多焦点眼内レンズ
multifocal intraocular lens
眼内レンズの種類
眼内レンズは若い人の水晶体のように厚くなったり薄くなったりしてピントを調節する力がありません。老眼が進んだ状態と同じで「ピントのあう幅がせまい」ため、どの距離もハッキリみえるというわけではなく、「ピントのあわない距離をみる場合は眼鏡を使う」必要があります。
眼内レンズには大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」があります。患者さんの求めるライフスタイルとそれぞれの眼内レンズの特性をふまえて、眼内レンズの種類を決定します。
単焦点眼内レンズ
一般的に使用されるのは単焦点眼内レンズです。
どの距離にピントをあわせた目にするかを術前検査で眼内レンズの度数を決定します。

通常は「ピントを遠方(無限遠)~中間距離(2~3m)に合わせた」眼内レンズを挿入して、術後に老眼鏡を使っていただく場合が多いですが、左右のバランス、手術前の度数、御本人の御希望、職業上の理由などにより、「ピントを近く(30~40cm)、もしくは中間距離(50cm~1.5m)に合わせた」眼内レンズを挿入する場合もあります。ピントを近くにあわせた場合は「普段は眼鏡をかけ、手元を見るときは外す」ということになります。乱視の強い方は遠用と近用の眼鏡を使いわけていただく必要があります。

世帯収入や年齢により上限や還付があります。
(例:後期高齢者 一般の方 上限 月額18000円)
>>詳しくはこちら(全国健康保険協会・高額療養費制度)
多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズは、「なるべくメガネをかけずに」より快適な生活ができることを目指して開発されました。 平成19年に厚生労働省の承認を得て、その後にも様々な多焦点眼内レンズが登場しています。
多焦点眼内レンズは、遠方と近方の広範囲にピントが合う反面、単焦点眼内レンズに比べるとピントが甘い、夜間に車の対向車などのライトがにじんで見えたりする(グレアハロー)などの欠点がありましたが、最近ではこれらの欠点を補う累進焦点眼内レンズも登場しています。
ただし多焦点眼内レンズは必ずしも全ての人にあうわけではありません。
保険がきかないため、手術費用は自費となるため、単焦点眼内レンズと比べるとかなり高額になります。自分のライフスタイルにあった特性の眼内レンズを選択できるように医師やスタッフとよくご相談ください。


