近視
myopia
近視について
急速に増加している近視
●小学生の約7割、中学生の約9割以上が近視
近年、小中学生で視力1.0未満の割合が年々増加していることは 知られていましたが、2019年8月に発表された慶応大学の研究で 「東京都内約1400人の小中学生を調査したところ、小学生の約 76.5%、中学生の94.9%が近視になっていること」が判明しました。
野口三太朗医師ブログ
子どもの近視に関する包括的考察~近視進行の原因、合併症、治療法~
https://asuca-eye.com/blog_doctor/2024/10/07/1406/
こちらもご覧ください。
●パソコン・タブレット・スマートフォンの普及でさらに加速
近年、小中学生で視力1.0未満の割合が年々増加していることは 知られていましたが、2019年8月に発表された慶応大学の研究で 「東京都内約1400人の小中学生を調査したところ、小学生の約 76.5%、中学生の94.9%が近視になっていること」が判明しました。
近視になる原因は?
●眼球が変形すると元に戻らない
近視眼では眼軸長(眼球の奥行き)が過剰に伸長して、角膜から網膜までの距離が長くなる眼球の変形が知られています。単に過剰に調節力が働いたままの状態での一時的な近視化は、トレーニングや点眼治療などでの回復が期待できますが、眼軸長が伸長して眼球が変形してしまった場合は回復が期待できません。
なぜ環境要因で近視が進むのでしょうか?
手元よりにピントを合わせた状態が続くとその距離を見やすいように順応するために、眼軸長(目の前後の長さ)が伸びたりして眼球全体の屈折力(目の度数)が手元よりにかわってくることで、近視が進むと言われています。 ひよこの実験で「狭い空間」で育てた場合と「広い空間」で育てた場合を比較すると、「狭い空間」の方が眼軸長の延長(=近視化)があると実験的に証明されています。人間の場合も眼軸長が長くなるほど近視の度数が強くなります。
単に過剰に調節力が働いたままの状態での近視化(調節緊張・いわゆる仮性近視)は、トレーニングや点眼治療などでの回復が期待できますが、その状態が長く続いて眼軸長が伸びて眼球全体の屈折力(目の度数)が固定してしまった場合は、回復が期待できなくなってしまいます。
近視の進行予防
近視を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?
「環境要因」による近視の進行は、日常の生活習慣を見直すことで防ぐことが可能です。
●「正しい姿勢」と「適度な明るさ」が必要
「姿勢をよくするように」とは日常ごくあたりまえのように言われていることですが、姿勢が悪かったり、寝ころんでテレビや読書をするのは、近視が進んだり、左右での視力差がでたりしやすくなると言われています。暗いところやバスや電車の中で本を読むのも負担がかかりやすくなり、あまりよくありません。
照明は300ルクス以上の明るさが必要です。部屋の照明以外にLED電球なら700~1000ルーメン、白熱電球なら40~60W、蛍光灯なら15~20Wの追加照明があるとそのぐらいの明るさを確保できます。電灯には昼光色と電球色のものがありますが、電球色の場合はやや暗く感じることが多く、昼光色もしくは昼光色+電球色のミックスがよいでしょう。
●太陽光のバイオレットライトを浴びよう
従来から「屋外で過ごす時間が長いと近視になりにくい」ことが報告されていますが、太陽光に含まれる紫色の光「バイオレットライト」を浴びると近視の抑制効果があることが発表されています。
夜更かしすると屋外や日中明るいところでの生活時間が短くなり、テレビ視聴や暗いところや狭い空間での生活時間が長くなってしまい、近視化を助長しやすい環境になりがちです。睡眠不足や不規則な生活はホルモンバランスも崩れがちですが、屋外へでて太陽光を浴びて運動することは睡眠のリズムを整える効果もあります。 特に成長期のお子さんの場合は、早寝早起きして、きっちり朝食をとるようにさせるだけでも効果的とされています。
●適度に目を休めましょう
近業作業などで長時間じっと見つめると毛様体筋が緊張したままになり、近視が進行しやすくなってしまいます。テレビやパソコン、タブレットなどの画面は1時間に10~15分程度の休憩をとって見続けないようにし、適度に目を休めましょう。
スマートフォンや携帯型ゲーム機など手元で文字や画面が小さい場合は特に注意が必要です。これらの機器を使用する場合は、ときどき遠くを見たり、意識的にパチパチまばたきしたり、目を上下左右にぐるぐる動かしたりしてみてください。休憩時には、目をとじて休めたり、蒸しタオル等で温めて血行を良くするのも効果的です。遠くをぼんやりと眺めるのも効果があります。
ブルーライトカットは目を休める効果があるとされていますが、一方でうつ状態の防止や作業効率向上のためにはカットしない方がよいとする説もあります。ブルーライトカット眼鏡やフィルターがバイオレットライトも含めた波長の光線をカットしまうものが多いため、近視進行抑制の観点からは議論のあるところです。
どのくらいになれば眼鏡が必要ですか?
