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白内障手術における眼内レンズ選択の真実 – 日本のプレミアム眼内レンズ普及率の謎
「高いから単焦点レンズにする」のウソホント 🔍

白内障手術を控えた患者さんから「高いから単焦点レンズにします」という声をよく聞きます。しかし、これは本当に価格だけの問題なのでしょうか?国際的なデータを分析すると、実は日本特有の構造的な課題が浮き彫りになってきます。

📊 驚くべき国際比較データ

台湾における急速な普及

台湾の全国健康保険データを分析した大規模研究¹によると、プレミアム眼内レンズ(Premium IOL)の普及率は

2016年 35.2%
2020年 42.6%

わずか4年間で7.4ポイントもの急激な増加を示しています。

アメリカの停滞と日本の低迷

一方、アメリカでは2009年から2017年にかけて、プレミアムIOLのマーケットシェアは**6.8%から7.4%**へとわずか0.6ポイントの増加に留まっています²。しかし、これでも日本よりは高い水準です。
専門機関の予測では、アメリカはヨーロッパや日本に比べて「プレミアムIOLをより迅速に採用する」と指摘されており³、日本は**「低い償還率と遅い承認プロセス」**が普及の障壁となっていると分析されています。

🏥 日本の保険制度が生む構造的問題

保険適用の現実

日本では

  • 単焦点IOL(保険適用):自己負担は通常の医療費のみ
  • プレミアムIOL(保険適用外):両眼で数十万円〜数百万円

この極端な価格差が、患者の選択肢を大きく制限しています。

欧米との制度的違い

アメリカ メディケアが新技術IOLに対して1レンズあたり50ドルの追加償還を提供³
ヨーロッパ 固定償還制度により普及が制限されているものの、段階的改善が見られる
日本 プレミアムIOLは完全に保険適用外

📈 なぜ日本だけが異様に低いのか?

1. 承認プロセスの遅さ

日本の医療機器承認プロセスは「コストが高く、時間がかかり、市場開発の大きな障害」と指摘されています³。

2. 医師の意識と経験

アメリカの調査²では、プレミアムIOLを提供する医師の75%が年間40個未満しか植立しておらず、経験不足による患者満足度の低下が普及の妨げとなっています。

3. 患者への情報提供不足

研究によると、医師の中には「患者にお金の話をしたくない」という理由でプレミアムIOLを提案しない場合があることが判明しています²。

💡 プレミアムIOLの真の価値

視覚機能の向上

日本での多施設前向き研究⁴では、多焦点IOL植立患者の高い満足度と良好な視覚成績が報告されています。
特に

  • 眼鏡依存度の大幅な減少
  • 日常生活の質の向上
  • 術後3ヶ月での高い患者満足度

長期的コストパフォーマンス

⁵従来の単焦点IOLと比較してコスト効果が高いことが示されています。

🌟 今後の展望と提言

制度改革の必要性

  1. 段階的保険適用の検討 💰
  2. 承認プロセスの効率化 ⚡
  3. 医師教育の充実 📚
  4. 患者への適切な情報提供 📢

患者としてできること

  • セカンドオピニオンの活用
  • 十分な情報収集
  • 生活スタイルに基づいた選択
  • 長期的視点での検討

🎯 まとめ

「高いから単焦点レンズ」という選択は、価格だけでなく、日本の医療制度の構造的問題が大きく影響しています。真の意味での患者中心の医療を実現するためには、制度改革と意識改革の両方が必要です。
あなたの視力は、一生の財産です 👁️✨


📚 参考文献
[1] Premium intraocular lens adoption: Insights from a national health insurance analysis. Journal of the Formosan Medical Association (2024).
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0929664624003474
[2] The Premium IOL Channel: Pitfalls & Prospects. CRSToday (2018).
URL: https://crstoday.com/articles/2018-may/the-premium-iol-channel-pitfalls-prospects
[3] US predicted to adopt premium IOLs more quickly than Europe & Japan. Ophthalmology Times Europe (2020).
URL: https://europe.ophthalmologytimes.com/view/us-predicted-adopt-premium-iols-more-quickly-europe-japan
[4] Nationwide Prospective Cohort Study on Cataract Surgery With Multifocal Intraocular Lens Implantation in Japan. American Journal of Ophthalmology (2019).
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002939419303800
[5] Visual Outcomes After Cataract Surgery With the Light Adjustable Lens in Japanese Patients. Journal of Refractive Surgery (2024).
URL: https://journals.healio.com/doi/10.3928/1081597X-20241002-03
[6] Japan Intraocular Lens Market Size & Outlook, 2030. Grand View Research (2024).
URL: https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/intraocular-lens-market/japan
[7] Standard vs. Premium Lens for Cataract Surgery: A Comprehensive Comparison. Vijaya Nethralaya (2025).
URL: https://vijayanethralaya.com/standard-vs-premium-lens-for-cataract-surgery-a-comprehensive-comparison/catsurg/
[8] Intraocular Lens Market Size, Share & Growth Report, 2030. Grand View Research.
URL: https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/intraocular-lenses-industry
[9] Results of a clinical evaluation of a trifocal intraocular lens in Japan. PubMed (2020).
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31900871/

ASUCAアイクリニック 仙台マークワンは、白内障手術(眼内レンズ手術)、硝子体手術、ICL・IPCL、目の周りやまぶたなどを治療する手術専門クリニックです。
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記事監修者について

野口 三太朗

  • ASUCAアイクリニック 仙台マークワン 主任執刀医
  • 社会医療法人 三栄会 ツカザキ病院 眼科 医長
  • 日本眼科学会認定 眼科専門医

専門分野は白内障手術・網膜硝子体手術。
数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。
日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会ほかの各会員。医学博士。

免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。