●当院で主に使用している多焦点眼内レンズ・焦点拡張眼内レンズ
- レンティスMplus
- IC8
- ミニウェル
- アルサフィット
- インテンシティー
- Artis Symbiose MID/PLUS
- レイワン EMV
- ミニウェル プロクサ
- トライディフ
- アクリバ トリノバ プロC
- テクニスマルチ
- アクティブフォーカス
- テクニスシンフォニー
- パンオプティクス
- テクニスシナジー
- ファインビジョン
- クラレオン ビビティー
- アートアイオーエル
分節屈折型多焦点レンズ
商品名 | 構造&焦点 | エネルギー配分 | 特徴 | 暗所 ハロー グレア |
選定 療養 |
---|---|---|---|---|---|
商品名 レンティスMplus ![]() |
構造&焦点 分節屈折型2焦点 ∞・40cm ∞・60cm |
エネルギー配分 遠55% 光学ロス |
特徴 従来の回折型に比べて暗所での光の滲みが少なくコントラストが良い。0.01D刻みの精度でオーダーメイドで1枚ずつ製作される。 ドイツ Oculentis社製。ドイツからの直輸入となります。 |
暗所ハローグレア 少ない 扇型のゴーストがでることあり |
選定療養 × |
ピンホール型焦点拡張レンズ
商品名 | 構造&焦点 | エネルギー配分 | 特徴 | 暗所 ハロー グレア |
選定 療養 |
---|---|---|---|---|---|
商品名 IC8 ![]() |
構造&焦点 ピンホール1.36mm ∞~40cm 相当 |
エネルギー配分 瞳孔径3mmでF値絞り2段階相当の明度低下あり |
特徴 2014年CEマーク、2018年米国FDA認可。ピンホール効果により焦点深度を拡張するレンズ。通常は優位眼に単焦点、非優位眼にIC-8を挿入する。円錐角膜等の不整乱視眼に適している。米国AcuFocus社製。米国からの直輸入となります。 |
暗所ハローグレア かなり少ない |
選定療養 × |
累進焦点EDOF(焦点拡張)レンズ
商品名 | 構造&焦点 | エネルギー配分 | 特徴 | 暗所 ハロー グレア |
選定 療養 |
---|---|---|---|---|---|
商品名 ミニウェル ![]() |
構造&焦点 累進焦点焦点拡張 ∞~45cm |
エネルギー配分 遠~中への連続配分 光学ロス |
特徴 2017年CEマーク取得。球面収差を利用して連続的にピントの合う幅を広げるEDOF(焦点拡張)構造。ピントを振り分ける回折型と違い、特に遠~中までの見え方が自然で単焦点レンズと遜色ないコントラスト感度やシャープさがあり、暗所や暗がりでのハロー・グレアも出にくいため、夜間運転される方の選択肢になる。イタリアSIFI社製。イタリアからの直輸入となります。 |
暗所ハローグレア かなり |
選定療養 × |
回折型多焦点レンズ
商品名 | 構造&焦点 | エネルギー配分 | 特徴 | 暗所 ハロー グレア |
選定 療養 |
---|---|---|---|---|---|
商品名 アルサフィット ![]() |
構造&焦点 フーリエ回折型3焦点 ∞・70cm・35cm |
エネルギー配分 遠33% 光学ロス |
特徴 2018年CEマーク取得。フーリエ光学により回折型の欠点であったハロー・グレアが少なく、遠・中・近、明所・暗所ともにコントラスト感度が良好で、3焦点レンズの中では特に手元の見え方の質が高いとされる。ドイツ ALSANZA社製。ドイツからの直輸入となります。 |
暗所ハローグレア 少ない |
選定療養 × |
商品名 インテンシティー ![]() |
構造&焦点 フーリエ回折型5焦点 ∞・133cm・80cm・60cm・40cm |
エネルギー配分 遠42% 光学ロス |
特徴 2019年11月CEマーク取得。DLUテクノロジーを採用した最新の5焦点眼内レンズ。従来の3焦点に比べ光学ロスが少なく、あらゆる場面で見え方の質が良い。Hanita Lenses社製。 |
暗所ハローグレア 少ない |
選定療養 × |
商品名 テクニスマルチ ![]() |
構造&焦点 回折型2焦点 ∞・50cm ∞・42cm ∞・33cm |
エネルギー配分 遠41% 光学ロス |
特徴 2011年に厚生労働省認可された多焦点眼内レンズ。近方焦点が50cm・42cm・33cmの3タイプあり。中間距離の落ち込みや暗所でのハロー・グレアはそれなりにあるものの、近方の見やすさには今なお定評があり現在も多くの施設で幅広く使用されている。米国Johnson & Johnson VISION社製。国内在庫あり。 |
暗所ハローグレア あり |
選定療養 ○ |
商品名 アクティブ ![]() |
構造&焦点 アポダイズ回折型2焦点 ∞・50cm |
エネルギー配分 遠70% 光学ロス |
特徴 2014年に厚生労働省認可されたアポダイズ回折型レンズ。周辺部が遠方の単焦点構造になっており薄暗い環境での遠方~中間が他の回折型レンズよりハロー・グレアも少なく質が良い。遠方・中間重視の方にお勧めのレンズ。米国Alcon社製。国内在庫あり。 |
暗所ハローグレア 少ない |
選定療養 ○ |
商品名 テクニス ![]() |
構造&焦点 エシュレット回折型焦点拡張 ∞~50cm |
エネルギー配分 遠~中への連続配分 光学ロス |
特徴 2016年に米国FDA、2017年に厚生労働省認可されたエシェレット回折構造による焦点拡張型レンズ。遠方から中間まで連続的に焦点をもたせており、遠方から中間までの見え方の質が良いが手元は弱い。米国Johnson & Johnson VISION社製。国内在庫あり。 |
