緑内障手術について 緑内障手術について

緑内障手術
glaucoma surgery

緑内障の治療

緑内障が進行して視野が欠けるといかなる手段によっても視野は元に戻りません。
緑内障の治療は病気の進行をくい止めるため、眼圧を低くコントロールすることが最も有効とされています。 治療法としては薬物療法、レーザー治療や手術が一般的です。ただし、レーザー治療や手術を受けて眼圧が下降しても、その効果が半永久的に維持されるとは限らず、複数回の手術が必要になる場合もあります。

薬物療法

眼圧を下げる点眼薬には房水の産生を抑えるものと、房水の流出を促すものがあります。 場合によっては2~3種類の点眼薬を併用することもあります。点眼薬では効果が不十分な場合は、内服薬を用いる場合もあります。 また、緑内障は眼圧以外にも血流障害が悪化要因になることが知られており、血流改善を促す薬を使用することもあります。また緑内障で機能が低下した視神経・網膜に対し、ビタミンB12製剤やサプリメントなどが処方されることもあります。

レーザー手術

一つは急性緑内障発作を起こした場合や、発作を起こす可能性の高い眼にレーザー光線で虹彩の根部に小さな穴を開けて、 新たに房水の通り道を作る方法です。もう一つは房水の出口である線維柱帯にレーザー光線を照射して房水が外に流れ出る抵抗を減少させて眼圧を下げる方法です。いずれも短時間で終了し、手術前後の日常生活の制限もほとんどありません。

観血手術

薬物療法やレーザー治療を行っているにもかかわらず、眼圧が下がらなかったり、視野が狭くなっていったりする場合には観血手術をおこないます。 大きくわけて房水の通り道を通りやすくする流出路再建術と、房水を球結膜下に逃がす濾過手術、チューブから眼球周囲の深部に設置するプレートへ逃がすチューブシャント手術があります。緑内障手術の術式はたくさんありますが、病状に合わせて慎重に術式を選択します。

レーザー手術

点眼麻酔でおこなう通院で可能な短時間で終了する治療法です。
強い痛みもなく、施術前後の日常生活上の制限もほとんどありません。

レーザー虹彩切開術(LI)

適応 原発閉塞隅角緑内障

急性緑内障発作を起こした場合や、発作を起こす可能性の高い眼の場合におこなわれる治療法です。 レーザーで虹彩の根部に小さな穴を開けて、房水の通り道を作ります。過去にはよくおこなわれていた治療法ですが、角間内皮への影響で将来に水疱性角膜症を起こすリスクがあるため、他の手段が困難な場合にのみ施行します。
閉塞隅角の種類によってはレーザー虹彩切開術の効果が乏しいものもあります。根本的な治療は白内障手術となります。

レーザー虹彩切開術(LI)

選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)

適応 原発開放隅角緑内障、嚢性緑内障、色素性緑内障、高眼圧症
禁忌 炎症性の続発緑内障、血管新生緑内障など
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)

眼房水の排水溝である線維柱帯という網目構造の部位に低エネルギーのレーザーを照射し、細胞を活性化させることで 排水を改善させ眼圧を下降させます。
治療効果には個人差がありますが、薬を減らしたり、観血手術の必要性をなくしたり、遅らせたりできることが期待できます。点眼薬が目にあわず副作用を起こす場合、点眼薬をきっちり入れることが困難な場合、点眼薬で十分に眼圧が下がらない場合などに適応となる有効な治療法です。有効率は約90%で、奏功した場合の眼圧下降幅は約4~6mmHg、正常眼圧緑内障でも2~3mmHgとされています。レーザー後の効果は約1~2ヵ月後に安定してきます。従来おこなわれていたALT(アルゴンレーザー線維柱帯形成術)に比べ、周辺の組織に熱損傷などのダメージをほとんど与えないため、繰り返しおこなうことも可能です。(約半年~1年に一回程度)

照射直後に一過性に眼圧上昇したり、虹彩炎合併例では炎症が再燃したりする可能性がありますが、レーザーのエネルギーが低く、周囲組織への侵襲が非常に少ないため、他の手段に比べて重篤な合併症をおこす可能性はほとんどありません。アプラクロニジン点眼と消炎剤の使用により、それらの合併症は抑制できます。

選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)

