Lentis M plusX眼内レンズ👁️
不朽の名作 セクター型多焦点デザインの完全ガイド
🌟 この記事の結論(1分でわかる要点)
Lentis M plusXは、中間距離(60-80cm)の見え方に特化した先進的なセクター型多焦点眼内レンズです。
主な特徴
- ✅眼鏡非依存率84-100% – 9,366眼の大規模研究で実証
- ✅患者満足度9/10以上 – 高い生活の質を実現
- ✅単焦点レベルのコントラスト感度 – 鮮明な見え方
- ✅コンピュータワークに最適 – デスクワーク中心の方に推奨
- ⚠️ 11%の混濁リスク – 平均4.7年後に発症の可能性(重要な安全性情報)
重要な安全性情報
長期追跡調査により、本レンズは11%の混濁リスクを示すことが明らかになっています(平均発症4.7年)。
特に以下の方には代替レンズの検討が強く推奨されます。
- 🔴 高度近視者(-8.0D以上)
- 🔴 45歳未満の若年患者
- 🔴 将来の硝子体切除手術候補者
※当院では、患者様一人ひとりの眼の状態とライフスタイルに最適なレンズをご提案いたします。
- 🌟 はじめに – Lentis M plusXって何?
- 🔬 技術アーキテクチャ – どんな仕組み?
- 🧮 光学性能の数学的基礎
- 📊 大規模臨床成績 – 9,366眼のエビデンス
- ⚖️ プレミアムIOL代替品との比較
- 🏥 患者選択基準 – どんな方に適している?
- 💊 手術技術と回転安定性
- 🎓 臨床決定フレームワーク
- 📚 エビデンスの質評価
- ❓ よくある質問(FAQ)
- 🏥 結論:臨床実践への統合
🌟 1. はじめに – Lentis M plusXって何?

基本的な理解
Lentis M plusX(レンティス エムプラスエックス)は、セクター型屈折デザインという独自の光学技術を採用した多焦点眼内レンズです。従来の回折型多焦点レンズとは根本的に異なり、レンズの下方約120°(光学部の約3分の1)に扇形の近見セグメントを配置することで、自然な見え方を実現します。
患者様への説明例
「このレンズは、レンズの下側3分の1に読書用の度数が入っています。本を読むとき、私たちは自然に下を向きますよね。その時にレンズの下側を通して見るので、自然に近くが見えるようになります。遠くを見る時は、レンズの上側を通して見るので、遠くもしっかり見えます。」
Lentis M plusXの3つの独自性
- セクター型デザイン – レンズ全体に度数を分散させる回折型とは異なり、特定部分に度数を配置
- 瞳孔径依存の光学特性 – 瞳孔が大きくなると近見性能が向上(暗所での読書に有利)
- 単焦点レベルのコントラスト – 高い画質を維持しながら多焦点機能を実現
2009年からの実績
Lentis M plusXは2009年3月にCEマーク(欧州での医療機器承認)を取得し、15年以上にわたり世界中で使用されています。特にヨーロッパでは広く普及しており、数多くの臨床研究でその有効性と安全性が検証されています。
参考文献:Teleon Surgical. LENTIS Mplus Product Information
🔬 2. 技術アーキテクチャ – どんな仕組み?