暗所ハローグレア あり |
選定療養 ○ |
商品名 パン ![]() |
構造&焦点 回折型3焦点 ∞・60cm・40cm |
エネルギー配分 遠44% 光学ロス |
特徴 2017年に欧州で先行発売され2019年に厚生労働省認可された日本国内で最も使用実績のある3焦点レンズ。海外での使用実績も多い。3焦点構造であるが80cmあたりもピークがあり、4焦点レンズ的な性格をもつ。米国Alcon社製。国内在庫あり。 |
暗所ハローグレア やや少なめ |
選定療養 ○ |
商品名 テクニス ![]() |
構造&焦点 ハイブリッド回折型2焦点+焦点拡張 |
エネルギー配分 ※未公表 |
特徴 2018年に海外で先行発売され2020年厚生労働省認可レンズ。遠~中の質の良いテクニスシンフォニーにテクニスマルチの手元の見やすさをミックスした光学設計。米国Johnson & Johnson VISION社製。国内在庫あり。 |
暗所ハローグレア あり |
選定療養 ○ |
波面制御型・焦点深度拡張レンズ
商品名 | 構造&焦点 | エネルギー配分 | 特徴 | 暗所 ハロー グレア |
選定 療養 |
---|---|---|---|---|---|
商品名 クラレオン ビビティ― ![]() |
構造&焦点 波面制御型焦点深度拡張 ∞~50cm |
エネルギー配分 遠~中まで 光学ロス |
特徴 2023年に厚生労働省認可された波面制御型焦点深度拡張レンズ。優れた遠方視と中間視および実用的近方視を提供。ハロー・グレアも単焦点眼内レンズと同程度まで軽減されているため、夜間運転される方の選択肢にもなる。米国Alcon社製。国内在庫あり。 |
暗所ハローグレア かなり少ない(単焦点眼内レンズと同程度) |
選定療養 ○ |
●ハロー・グレア現象について
多焦点眼内レンズでは単焦点眼内レンズに比べて、夜間の運転で車のライトが反射したりにじんで見えたりするグレア・ハロー現象が出やすくなります。特に回折型2焦点の多焦点眼内レンズでは強くでやすい傾向があります。
唯一、累進屈折型のミニウェルではグレア・ハロー現象がほとんどなく、単焦点眼内レンズと遜色ない良好な暗所コントラスト感度があり、夜間運転の多い方にもお勧めできます。
■ハログレアシュミレーターによる術後自覚症状のイメージ比較(※個人差があります)
単焦点眼内レンズ(ZCB00)
テクニスマルチ
テクニスシンフォニー
レンティスMplus
ファインビジョン
ミニウェル
●ミックス&マッチ
計画的に左右別々に性質の違うレンズをいれる方法をミックス&マッチといいます。例えば片方に遠・中2焦点の多焦点レンズを入れ、もう片方に遠・近2焦点の多焦点レンズをいれるといった方法です。
単焦点レンズでも「モノビジョン」と言って、左右で度数差をつけてレンズを入れる場合があります。片眼はピントを遠くに合わせ、もう片眼はピントを近く狙いのレンズを入れることによって、裸眼での明視域(見える範囲)を広げる方法です。ただし、単焦点レンズでこれをすると、立体感が弱くなり左右の見え方の違いで不具合を感じたりする方もあるので、適応は「もともと左右差があってそれに慣れている方」などに限られること、左右差をつけすぎると「眼鏡で視力差をカバーする際に左右の像の大きさの差(不等像視)がでて眼鏡がかけづらくなる」などの欠点がありました。
その点、「多焦点レンズでのミックス&マッチ」は「単焦点レンズでのモノビジョン」と違い、左右差の違和感が少ないため、事前に相談して左右に別の多焦点レンズを入れる方も少なくありません。
効き目に見え方のシャープな単焦点レンズを遠方にあわせていれ、もう片方に多焦点レンズを入れることも、もともとの左右差に慣れている人には選択肢になります。
両眼視機能が良好な方の場合、片眼で見るより両眼でみる方がよく見えるはずです。これは人間の脳が両眼加算(Binocular Summation)という画像処理をするからです。そのため、左右同じ性質のレンズを入れるのが一般的です。脳は「遠方を見ようとするときは遠方が見えやすい目」で「近方を見ようとするときは近方が見えやすい目」を自然に選択する力も併せ持っていますが、もともと左右差の少ない人では術後に大きな左右差を作ると違和感が出やすく馴染みにくいこともあり、若い頃からの視力差とか、白内障の左右差での慣れ、手術を受けるまでの眼鏡やコンタクトレンズの使い方・合わせ方など生活習慣の違い、見え方に求める重視するポイント(質を重視する距離、瞳孔径にも左右されるコントラストと明視域、暗所でのハロー・グレアの許容、両眼視時の立体感etc.)で、どういったレンズが適切か判断します。個人差や好みもありますので、担当医とよくご相談ください。
●多焦点眼内レンズの種類と特徴
レンズの種類により、光学的な特性の違いで見え方の質に特徴があります。
■レンティスMplus Lentis Mplus
分節型多焦点眼内レンズで、遠方と手元の2箇所にピントが合います。
光量のロスが5%と少なく、光量配分は遠方が55%で近方が40%になっています。 回折型に比べて暗所でのコントラスト感度が高く、見え方の質が良いのが特徴ですが、手元の見え方はやや弱いです。通常の50倍の精度でレンズを1枚づつオーダーメイドで作るため矯正精度が高く、他の多焦点眼内レンズで対応でききない乱視や強度近視の方にも適応となる場合があります。


