズの移植が保険診療として認められます。
- 角膜乱視度数があること
- 白内障手術が必要な状態であること
保険適用のメリット
保険適用によるトーリック眼内レンズ移植では、
- 患者負担の大幅な軽減:特別な費用負担なく高度な治療を受けられる
- 医療の公平性の向上:経済的な理由で治療を断念せずに済む
- 生活の質の向上:適切な視力矯正による日常生活の改善
注意点
保険適用となるのは単焦点のトーリック眼内レンズのみです。多焦点タイプやEDOF型は現在も保険適用外となっています。
トーリック眼内レンズを提供する医療機関の特徴
トーリック眼内レンズを積極的に提供している医療機関には、以下のような特徴があります。
高い診療レベル
- 専門的知識と技術:乱視矯正に関する深い理解と手術技術
- 最新の医療機器:精密な乱視測定や手術に必要な先進機器の導入
- 豊富な経験:多数のトーリック眼内レンズ移植実績
- 継続的な医療教育:最新の知見や技術の習得
- チーム医療の実践:専門スタッフによる総合的なサポート
当院の取り組み
当院では、保険診療でのトーリック眼内レンズ移植を積極的に行っています。乱視があり白内障手術が必要な患者さんには、適応条件を満たす場合、追加費用なしでトーリック眼内レンズをご提案しています。
トーリック眼内レンズ移植の手術プロセス
術前検査と準備
- 詳細な屈折検査:正確な乱視の度数と軸を測定
- 角膜形状解析:角膜の形状を3次元的に測定
- 眼内レンズ度数計算:最適なレンズ度数を算出
特殊技術
当院では以下のような先進技術を用いて精度の高い手術を実現しています。
- デジタルマーキングシステム:手作業によるマーキングよりも高精度
- 術前波面収差解析:手術前に詳細な光学的特性を評価
術後の経過と注意点
注意点
- レンズ回転の可能性:術後にレンズが回転することがある
- 視力適応期間:脳が新しい視覚に慣れるまで時間がかかる場合がある
- 残余乱視の可能性:完全に乱視が消失しない場合もある
トーリック眼内レンズに関するよくある質問
- トーリック眼内レンズは本当に保険適用になるのですか?
- はい、角膜乱視度数が0.5D以上ある場合施行可能です。当院では適応条件を満たす患者さんには追加費用なくトーリック眼内レンズをご提案しています。ただし、全例おいて移植すればよいというわけではありません。
- 手術後もメガネは必要ですか?
- 多くの患者さんで乱視が大幅に改善し、日常生活でのメガネ依存度が減少します。ただし、軽度の残余乱視や老眼がある場合は、特定の状況(細かい作業や読書など)でメガネが必要になることもあります。
- 手術の痛みはありますか?
- 点眼麻酔を使用するため、ほとんどの患者さんは痛みを感じません。
- トーリック眼内レンズの寿命はどれくらいですか?
- 現代の眼内レンズは非常に耐久性が高く、基本的には一生涯使用できるように設計されています。レンズ自体が劣化することはほとんどありません。
- 両眼同時に手術を受けることができますか?
- 通常白内障と同様に受けることも可能です。片眼ずつでも構いません。
- なぜトーリック眼内レンズを移植してくれる施設が少ないのでしょうか?
- トーリック眼内レンズを提供する施設が比較的少ない理由にはいくつかの要因があります。
- 技術的な専門性:トーリック眼内レンズの移植には通常の白内障手術よりも高度な技術と経験が必要です。特に乱視軸に合わせた正確なレンズ配置が求められるため、専門的なトレーニングを受けた医師が必要となります。
- 追加の設備投資:正確な乱視測定や術前計画のための特殊な機器(角膜形状解析装置など)が必要となり、これらの設備投資を行っていない施設も多いです。
- 時間と人的リソース:一例あたりの診療時間が長くなる傾向があり、術前計画も詳細に行う必要があるため、多くの患者さんを診療する一般的な眼科クリニックでは導入が難しい場合があります。
- 手術後のフォローアップ:レンズの回転などの可能性もあり、通常よりも丁寧な術後管理が求められるため、対応できる体制が整っていない施設もあります。
当院では患者さんの視力の質を最優先に考え、適応のある方には保険診療内でトーリック眼内レンズを積極的に提供しています。これは当院の患者本位の姿勢と高い技術力の表れであると自負しています。
ASUCAアイクリニック 仙台マークワンは、眼内レンズ手術、硝子体手術、目の周りのまぶたなどを治療する手術専門クリニックです。
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免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。