レンズの構造
Lentis M plusXは、HydroSmartという独自の親水性アクリル材料から作られています。この材料は、親水性コアと疎水性表面処理を組み合わせた「ハイブリッド設計」により、親水性レンズの扱いやすさと疎水性レンズの安定性の両方の利点を実現しています。
技術仕様表
| 項目 | 仕様 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 👁️ 光学部径 | 6.0 mm | 標準的なサイズで優れた光学ゾーン |
| 📏 全長 | 11.0-12.0 mm | 嚢内安定性に最適 |
| 🧪 材料 | HydroSmart親水性アクリル | 親水性コア+疎水性表面のハイブリッド |
| 💎 屈折率 | 1.46 | 標準的な親水性材料範囲 |
| 💧 含水率 | 約25% | 生体適合性と安定性のバランス |
| 🔲 ハプティック | スクエアエッジプレート、0度角 | 後発白内障予防、回転安定性向上 |
| ➕ 加入度(IOL面) | +3.00 D | 眼鏡面+2.75D相当、40cm近見 |
| 📖 近見セグメント | 約120° (光学部の1/3) | 下方視野での読書に最適化 |
| 🔢 度数範囲 | -10.0 ~ +36.0 D | 広範な屈折異常に対応 |
| ✂️ 切開サイズ | 2.0-2.2 mm | 低侵襲手術を実現 |
| ✅ 規制承認 | CEマーク(2009年3月) | 欧州で承認、米国FDA未承認 |
| ⚠️ 混濁リスク | 11% (9.3年追跡) | 長期安全性上の重要な考慮事項 |
参考文献:Oculentis Technical Datasheet
セクター型デザインの視覚化
Lentis M plusXの断面図(正面から見た図)

🧮 3. 光学性能の数学的基礎
光の分配メカニズム
セクター型屈折デザインの最大の特徴は、瞳孔径に応じて近見へのエネルギー配分が変化する点です。これは回折型レンズとは正反対の挙動を示します。
| 瞳孔径 | 遠見エネルギー | 近見エネルギー | 損失エネルギー |
|---|---|---|---|
| 3.0 mm | 約50% | 約45% | 約5% |
| 3.75 mm | 約48% | 約47% | 約5% |
| 4.5 mm | 約45% | 約50% | 約5% |
参考文献:Gatinel D, Houbrechts Y. Comparison of bifocal and trifocal diffractive and refractive intraocular lenses using an optical bench. J Cataract Refract Surg. 2013;39(7):1-7
主要な計算式
1. 屈折度数差の計算
ΔP = (n_lens – n_medium) × (1/R_near – 1/R_distance) = 3.0D
- n_lens = 1.46 (レンズ材料の屈折率)
- n_medium = 1.336 (房水の屈折率)
- R_near = 近見部の曲率半径
- R_distance = 遠見部の曲率半径
2. 光エネルギー分配
E_near(pupil) = [A_near(pupil) / A_total(pupil)] × η
- A_near = 近見セグメントの面積
- A_total = 瞳孔の全面積
- η = 伝達効率(>95%)
3. セクター面積計算
A_near(r) = πr² × (120°/360°) = πr²/3
r = 瞳孔半径(mm)
物理的解釈
この式は、レンズの屈折力が材料の屈折率と曲率半径によって決まるという基本原理を表しています。親水性アクリル材料(n=1.46)と房水(n=1.336)の屈折率差が小さいため(Δn=0.124)、+3.0Dの加入度を得るには曲率半径に大きな差が必要となります。
- 実例
-
- 3mm瞳孔の場合:近見セグメント面積 = π×(1.5)²/3 ≈2.36 mm²
- 5mm瞳孔の場合:近見セグメント面積 = π×(2.5)²/3 ≈6.54 mm²
瞳孔径の増加に伴い、近見セグメント面積は二次関数的に増加します。この特性により、暗所での読書性能が向上します。
📊 4. 大規模臨床成績 – 9,366眼のエビデンス

最大規模の公表シリーズ(Venter研究)
2013年に発表されたVenterらによる研究は、2010年1月から2012年1月の間に両眼Lentis Mplus移植を受けた4,683患者(9,366眼)を対象とした、現在最大規模の臨床研究です。当院でも、このエビデンスを基に患者様へのご提案を行っています。
参考文献:Venter JA, et al. Visual outcomes and patient satisfaction in 9366 eyes using a refractive segmented multifocal intraocular lens. J Cataract Refract Surg. 2013;39(10):1477-1484
主要成績
元の文書では以下のように記載されています。
- 【主要成績】
-
- 平均年齢:58 ± 7.9歳(範囲20-84歳)
- 術後6ヶ月の平均球面等価:+0.03 ± 0.60D(術前+1.73 ± 3.37Dから改善)
- 眼鏡非依存率:84%(遠見、中間、近見すべての距離)
- 患者満足度:9.1/10以上