「教室の一番後ろから黒板の字を見るのには0.7以上の視力」、「一番前からでも0.3以上の視力が必要」です。また、「普通自動車運転免許書も0.7以上の視力」が必要です。
■学童・学生の場合
裸眼視力0.7以上 | 一般的には眼鏡なしで大丈夫ですが、見えにくく感じる場合は必要に応じて眼鏡を使用します。 |
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裸眼視力0.7未満~0.3以上 | 席を前の方にしてもらう必要あり。席が後ろの場合は眼鏡が必要。 |
裸眼視力0.3以未満 | 眼鏡が必要。 |
眼科での眼鏡処方は、目の検査をしてから装用練習をおこない問題がないことを確認して眼鏡処方箋を交付します。処方箋をもとに眼鏡店で作成していただきます。お子様の場合、成長にともなって度数も変化しやすく、毎年のようにレンズや眼鏡枠を交換しなければならない場合も少なくありませんので定期的な検診をお勧めします。
眼鏡とコンタクトレンズはどちらがいいの?
眼鏡を常に装用するか、必要なときのみかけるか、どちらが良いのかはその人の度数(近視・乱視・遠視の程度、左右差)や年齢、生活環境によって違ってきます。一般的に軽度の近視では、もともとのピントが手元にあるわけですから、遠くを見るときのみ眼鏡を装用した方が目の負担が少なくなります。特にお子様の場合、軽度の近視であれば、授業中など遠くを見るときのみかけさせて、家で勉強や読書、食事をする場合など手元を見るときは眼鏡をはずすようにさせる場合もあります。
一方、強い近視で手元も遠くもぼやけて見える人、遠視の人、強い乱視のある人は常用する方が良いでしょう。また、40才以上になると調節力の低下(老眼)で、遠方と近方を一つの度数でカバーすることが難しくなり、遠方用と近方用に眼鏡度数を使い分ける必要がでてきます。個人差がありますので詳しくは医師にご相談ください。
眼鏡はかけたりはずしたりしない方がいいのですか?
小学生以下の場合、取り扱いと衛生面から、特殊な場合をのぞいてコンタクトレンズはあまりお勧めしていません。眼鏡の方が目に負担が少なく安全です。ただし、左右の度数差が強い場合や角膜乱視が強い場合など、眼鏡よりコンタクトレンズの方がのぞましい場合もあります。
コンタクトレンズは昔に比べて改良が重ねられて目に対する負担が少なくなりましたが、角膜の透明性を保つ角膜内皮細胞などへの影響を考えると、はずして目を休めることも必要です。したがってコンタクトレンズを作る場合でも、眼鏡を持っておいて併用した方がよいでしょう。
コンタンクトレンズにはハードレンズ、使い捨てソフトレンズなど各種ありますが、目の状態や使用する環境などによって合う、合わないがあり、個々に応じた選択が必要です。詳しくは医師にご相談ください。
点眼薬による治療
マイオピン ※自費診療(健康保険適応外)
成長期の近視を進行させる眼軸長(眼の奥行)の伸長を遅らせることができる低濃度アトロピン点眼薬です。
シンガポール国立大学の臨床試験で、近視抑制効果や安全性が証明されました。(Ophthalmology 2012 ; 119(2) : 347-354)
マイオピンは最適な濃度(0.01%・0.025%)のアトロピンを配合することにより、禁止のスピードを効果的に抑えると同時に、アトロピン1%点眼薬よりも副作用を軽減しています。
この薬の本来の作用により、一時的に瞳孔が大きくなり眩しさを感じますが、数時間でほぼ正常な状態に戻ります。点眼は就寝前1回となります。重篤な副作用の報告はありません。
健康保険適応外ですが、他の手段に比べて最も近視進行抑制効果のエビデンスのある治療法として、日本国内でもこの点眼を直輸入して処方をおこなう施設が増えてきています。
※「医師の処方」が必要です。
価格 | 1本3,850円(税込) ※1日1回点眼 約1ヶ月分 |
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- ・マイオピンは国内未承認薬となります。
- ・入手経路:医師個人輸入
- ・同一成分や性能を有する他の国内承認薬品等の有無:有(ただし濃度が異なり、効能効果は適応外となります)
手術治療
ICL(眼内コンタクトレンズ)
適応:21才以上 強度近視・乱視
目の中に眼内レンズをインプラントする手術です。度数が変われば抜去して入れ替えることも可能です。
厚労省認可されており、日本国内では認定を持つ医師のみが手術することができます。世界75ヶ国で100万眼以上がインプラントされています。見え方の質が高く、手術直後から視力の改善を実感できます。特に強度近視の方の生活の質を改善する有効な手段です。
抑制治療
オルソケラトロジー
適応:10才以上 軽度~中等度近視
就眠時に特殊なコンタクトレンズを装着して、寝ている間に角膜形状を矯正して近視を補正する方法です。効果を維持するためには毎晩装用することが必要ですが、未成年でも治療可能な方法です。眼鏡、コンタクトレンズに比べて近視進行の抑制効果があることが知られています。
オルソケラトロジーレンズは厚生労働省の承認を受けている正式な治療ですが、コンタクトレンズの使用に伴い角膜炎や結膜炎などの眼障害が発生するリスクはありますので、眼科専門医による定期的な診察が必要です。