■ミニウェル Miniwell Ready
世界で最初に開発されたプログレッシブ(累進焦点)眼内レンズです。
球面収差を利用して遠方・中間・近方までスムーズな見え方を実現しており、従来の屈折型や回折型多焦点眼内レンズに比べ、コントラスト感度の高い質の見え方が得られます。
特に暗所でのハロー・グレアがほぼないため、夜間運転が必要な方や暗いところでの作業が多い方に適しています。 遠方から40~50cmぐらいまでギャップのない自然な見え方で、姿勢を良くした状態でのパソコン作業やデスクワークはよく見えますが、それより手元側の20~30cmになるとピントが合いにくくなります。元々が近視で読書などでかなり近づけて見る癖のあった方は、姿勢をよくしてやや離し気味に見てもらうか、必要に応じて度数のゆるい老眼鏡を使っていただくと良いでしょう。

ミニウェル挿入後、1週間の夜間の見え方のイメージ

■アルサフィット ALSAFIT FOURIER
従来の回折型レンズはシャープエッジの回折構造のため、10~20%の光が反射や散乱しますが、ALSAFIT FOURIERは波状の回折パターンと、中心から周辺部に向かって溝を高くする逆アポダイズのフーリエ光学部により回折型の欠点であったハローグレアが少なく、遠・中・近、明所・暗所ともにコントラスト感度が良好で、見え方の質が高いレンズです。2018年9月ヨーロッパCEマーク取得し、2020年3月より日本国内への輸入を開始した最新鋭の3焦点レンズです。
※従来の3焦点眼内レンズとの比較
(1)優れた光透過率 |
---|
シャープエッジではない波型の回折構造と、両面非球面構造により、散乱光・反射光が少ないため、従来の3焦点眼内レンズに比べ、ハローグレアが少なく、光学ロスが非常に少ない。 |
(2)バランスの良い光学分布 |
中心部から周辺に向かって溝を高くする逆アポダイズ構造により、瞳孔径が広がっても中間部および近方への光量が維持され、すべての距離で高いコントラスト感度を得やすい。
![]() |
(3)色収差が少ない |
アッベ数58という他社レンズに比べて色収差が小さい材質を使用しているため、色収差が少ない。 ![]() |
(4)明所・暗所ともにコントラストがよく、質のよい見え方 |
∞・70cm・35cmの3焦点構造であるが、従来の3焦点眼内レンズに比べて、瞳孔径によらず遠方、中間、近方のいずれの距離でも解像度が高い。暗所でも比較的手元が見やすく、夜間の光のにじみやまぶしさが抑えられる。 ![]() |
■インテンシティー Intensity
もっとも進化した最新型の多焦点眼内レンズです。フーリエ光学により計算されたDLUテクノロジー(Dynamic light utilization technology)というHanita社独自のアルゴリズムの5焦点眼内レンズで、従来の回折型2焦点や3焦点レンズでは使用出来なかった部分を活かし、無限遠~40cmまでの全距離でスムーズな見え方を実現しました。