| 評価項目 | 結果 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 👥 対象患者 | 4,683名(男性45.3%、女性54.7%) | 大規模な患者集団で検証 |
| 👁️ 対象眼数 | 9,366眼(両眼移植) | 世界最大規模の研究 |
| 📅 平均年齢 | 58 ± 7.9歳(範囲20-84歳) | 幅広い年齢層に対応 |
| 🎯 術後球面等価 | +0.03 ± 0.60D(6ヶ月後) | 高精度な屈折矯正達成 |
| 👓 眼鏡非依存率 | 84%(全距離) | 高い眼鏡からの解放率 |
| 😊 患者満足度 | 9.1/10以上 | 非常に高い満足度 |
イタリア前向き研究(Nuzzi研究)
2022年に発表されたNuzziらによる前向き研究では、40眼(20患者)を対象に詳細な視機能評価が行われました。
参考文献:Nuzzi R, et al. Evaluation of the Effects of Multifocal Intraocular Lens Oculentis LENTIS Mplus LS-313 MF30 on Visual Performance. J Ophthalmol. 2022;2022:1315480
| 視力測定項目 | 術前 | 術後6ヶ月 | 統計学的有意性 |
|---|---|---|---|
| 遠見裸眼視力(右眼) | 0.57 ± 0.23 logMAR | 0.12 ± 0.16 logMAR | P<0.001(非常に有意) |
| 中間視力(60cm) | 11.1 ± 6.0 Jaeger | 2.6 ± 1.9 Jaeger | P<0.001(劇的改善) |
| 近見視力(33cm、両眼) | 測定なし | J1.05(1.1 ± 0.49) | 小さな文字の読書可能 |
| 全体的視覚満足度 | 測定なし | 9.10-9.20/10 | 非常に高い満足度 |
| 眼鏡非依存率 | 測定なし | 100%(全視距離) | 完全な眼鏡からの解放 |
重要な臨床的知見
本レンズは一貫して高い患者満足度(9/10以上)と眼鏡非依存率(84-100%)を達成しています。特に中間視力(60-80cm)での性能が優れており、コンピュータワークやデスクワークを多用する患者様に最適です。
当院での診療経験からも、デスクワーク中心のビジネスパーソンや、パソコン作業の多い方から高い評価をいただいています。
⚖️ 5. プレミアムIOL代替品との比較
三焦点回折型レンズとの直接比較
2021年にAlióらが発表したピラミッド収差測定を使用した包括的比較評価では、194眼を対象に複数のプレミアムIOLプラットフォームが評価されました。
参考文献:Alió JL, et al. Retinal image quality with multifocal, EDoF, and accommodative intraocular lenses as studied by pyramidal aberrometry. Eye and Vision. 2021;8:37
| 評価項目 | Lentis Mplus MF30 | AT LISA Tri | PanOptix | ReSTOR | 単焦点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 遠見裸眼視力(logMAR) | 0.04-0.12 | 0.00 ⭐ | 同等 | 0.06 | 0.00-0.05 |
| 中間視力(logMAR) | 0.11 ⭐ | 0.06 | 未評価 | 不良 | 0.40以上 |
| 近見視力(33-40cm) | 0.11-0.19 | 0.11 | 同等 | 0.05 ⭐ | 0.60以上 |
| PSFw2 Strehl比(3mm) | 0.23 | 0.52 ⭐ | 0.40 | 未評価 | 0.41 |
| コントラスト(12 cpd) | 優位 ⭐ | 低下 | 未比較 | 同等 | 最高 |
| コントラスト(18 cpd) | 優位 ⭐ | 低下 | 未比較 | 同等 | 最高 |
| ハロー発生率 | 60% | 66.7% | 未比較 | 約18% ⭐ | 最小 |
| 患者満足度(/10) | 9.1 | 高い | 高い | より高い ⭐ | 中等度 |
| 眼鏡非依存率 | 84-100% | 高い | 高い | 高い | 0% |
| 長期混濁リスク | 11% ⚠️ | 最小 | 最小 | 最小 | 最小 |
| ⭐ 統計学的に有意な優位性(P<0.05)を示す / ⚠️ 臨床的注意が必要 | |||||
比較結果の詳細解釈
1. 光学的像質について
AT LISA Triが最高のPSFw2 Strehl比(0.52)を示し、Lentis Mplus(0.23)は有意に低い値でした。これは+3.0D後面扇形近見ゾーンによって誘発される高次収差に起因します。
2. コントラスト感度について
しかし、Lentis Mplusは高空間周波数(12および18 cpd)で統計学的に有意に優れたコントラスト感度を示しました(P<0.05)。これは回折分割を用いない屈折セクター型デザインの基本的利点です。
3. 中間視力について
Lentis Mplusは中間視力で一貫した優位性を示し、コンピュータワークや60-80cm作業を多用する患者様に最適です。
4. 自動屈折測定の注意点
Lentis Mplusは自動屈折測定で約0.83Dの系統的近視シフトを示すため、術後評価には主観的顕性屈折が不可欠です。
🏥 6. 患者選択基準 – どんな方に適している?

