人工水晶体嚢について 人工水晶体嚢について

人工水晶体嚢
artificial capsular bag

嚢収縮・後発白内障を抑制する人工水晶体嚢移植

人工水晶体嚢(リング)移植

人工水晶体嚢

通常の白内障手術では、術後の嚢収縮や嚢とレンズの癒着を避けることができず、一定期間経過した後はレンズ交換を行うことはできません。
しかし、人工水晶体嚢を挿入することにより、長期にわたって嚢収縮・後発白内障の抑制や、レンズ交換が可能となることが期待できます。

人工水晶体嚢を移植するためにはライセンスが必要です。

人工水晶体嚢移植とレーザー白内障手術の比較

濁りの無いクリアな水晶体嚢で眼内レンズの機能を最大化

眼内レンズは水晶体嚢(水晶体の入っている袋)の中に固定することが必要とされます。目の光学中心にレンズが固定されることで視機能は最大化されます。
レーザー白内障手術では、水晶体嚢の前嚢切開という行程を、レーザーで行うことによりサイズ形を正確に行いますが、術後時間がたつと、前嚢は必ず収縮し、濁り不整となり、レンズは必ず偏心、傾斜してきます。
人工水晶体嚢手術では、人工水晶体嚢を移植し、それにレンズをホールドさせます。水晶体嚢がレンズと触れないため、水晶体嚢がかなり長期にわたり透明で収縮も発生しにくいです。レンズが光学中心に固定され続けます。前嚢切開のサイズ、形状にほとんど依存しにくくなります。

人工水晶体嚢で後発白内障の発生を極限まで低減

眼内レンズを水晶体嚢の中に入れて固定しますが、その水晶体嚢の萎縮、混濁は術後1週程度より進んできます。萎縮することにより、レンズの位置の悪化や水晶体嚢の混濁により、光路が遮られ十分な機能を発揮しにくくなります。
レーザー白内障手術では、前嚢切開サイズ、位置を正確に行うことにより、レンズの光学部(6mm)以内に収めるようにします(コンプリートカバー)。しかし、前嚢の収縮と混濁は必ず発生し、有効光学径は6mmより小さくなります。また、前嚢細胞の後嚢への遊走は完全に防止できないため、マニュアル白内障手術と同様に後発白内障は発生します。また、マニュアル手術でもコンプリートカバーは常識的に容易に作成可能です。
人工水晶体嚢手術では、人工水晶体嚢が水晶体嚢を生理的に近い形でずっと広げ続けます。 前房水に水晶体嚢が露出し続けるため、水晶体嚢は限りなく透明性を維持し、収縮、混濁はとても発生しにくいです。前嚢切開サイズに依存しない手術が可能です。現状では前嚢混濁も非常にしにくいため、有効光学径6mmを長期にわたり維持することが可能です。

レンズ交換の可能性

白内障手術の際には必ず眼内レンズを移植します。しかし、眼内レンズが長期経過すると混濁する例があります。また、眼内レンズの見え方に不満を感じることがあります。長期手術してから時間がたっているとレンズを取り出すということが非常に困難になります。レンズと水晶体嚢が癒着しているため、水晶体嚢の損傷が発生するからです。また、眼内レンズの進化はすさまじく、毎年新しいレンズが登場します。しかし、一度レンズを移植すると上記の理由より新しいレンズに交換はほぼ不可能となってくるのが現状です。
人工水晶体嚢の移植によりレンズはいつでも交換が可能となることが期待できます。若い患者さんや眼内レンズをどれにするか悩まれている患者さんには大きな福音となります。

症例

人工水晶体嚢無しの場合
人工水晶体嚢無し

①白内障術後6ヶ月後の前眼部写真。
前嚢が白く混濁しています。

人工水晶体嚢無し

②白内障術後3ヶ月後の前眼部写真。
前嚢が白く混濁し後嚢にも混濁が発生してきています。

人工水晶体嚢無し

③白内障術後3ヶ月後の前眼部写真。
前嚢、後嚢に混濁が発生し、眼内レンズが内側に偏心しています。

人工水晶体嚢有りの場合
人工水晶体嚢有り

人工水晶体嚢無しの場合①と同じ時期に手術した、人工水晶体嚢と眼内レンズ移植眼の前眼部写真。

人工水晶体嚢有り

人工水晶体嚢無しの場合②と同じ時期に手術した、人工水晶体嚢と眼内レンズ移植眼の前眼部写真。

人工水晶体嚢有り

人工水晶体嚢無しの場合③と同じ時期に手術した、人工水晶体嚢と眼内レンズ移植眼の前眼部写真。

人工水晶体嚢のデメリット

ライセンスが必要

人工水晶体嚢を移植するためにはライセンスが必要です。

手術時間の増加

専用のインジェクターに人工水晶体嚢をセッティングし、眼内に移植する操作が通常の白内障手術において追加となります。野口医師ではおおよそ+5分ほど追加時間をいただいています。

新しいデバイス

毎年のように新しいものが開発されてくる眼内レンズも同様ではありますが、新しいデバイスです。数年間での臨床成績は非常に良好ではありますが、長期成績(10年や30年など)はまだ不明です。
後発白内障の発生の可能性、必ず、100%などを保証することは不可能です。
新しい医療については常識的な事項ではありますが、ご了解お願いいたします。

※人工水晶体嚢は未承認デバイスとなります。