(1)バランスの良い光学設計 |
---|
回折構造は、なめらかなエッジ形状の12本のステップからなり、ステップの幅や高さは中心から周辺に向かって変化し、瞳孔径に応じて最適な配分になるように作られています。 中心から直径2.5mmまでをZone 1、2.5~4.0mmまでをZone 2、4.0~5.2mmをZone 3で、明所視はZone 1とZone 2を使用し、薄明視・暗所視にはZone 1からZone 3を使用します。 ![]() |
(2)光学ロスが極めて少ない |
焦点距離80cmの0次光と2か所のインテンシファイアによって、5焦点での幅広い焦点域を実現しました。従来の回折型2焦点や3焦点レンズでは10%~20%の光学ロスがありましたが、6.5%と光学ロスが極めて少ない設計となっています。 |
(3)幅広い明視域を実現 |
5焦点化により、従来の3焦点レンズに比べても全距離(∞~40cm)で良好な見え方を実現しています。 ![]() |
(4)ハローグレアが少ない |
従来の3焦点レンズに比べてハローグレアが抑えられています。 ![]() |
■ファインビジョン Finevision
3焦点の回折型多焦点眼内レンズです。遠方(∞・5m)・中間(65cm)・手前(40cm)の3箇所にピントを配分しています。光量のロスは14%で、光量配分は、遠方40%、中間15%、手元30%です。
乱視矯正も可能で、遠方から手元まで落ち込みが少なく、よく見えるレンズです。瞳孔径の影響も受けにくく満足度の高いレンズですが、夜間の運転時にハロー・グレアがあります。
■Artis Symbiose MID/PLUS

眼内レンズの種類は数多く、患者特性によってそれを選択することが必要です。しかし、必ずしも両眼とも同じレンズの選択が好ましいというわけでも無い場合があります。そのようなとき、従来であれば既存の多焦点眼内レンズを左右で組み合わせて移植したりします。その相性を考えなくてはいけなくなります。
高加入レンズは近方視力が良好になりやすいですが、遠方コントラストなどが落ちやすく、逆に低加入レンズは近方視力は不良ですが、遠方コントラストの低下は抑えられやすいです。どちらを取るかというのは多焦点レンズ選択において重要です。低加入と高加入レンズなどを両眼に組み合わせて移植する方法としてブレンドビジョンという方法があります。
Artis Symbiose MID/PLUSはブレンドビジョン専用としてデザインされた眼内レンズです。MIDは近方加入が少なく、PC距離までをカバーし、コントラストの低減を抑えます。PLUSは近方加入がやや高く読書距離をカバーします。両眼で移植することで機能的な三焦点レンズとして働く機能を持っています。
野口三太朗医師により日本国内での初めての眼内移植、臨床試験が実施されています。
メリット |
---|
![]() 焦点深度の選択が幅広くなる。ブレンドビジョンを選択する上で、左右の視力の同期が行われやすいため、視力の導入が患者様側で行われやすい。左右差を感じることは非常にすくない。レンズ素材がとても良くグリスニングの発生の心配が少ない。 ![]() ブレンドビジョン法による明視域 |
デメリット |
近方視力がやや弱い可能性がある。自費診療になる。 |
■レイワンEMV RayOne EMV