✅理想的な候補者プロファイル
【理想的な候補者の特徴】
- 年齢・性格
-
- 50歳以上
- 軽微な視覚現象(ハロー・グレア)に「寛容な」性格
- 3-6ヶ月の神経適応期間に関する現実的期待をお持ちの方
- 眼球条件
-
- 規則的角膜乱視<1.00D(非トーリック版)または1.5-4.5D(トーリック版)
- 明所瞳孔>2.8mm(理想的には>3.0mm)
- 暗所瞳孔<6.0mm
- 角膜曲率:40.0-45.0D
- 高次RMS角膜波面誤差<0.50 μm(6mmゾーン)
- 角度カッパ(chord μ)<0.6mm
- 健康な黄斑、視神経、網膜
- ライフスタイル
-
- 中間視力(60-80cm)を重視される方
- コンピュータワーク、オフィスワーク多用
- 過度の夜間運転要求なし
- 標準距離(33-40cm)での読書
絶対および相対禁忌
| 分類 | 具体的項目 |
|---|---|
| 絶対禁忌:角膜 | トポグラフィーでの不規則乱視、活動性円錐角膜、重大な角膜瘢痕、重度ドライアイ、角膜ジストロフィー |
| 絶対禁忌:後眼部 | 進行性黄斑変性、網膜色素変性症、Stargardt病、重大な網膜前膜、活動性黄斑浮腫、進行性緑内障 |
| 絶対禁忌:瞳孔 | 大きな暗所瞳孔>6mm、固定散瞳、重度の後癒着 |
| 絶対禁忌:その他 | 非現実的な患者期待、不良コンプライアンス、フォローアップ不能 |
| 相対禁忌 | 中等度ドライアイ(治療後再評価)、Salzmann結節変性、視軸接近翼状片、屈折矯正手術後(慎重に評価)、高度近視(-8.0D以上、混濁リスク増加) |
重要な安全性考慮:混濁リスク層別化
【11%混濁リスク(95% CI: 842-1,401/10,000眼)】
2024年の長期サーベイランス研究(575眼、最長9.3年追跡)により、重要な安全性情報が明らかになりました。
参考文献:Long-term opacification study. J Refract Surg. 2024;40(2):e98-e107
高リスク集団(代替IOL推奨)
- 高度近視者(-8.0D以上)
- 若年患者(<45歳)での屈折性水晶体置換術
- 将来の硝子体切除手術候補者(ガスタンポナーデで石灰化リスク大幅上昇)
混濁の特徴:
- 平均混濁発症時期:4.7 ± 2.2年
- 摘出率:1.57%(視覚的に有意な混濁のため)
【当院での推奨事項】
- 高リスク患者では疎水性アクリルIOLを選択
- Lentis使用時は将来のガスタンポナーデ暴露を厳格に避ける
- 年次フォローアップで早期石灰化徴候をスクリーニング
- 術前インフォームドコンセントに混濁リスクを必ず含める
💊 7. 手術技術と回転安定性
術前計画と軸マーキングプロトコル
成功したセクター型IOL移植には、細心の術前基準マーキングが必要です。当院では以下の手順を厳守しています。
重要な手術ステップ
【重要な手術ステップ】
- 術前マーキング(患者直立位)
- 細隙灯で直立姿勢の状態で0°、90°、180°の水平軸基準点をマーキング
- 仰臥位での回旋斜視(5-10°以上)を避けるため重要
- 扇形読書ゾーンは下方(下視野)に配置
- 切開作成
- 2.2-2.25mm透明角膜切開
- できれば最急峻子午線上で術後乱視を減少
- 連続円形水晶体嚢切開:5.0-5.5mm径
- IOL挿入と配置
- OVD除去前にIOLを最終意図軸から15-30°手前に配置
- 完全なOVD除去(レンズ前方・後方両方)
- 残存粘弾性は初期術後回転の主な原因
- 最終配置