観血手術

薬物療法やレーザー治療で目標とする眼圧にならない場合、視野が狭くなっていったりする場合には手術を検討します。 手術には大きく分けて3種類があります。

流出路再建術
(トラベクロトミー)

流出路再建手術には、「眼の外から行う眼外法」と「眼の中から行う眼内法」があり、当院では中から行う方法として、マイクロフックを用いたフックロトミーを行っております。中から行う方法はMIGS(micro invasive gulaucoma surgery,低侵襲緑内障手術)と呼ばれ、従来法よりも圧倒的に侵襲が少なく短時間で安全に施行でき、合併症も少ない手術方法です。特に白内障・眼内レンズ手術と組み合わせての同時手術は眼圧下降効果が高いことが知られています。

濾過手術
(トラベクレクトミー&インプラント手術)

濾過手術は、上記の手術で効果が得られない眼や10mmHg前後にしたい眼に対して行う方法です。
当院では従来の濾過手術(トラベクレクトミー)に加え、2011年に厚生労働省の認可が下りたインプラントを用いた濾過手術(エクスプレス)もおこなっています。
エクスプレスは従来のトラベクレクトミーに比べて合併症が少ないのが特徴ですが、適応がやや限られます。手術後に、縫っている糸をレーザーで切って逃がす房水の量を調整して眼圧を10mmHg前後に調整します。

濾過手術(トラベクレクトミー&インプラント手術)

チューブシャント手術

緑内障チューブシャント手術は、濾過手術を行っても眼圧を下げることが難しい重篤な緑内障眼や、濾過手術後の頻回通院が難しいような場合に対して行います。
眼の中にチューブを留置して房水をプレートから結膜下の眼球周囲深部に流す手術です。チューブ先端を挿入する位置は、病状に合わせて、前房内や毛様溝、硝子体腔のいずれかから選択します。

チューブシャント手術

よくある質問

緑内障と言われましたが、あまり目を使わない方が良いですか?
通常のタイプの緑内障では、目の使い過ぎなどで緑内障が進行するということはありません。本を読むことが好きな方はどんどん読んでかまいませんし、テレビも見てかまいません。閉塞隅角緑内障で、レーザー治療などを行っていない方は暗いところで長時間本を読んだりすることが良くないこともあります。個々で異なりますので、詳しくは医師にご相談ください。
日常生活で注意することはありますか?
特にありません。目薬をされている方は、忘れないように毎日することくらいでしょう。頭を下にする姿勢はよくない、力んで頭に血が上るのはよくない、などとも言われますが、通常の生活でよいと思います。食べ物や運動も通常通りで構いません。
お酒・たばこはどうですか?
たばこは緑内障に限らず神経に対して良い影響を与えません。体にとってもたばこは吸わない方が良いでしょう。お酒は緑内障によくないということはありません。ただし、緑内障に限らず飲みすぎはよくありません。
緑内障の方は胃腸薬・風邪薬などを飲まない方が良いといわれていますが大丈夫ですか?
閉塞隅角緑内障の方は多くの薬に注意が必要です。薬によって緑内障発作が起きてしまうことがあります。しかし、薬を飲んでも緑内障発作が起きないようにレーザー治療によって予防することが可能です。ほとんどの方が開放隅角緑内障ですので、薬を使うことで緑内障発作が起きることはありません。
緑内障の手術をすると眼圧は必ず下がりますか?
ほとんどの症例において手術前より下がります。また緑内障の目薬を中止したり減らしたりすることができます。
緑内障の進行を止めることが出来ますか?
点眼薬やレーザー治療で効果がない方、点眼の副作用がある方、身体的理由で点眼をきちんとさせない方など、現状では緑内障の進行が懸念される方また緑内障が進行している方に手術を行います。現状よりも緑内障が進行しないように行いますが、進行を完全に止めることは出来ません。
緑内障は治りますか?
緑内障自体は治りません。眼圧を下げる手術ですので、緑内障でなくなってしまった視野は元には戻りません。あくまで眼圧を下げて、緑内障が進行しにくいようにする手術です。
手術をしたあと、再び眼圧が上がってくることは?
目によって経過は異なりますが、術後再び眼圧が上がってくることがあります。その際は緑内障点眼薬を追加して対応しますが、手術前よりは点眼本数等は少なく、眼圧も下がることがほとんどです。それでも眼圧がコントロールできない場合、目の状態によってはより再手術が必要になることもあります。