眼内レンズの種類は数多く、患者特性によってそれを選択することが必要です。
多焦点高加入レンズは近方視力が良好になりやすいですが、遠方コントラストなどが落ちやすいです。しかも夜間のグレア、ハローが強く出る傾向にあります。高齢者には不向きな場合が多いです。これらの理由より、回折格子、屈折デザインの無い単焦点レンズ、またはEDOFレンズが選択肢として上がります。両眼に遠方に焦点を合わせると近くはEDOFで合っても見えません。そこで、片眼を遠方、もう片眼を中間~近方に合わせるモノビジョン法があります。不快なグレアが少なく、中間視力も通常処方よりも良い場合が多いです。しかし、従来、モノビジョンは通常レンズでしか行われていませんでした。
プラスの球面収差を用いた、モノビジョン専用のEDOFレンズが開発されました。通常レンズよりも両眼加算効果を考慮しエネルギー配分を効率よく近方にふっています。そのため通常レンズよりも近方視力が良好になりやすく、近方作業、眼鏡装用率が改善する可能性を秘めています。
野口三太朗医師により日本国内での初めての眼内移植、臨床試験が実施されています。
メリット |
---|
![]() ![]() グレア、ハローを感じにくい。 40cm近くまでは眼鏡無しを実現できる。設定されているトーリックレンズが小さい度数から有り、乱視を残しにくい。コントラスト感度が高い。野口先生の成績でも、通常のレンズよりも遠方から近方40cmの視力は有意に良好で、モノビジョン専用レンズとしての効果は感じられやすい。 |
デメリット |
近方30cmの視力はやや不足しやすい。1Dのモノビジョンであれば左右差はほとんど感じにくいが、それ以上差をつけると、やや左右差を感じやすい。 |
■ミニウェル プロクサ Mini WELL PEOXA
WELL Fusion™ “1+1 が 2 を超える ~自然で良好な視力~ ”

ミニウェルのデメリットは近方視力が不十分であることです。それを補完するために、近方視力の強い、ミニウェルプロクサが開発されました。優位眼にミニウェル、非優位眼にミニウェルプロクサを使用する、「WELL Fusion™」という方法により、両眼視で遠方と近方を見えるようにすることが出来ます。WELL Fusionシステムでは、焦点距離を両 眼が補完し合うことにより、また、ミニウェル、ミニウェルプロクサ共に、レンズ表面に回折型のようなくっきりとした段差がなく、ハロー・グレア現象が少ないのが特徴です。

メリット |
---|
|
デメリット |
|
■トライディフ TriDiff
TriDiff(トライディフ)はイギリスのEyeOL UK社から2018年に発売開始された3焦点眼内レンズです(2017年ヨーロッパCEマーク取得済み)。日本では2019年より使用実績があります。

TriDiffは「親水性アクリル」で作られたプレート型の眼内レンズです。プレミアムレースカット技術を用いて製造精度を厳密にして製造されているため、他社のレースカット眼内レンズに比べて面精度が美しいのが特徴です。光学部はRay Tracing(光線追跡法)技術を使って最適な同心円状パターンがある回折構造を有しています。遠方、中間、近方にそれぞれ50%、30%、20%の光が分布されるようになっていて、中間は70cm、近方は40cmに焦点があうように設計されています。
また、TriDiffは中央部から周辺部にステップ高が低くなる特殊構造により、回折型であるにもかかわらず光エネルギーロスが10%以下でハログレアの発生が最小限に抑えられています。

TriDiffは、患者様の乱視軸に合わせて製造する完全カスタムメイドのトーリックレンズ(乱視矯正タイプ)もあります。どの患者様もレンズを水平で固定するsmart toricシステムを採用していますが、元の乱視軸の位置もマーキングされており、合計で3点のマーキングを確認しながらレンズが固定できるため、より精度の高い手術が可能です。乱視量や屈折度数もカスタムメイドのため幅広く作成出来、他のレンズが対応できない目に対しても対応できることがあります。
メリット |
---|
|
デメリット |
|
■アクリバ トリノバ プロC Acriva Trinova Pro C