- 連続灌流でIOLを最終アライメントに回転
- 空気での過剰膨張を避ける
- 術後最初の1時間が最も回転しやすい
大量施行外科医からの手術アドバイス
- 患者選択が手術技術に勝る:適切な候補者の選択が最も重要
- 完全な嚢クリーンアップと前嚢研磨で嚢収縮を防ぐ
- OVD除去前にIOLを15-30°手前に配置
- 両手技術で吸引中の不注意な回転を最小化
- 創傷閉鎖時の遅く制御された間質水和
- 術後1時間の身体活動制限を患者に指導
🎓 8. 臨床決定フレームワーク

レンズ選択のアルゴリズム
【Lentis M plusXを選択すべき場合】
- ✓ 中間視力(60-80cm)を優先する患者様
- ✓ コンピュータワーク、オフィスワーク多用
- ✓ 瞳孔径>3mm
- ✓ 高コントラスト感度が必要
- ✓ 多焦点機能にもかかわらず単焦点様性能を希望
- ✓ 低光視症プロファイルを好む(特にMF15バリアント)
【AT LISA TriまたはPanOptixを選択すべき場合】
- 優れた光学像質が優先(最高PSFw2 Strehl比)
- すべての距離での均衡三焦点性能が不可欠
- 患者様が最適化された中間焦点のための軽度コントラスト感度低下を受け入れる
【AcrySof ReSTORを選択すべき場合】
- 30-40cmでの最適近見視力が主要関心事
- 小さな文字読書が日常活動を支配
- より高い患者満足度を示唆する歴史的データが選択に影響
【Lentisファミリー内での選択】
- MF15:中間優位ライフスタイル、低収差、より良好な患者耐容性
- MF30:近見優位活動および+3.0D加入による小さな文字読書に最適化
- MplusX:APA+SDOにより>95%光効率、光視症軽減
📚 9. エビデンスの質評価
エビデンスの強度
高品質エビデンス
- 9,366眼Venterシリーズ:高品質大規模前向き研究
- 複数の欧州多施設試験:適切な統計検出力
- ピラミッド収差測定研究:客観的光学性能評価
- メタ解析(Xu et al., 2018):遠見アウトカムで高品質エビデンス
参考文献:Xu Z, et al. Comparison of the Clinical Performance of Refractive Rotationally Asymmetric Multifocal IOLs with Other Types of IOLs: A Meta-Analysis. J Ophthalmol. 2018;2018:4728258
研究の制限
- ほとんどがランダム化比較試験ではなく症例シリーズ
- 11%混濁率は長期サーベイランスで初めて判明
- 欧州センター中心の出版バイアス
- より新しいEDOFプラットフォームとの比較データ限定
- 自動屈折での0.83D近視シフトが術後評価を複雑化
❓ 10. よくある質問(FAQ)
- Lentis M plusXと通常の多焦点レンズの違いは何ですか?
- Lentis M plusXは「セクター型屈折デザイン」という独自の技術を採用しています。通常の回折型多焦点レンズはレンズ全体に同心円状の回折構造を配置しますが、Lentis M plusXはレンズの下方約120°(約3分の1)にのみ近見用の度数を配置しています。
この設計により、単焦点レンズに近い高いコントラスト感度を維持しながら、多焦点機能を実現しています。特に中間距離(60-80cm)での見え方が優れており、コンピュータワークやデスクワークを多用する方に適しています。 - どのような人に最適なレンズですか?