AcrivaUD Trinova Pro C(アクリバ トリノバ プロC)は、ドイツのVSY Biotechnology社が製造する、白内障手術後または老視治療のための水晶体摘出後の嚢内に挿入するシングルピース型のトリフォーカル眼内レンズです。
VSY Biotechnology社はAcriva Trinovaというトリフォーカル眼内レンズをすでに販売しており、それをさらに発展させ、シャープなエッジのない正弦波の同心円状の回折パターンと、瞳孔径の変化に順応したデザインを組み合わせた光学部に設計しました。これによって、瞳孔径に応じた最適な遠方・中間・近方への光の配分、昼夜を問わずあらゆる距離で連続的かつクリアな見え方、眼鏡への非依存性、グレア(光のにじみ)・ハロ(光の輪状散乱)・スターバースト(光の放射状散乱)などの異常光視症の最小化が可能となりました。
Acriva Trinova Pro Cは厚生労働省の認可を受けていません(自費診療)が、ヨーロッパでは2021年5月にCEマークを取得し販売を開始しました。また、乱視を矯正できるトーリックレンズは2023年中ごろに販売予定です。
光透過率 |
---|
Acriva Trinova Pro Cの光透過率は93%と高く、水晶体の光透過率(95%)に近い値を示しています。 ![]() |
光の分布 |
Acriva Trinova Pro Cは、瞳孔径によって最適な見え方を提供するように、遠方、中間、近方へ光が配分されています。暗い所でも光を有用に使って高いコントラスト感度と解像力を達成するように配分し、あらゆる照明下で眼鏡への依存性の最小化を目指しました。 ![]() |
視力 |
Acriva Trinova Pro Cの遠方から近方までの視力を示します。中間用に1.8D、近方用に3.6Dが加入されており、遠方から中間、近方まで視力が落ちることなく、連続的に良好な視力が得られます。 ![]() |
異常光視症 |
Acriva Trinova Pro Cは、非球面の光学部形状、高いアッべ数、シャープなエッジのない正弦波回折構造により、色収差が少なく、グレア(光のにじみ)、ハロ(光の輪状散乱)、スターバースト(光の放射状散乱)などの異常光視症が少なくクリアな見え方を提供します。 ![]()
|
解像力 |
Acriva Trinova Pro Cの明るい時(瞳孔径3mm)、薄暗い時(瞳孔径4.5mm)の解像力試験で、いずれの明るさでも遠方、中間、近方の解像力に差はほとんどないことが示されました。 ![]() |
■テクニスマルチ TECNIS Multifocal IOL
2焦点の回折型多焦点眼内レンズです。回折型構造による光量のロスは20%で、光量配分は遠方40%と手元40%です。瞳孔の大きさの影響を受けませんので、暗所でも手元が比較的見やすいですが、夜間運転時のハロー・グレア現象があります。
手元のピントの距離が33cm, 42cm, 50cmの3種類あり、個々のライフスタイルによって使い分けます。国内で最も実績のあるレンズです。
33cm (+4.0D) | 42cm (+3.25D) | 50cm (+2.75D) |
---|---|---|
![]() |
![]() |
![]() |
■アクティブフォーカス ActiveFocus
中心部と周辺部が単焦点レンズ構造で回折部分の面積を小さく、かつ加入度数を少なめにすることにより、遠~中の視力の質を向上させて、夜間・暗所のコントラスト感度を向上してハログレアを軽減させる構造のレンズ。

遠方重視のため、読書距離(33cm)の近方視力は弱いため、手元の細かいものをみる場合は少し離し気味に見るか、度数のゆるい老眼鏡をかけるなどで対応する必要があるが、遠方、特に夜間ドライブでの見え方は良好な構造となっている。

■テクニスシンフォニー TECNIS Symfony
テクニスマルチの新しいシリーズとして追加されたエシェレット回折型の焦点拡張型の光学設計をもつ多焦点眼内レンズです。手元まではピントが合いにくいものの、遠方から中間までは落ち込みなく、より自然な見え方になります。
テクニスマルチ2焦点回折型に比べてコントラスト感度の低下が少なく、夜間運転時のハロー・グレアが少し抑えられていますが、その反面、手元はテクニスマルチ42cmタイプ、33cmタイプに比べて見えにくくなるので、読書等は老眼鏡を使用したほうが見やすくなります。

■パンオプティクス AcrySof IQ PanOptix

欧州で先行発売され、臨床評価が高くトップシェアとなっている3焦点の多焦点眼内レンズです。従来の2焦点レンズではピントが遠方と近方にわかれるため、中間距離の見え方が弱くなってしまうことが問題でしたが、3焦点レンズでは遠方、中間距離、近方に焦点を配分することで、その弱点をカバーして、より自然な見え方になります。
他社の3焦点レンズが「∞・80cm・40cm」で中間が80cmにピントのピークがあるのに対し、パンオプティクスはENLIGHTEN™ 光学テクノロジーにより、「∞・60cm・40cm」で中間が60cmにピントのピークがるため、40~80 cmの連続した焦点距離の見え方の質が良いように設計されています。コンピュータ作業、スマートフォンの使用、料理、本やメニューを読む、携帯型ゲームで遊ぶといったことが、より快適にしやすいように配慮されています。


3焦点レンズの光学的性質上、夜間・暗所でのハログレアは単焦点やアポダイズ回折型2焦点(遠・中)アクティブフォーカスに比べると少しでますが、明視域が広く、明所・暗所ともにコントラスト感度が良好で、患者満足度スコアの高い多焦点眼内レンズです。

![]() パンオプティクス (3焦点 遠・中・近) |
![]() アクティブフォーカス (2焦点 遠・中) |
![]() レストア (2焦点 遠・近) |
![]() アクリソフIQ (単焦点レンズ) |
![]() レンティスMプラス (分節屈折型2焦点) |
![]() テクニスシンフォニー (エシュレット回折・焦点拡張) |
■クラレオン ビビティ― Clareon Vivity
独自の波面制御(X-WAVE™テクノロジー)により、焦点深度を拡張させ、優れた遠方視と中間視および実用的近方視を提供します。これにより術後の眼鏡依存度の軽減が期待できますが、細かい字を読む場合等に近方用の眼鏡が必要になる可能性があります。

光エネルギーロスは単焦点眼内レンズと同程度のほぼ0%のため、質の高い見え方が得られます。「かすんだ見え方」といった多焦点眼内レンズ特有の術後の症状も、単焦点眼内レンズと同程度まで抑えられています。

暗所でのハロー・グレアなどの視覚障害も単焦点眼内レンズと同程度まで軽減されているため、夜間運転が必要な方や暗いところでの作業が多い方などにも適しています。

■アートアイオーエル ArtIOL

ArtIOLs(アートアイオーエル)はスペインのVOPTICA社が販売する焦点深度拡張型の眼内レンズです。2020年にCEマークを取得し、ヨーロッパ各国で販売されています。
ArtIOLsは遠方重視のArt25、遠方~中間に焦点が合うArt40、遠方~近方に焦点が合うArt70の3つのタイプのレンズがあり、患者様に最適なレンズを選択することができます。左右で異なるタイプのレンズを挿入することも可能です。例えばArt40とArt70を組み合わせることで遠方から近方まで切れ目のないスムーズな視力が期待できます。
ArtIOLsは独自の逆メニスカス構造により、網膜の中心だけではなく、周辺部においても焦点が合うことで、良好なコントラストが得られ、術後に自然な見え方が期待できます。
また、術後のハロー(光の輪状散乱)やグレア(光のにじみ)といった症状が発生しにくい構造になっています。
眼内レンズの種類
当院では院内倫理委員会を設置しております。弁護士1名、外部企業者4名の5名にて構成されております。いずれの未承認デバイスについても、院内倫理委員会承認は得られたものを使用しております。