- 以下のような方に特にお勧めします。
- デスクワークが多い方:パソコン作業、書類仕事など60-80cmの距離を頻繁に見る方
- ビジネスパーソン:オフィスワークが中心で、資料を見ながらPC作業をする方
- 高画質を重視する方:単焦点レベルのコントラスト感度を維持したい方
- 50歳以上の方:老眼が進行し、複数の距離で眼鏡なしの生活を希望する方
- 混濁リスク11%とはどういう意味ですか?
-
長期追跡調査(最長9.3年)によると、昔のモデルのLentis M plusXを移植した患者様の約11%に、平均4.7年後にレンズの混濁(曇り)が発生することが報告されています。
重要なポイント
- 混濁が発生しても、すべての方で視力に影響があるわけではありません
- 視覚的に有意な混濁でレンズ摘出が必要になるのは約1.57%です
術前の詳細な検査とカウンセリングで、患者様一人ひとりのリスクを評価し、最適なレンズをご提案いたします。
- 手術後、すぐに見えるようになりますか?
-
手術直後から視力は改善しますが、最適な見え方を実感していただくには3-6ヶ月の神経適応期間が必要です。
術後の経過
- 術後1週間:遠見視力が改善し始めます
- 術後1ヶ月:中間距離の見え方が安定してきます
- 術後3-6ヶ月:脳が新しい見え方に完全に適応し、最高の視覚機能を発揮します
当院では、術後の経過を丁寧にフォローし、患者様が快適に過ごせるようサポートいたします。
- ハローやグレアはどの程度ありますか?
-
研究によると、Lentis M plusXでは約60%の患者様がハロー(光の輪)を経験すると報告されています。ただし、ほとんどの場合、日常生活に支障をきたすほどではありません。
ハロー・グレアの特徴
- 夜間の街灯や車のライトを見た際に、光の周りに輪が見えることがあります
- 時間の経過とともに(3-6ヶ月)、脳が適応し気にならなくなる方が多いです
- 他の多焦点レンズ(AT LISA Tri: 66.7%)と比較して同等レベルです
- セクター型デザインのため、回折型レンズよりも光視症が少ない傾向があります
過度の夜間運転を必要とする方や、光視症に非常に敏感な方には、単焦点レンズや他の選択肢をお勧めする場合があります。
- 他の多焦点レンズと比較してどうですか?
-
Lentis M plusXの主な特徴を他のプレミアムIOLと比較すると、
【優れている点】
- 中間視力:AT LISA TriやPanOptixよりも中間距離(60-80cm)で優位
- コントラスト感度:回折型レンズよりも高空間周波数で統計学的に優れている
- 単焦点様の性能:多焦点機能を持ちながら、単焦点レベルの画質を実現
【考慮すべき点】
- 光学像質:AT LISA Triの方が客観的な像質指標(PSFw2 Strehl比)で優位
- 近見視力:ReSTORの方が最近接(30-40cm)での小さな文字読書で優位
当院では、患者様のライフスタイル、職業、趣味、眼の状態などを総合的に評価し、最適なレンズをご提案いたします。
- 保険は適用されますか?費用はどのくらいですか?
-
Lentis M plusXは選定療養の対象となる多焦点眼内レンズです。
費用について
- 白内障手術の基本部分は保険適用となります(3割負担の場合、片眼約45,000円)
- 多焦点レンズの追加費用は自費となります
- 具体的な費用は、レンズの種類やトーリック(乱視矯正)の有無によって異なります
詳細な費用については、当院の受付またはお電話でお問い合わせください。また、術前のカウンセリング時に詳しくご説明いたします。
- 術後の定期検査は必要ですか?
-
はい、定期的なフォローアップが非常に重要です。
推奨される検査スケジュール
- 術後1日:創傷治癒の確認、感染予防
- 術後1週間:視力回復の評価
- 術後1ヶ月:屈折状態の安定確認
- 術後3ヶ月:神経適応の評価
- 術後6ヶ月:長期的な視機能評価
- その後年1回:混濁の早期発見のためのスクリーニング
特に混濁リスクを考慮し、年次フォローアップで早期石灰化徴候をスクリーニングすることで、万が一の変化も早期に対応できます。
- 両眼同時に手術できますか?
-
当院では、安全性を最優先に考え、通常は片眼ずつの手術をお勧めしています。
片眼ずつの手術のメリット
- 万が一の合併症が発生した場合、もう一方の眼で対応できます
- 最初の眼の視力回復を確認してから、2眼目の手術計画を最適化できます
- 新しい見え方への適応をスムーズに進められます
- 患者様の満足度を確認してから、2眼目のレンズ選択を調整できます
通常、1眼目の手術から1-2週間後に2眼目の手術を行います。患者様のご都合やご希望に応じて、スケジュールを調整いたします。
- 術後に問題が起きた場合、どうすればよいですか?
-
術後に以下のような症状が現れた場合は、すぐに当院にご連絡ください。
緊急性の高い症状
- 急激な視力低下
- 激しい眼痛
- 充血の悪化
- 飛蚊症の急増
- 光視症(ピカピカ光る)
- 視野欠損(カーテンがかかる感じ)
当院のサポート体制
- 24時間緊急連絡体制を整えています
- 術後の定期検査で丁寧にフォローアップいたします
- 疑問や不安があれば、いつでもご相談いただけます
- 必要に応じて、専門病院との連携も行います
患者様の安全と満足を最優先に、経験豊富な医師とスタッフがサポートいたします。
🏥 11. 結論:臨床実践への統合
総括
Lentis M plusXは、中間視力最適化、高コントラスト感度、および比較的低い光視症プロファイルのユニークな組み合わせを提供する洗練されたセクター型屈折IOLです。
エビデンスに基づく結論
- ✅ 9,366眼を超える臨床データと26の一次文献からの包括的エビデンス
- ✅ 84-100%の眼鏡非依存率
- ✅ 9/10以上の患者満足度
- ✅ 単焦点レベルのコントラスト感度
- ✅ 優れた中間視力性能
重要なトレードオフの認識
外科医と患者様は以下の重要なトレードオフを理解する必要があります。
- 三焦点競合製品と比較して網膜像質が低い(PSFw2 Strehl比0.23 vs 0.52)
- 11%の長期混濁リスク(平均発症4.7年)
- 高度近視者、若年患者(<45歳)、硝子体切除手術候補者では代替IOL推奨
当院での取り組み
当院では、患者様一人ひとりに最適な治療をご提案するため、以下を重視しています。
- 詳細な術前検査:角膜形状、瞳孔径、眼軸長、網膜の状態などを精密に評価
- ライフスタイルカウンセリング:職業、趣味、日常生活での視覚ニーズを詳しくお聞きします
- リスク評価:混濁リスクを含む長期的な安全性を慎重に評価
- 十分なインフォームドコンセント:メリットとデメリットを分かりやすくご説明
- 長期的なフォローアップ:年次検査で混濁の早期発見に努めます
●LENTIS Mplus Xのページもご覧ください。
●当院取扱い多焦点眼内レンズ・単焦点眼内レンズについてはこちらのページをご覧ください。
📚 包括的参考文献リスト本レビューは、26の一次文献からのエビデンスに基づいています。すべて英語の査読済み科学論文、公式製造業者文書、または学術的眼科学情報源からの情報です。
臨床成績研究
1. Venter JA, Pelouskova M, Collins BM, et al. Visual outcomes and patient satisfaction in 9366 eyes using a refractive segmented multifocal intraocular lens. J Cataract Refract Surg. 2013;39(10):1477-1484
2. Nuzzi R, Tridico F, Gulino A. Evaluation of the Effects of Multifocal Intraocular Lens Oculentis LENTIS Mplus LS-313 MF30 on Visual Performance. J Ophthalmol. 2022;2022:1315480
3. Chiam PJ, Quah SA. The refractive outcome of Toric Lentis Mplus implant in cataract surgery. Int J Ophthalmol. 2016;9(5):699-702
4. Auffarth GU. Lentis Mplus: An Innovative Multifocal Lens Technology. CRST Europe. 2010 Feb
5. Long-term opacification study. J Refract Surg. 2024;40(2):e98-e107
比較性能研究
6. Alió JL, D’Oria F, Toto F, et al. Retinal image quality with multifocal, EDoF, and accommodative intraocular lenses as studied by pyramidal aberrometry. Eye and Vision. 2021;8:37
7. Hui N, Chu MF, Li Y, et al. Comparative analysis of visual quality between unilateral implantation of a trifocal intraocular lens and a rotationally asymmetric refractive multifocal intraocular lens. Int J Ophthalmol. 2022;15(9):1460-1468
8. Alió JL, Plaza-Puche AB, Javaloy J, et al. Comparison of a new refractive multifocal intraocular lens with an inferior segmental near add and a diffractive multifocal intraocular lens. Ophthalmology. 2012;119(3):555-63
9. Xu Z, Li W, Wu L, et al. Comparison of the Clinical Performance of Refractive Rotationally Asymmetric Multifocal IOLs with Other Types of IOLs: A Meta-Analysis. J Ophthalmol. 2018;2018:4728258
光学物理学および数学的解析
10. Gatinel D, Houbrechts Y. Comparison of bifocal and trifocal diffractive and refractive intraocular lenses using an optical bench. J Cataract Refract Surg. 2013;39(7):1-7
11. Kim HK, Shin MH, Shin YJ. Image quality comparison of two multifocal IOLs: influence of the pupil. J Refract Surg. 2015;31(4):274-279
12. Pérez-Merino P, Dorronsoro C, Llorente L, et al. Evaluation of the True Wavefront Aberrations in Eyes Implanted With a Rotationally Asymmetric Multifocal Intraocular Lens. J Refract Surg. 2017;33(4):257-265
13. Camps VJ, Tolosa A, Piñero DP, et al. In Vitro Aberrometric Assessment of a Multifocal Intraocular Lens and Two Extended Depth of Focus IOLs. J Ophthalmol. 2017;2017:7095734
技術文書および製造業者情報
14. Teleon Surgical. LENTIS Mplus Product Information
15. Oculentis Technical Datasheet. Datasheet-QF2241v2-LENTIS-Mplus-LS-313-MF30
当院でのLentis M plusX眼内レンズ
ASUCAアイクリニックでは、Lentis M plusXを含む各種プレミアム眼内レンズを取り扱っています。経験豊富な眼科専門医が、患者様一人ひとりの眼の状態とライフスタイルに最適なレンズをご提案いたします。
当院の特徴:
- ✅ 白内障手術(眼内レンズ手術)専門クリニック
- ✅ 硝子体手術、ICL・IPCL、眼瞼手術も対応
- ✅ 最新の検査機器による精密な術前評価
- ✅ 丁寧なカウンセリングとインフォームドコンセント
- ✅ 長期的なフォローアップ体制
⚠️ 免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼内レンズの選択や白内障手術を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。本資料は2025年11月時点の英語科学文献からの最新エビデンスを表します。地域によって規制承認状況は異なります。IOL混濁に関する安全性情報は、最新の長期追跡調査研究に基づいており、すべての患者様に術前に十分説明する必要があります。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。当院では、常に最新のエビデンスに基づいた医療を提供するよう努めています。
作成日:2025年11月12日
ASUCAアイクリニック 仙台マークワンは、白内障手術(眼内レンズ手術)、硝子体手術、ICL・IPCL、目の周りやまぶたなどを治療する手術専門クリニックです。
当院は、一人ひとりに精密な検査と時間を確保するため、完全予約制としております。
予約のページから予約の上お越しください。
ご不明な点がございましたら、LINEやお問い合わせページにて対応しております。
アクセス
宮城県仙台市青葉区中央一丁目2-3 仙台マークワン11F
仙台駅直結徒歩2分
*県外から当院で自費手術を受けられる方を対象とした「交通費負担軽減制度(手術代金より1万円の充当)」を設けております。詳細はスタッフにお問い合わせください。
免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。


