👁️ 【2025年最新】ArtIOLs(アートアイオーエル):周辺視野まで鮮明に見える次世代眼内レンズの全て
📋 この記事のポイント
ArtIOLs(アートアイオーエル)は、白内障手術後の「周辺視野の見えにくさ」を画期的に改善する革新的な眼内レンズです。
- 周辺視野の乱視を平均65%削減し、運転や歩行時の安心感が向上
- 中心視力も1.0(20/20相当)を達成し、従来レンズと同等の見え方
- ハロー・グレア(光のにじみ)が最小限で、夜間運転も快適
「視力検査では良好なのに、なんだか見づらい」という方、特に運転をされる方や転倒リスクが気になる高齢者の方に大きなメリットがあります。
📖 一般の方へ
この記事の前半は、専門用語を減らして分かりやすくご説明します
白内障手術をお考えの方、または手術後に見え方でお悩みの方に向けて、ArtIOLsという新しい眼内レンズについて、できるだけ分かりやすくご説明します。難しい言葉は避け、「どんなメリットがあるのか」「どんな方に向いているのか」に焦点を当てています。
- 白内障手術後の「見えづらさ」、実は周辺視野が原因かも?
- ArtIOLsってどんなレンズ?
- どのくらい効果があるの?
- どんな方に向いている?
- よくある質問(FAQ)
- 一般の方向けまとめ
- ArtIOLsの光学設計と技術仕様
- 臨床エビデンス:周辺視野性能の定量評価
- 運転パフォーマンスへの影響
- 他のプレミアムIOLとの比較
- 眼科医向けまとめ
🤔白内障手術後の「見えづらさ」、実は周辺視野が原因かも?
😟こんなお悩みはありませんか?
白内障手術を受けた患者さんから、こんな声をよく聞きます。
- 👁️「視力検査では1.0と言われたのに、なんだか見づらい感じがする」
- 🚗「運転中、横から来る車や歩行者に気づきにくくなった」
- 🚶「階段を降りるとき、足元が不安定に感じる」
- 👥「人混みを歩くとき、ぶつかりそうになることが増えた」
これらの症状、実は「周辺視野(視線の真ん中ではなく、横や斜めの見え方)」が原因である可能性があります。
従来の眼内レンズの限界
従来の眼内レンズは、主に「真正面の見え方」を最優先に設計されてきました。
視力検査で測定される「1.0」や「1.5」という数値は、あくまで中心視野(真正面)の見え方を示すものです。つまり、視力検査では良い結果が出ても、横や斜めの見え方(周辺視野)は測っていないのです。
💡 私の臨床経験から
白内障手術後に「中心はよく見えるのに、周りがぼやける」「運転中に横から来る車が見づらい」といった訴えを持つ患者さんは少なくありません。当院でも、視力検査では良好な結果が出ているにもかかわらず、実生活での見え方に不満を感じる方がいらっしゃいます。
🚗 周辺視野が悪くなると、日常生活にどんな影響が?
| 場面 | 起こりうる問題 |
|---|---|
| 🚗運転 | 横断歩道の歩行者や、脇道から出てくる車の発見が遅れる |
| 🚶歩行 | 足元の段差や障害物に気づきにくく、転倒リスクが高まる |
| 👥人混み | 周囲の人の動きを把握しにくく、ぶつかりやすくなる |
| ⚽スポーツ | ボールや他の選手の動きを追いにくくなる |
💎ArtIOLsってどんなレンズ?
🌟「周辺まできれいに見える」新しい発想のレンズ
ArtIOLs(アートアイオーエル)は、スペインの大学で開発された、周辺視野の見え方を重視した新しいタイプの眼内レンズです。
- 🏛️開発:スペイン・ムルシア大学のPablo Artal教授チーム
- ✅承認:2019年4月にCEマーク取得(欧州の医療機器認証)
- 📊実績:2000例以上の使用実績
🔍通常のレンズとの違いは?
💡 分かりやすく言うと
通常の眼内レンズが「真ん中だけきれいに見える虫眼鏡」だとすると、ArtIOLsは「端まできれいに見える高性能カメラレンズ」のようなイメージです。
| ポイント | 従来のレンズ | ArtIOLs |
|---|---|---|
| 設計の目標 | 真正面の視力を良くする | 真正面も周辺もきれいに見える |
| 周辺視野 | あまり考慮されていない | 人間の目の自然な見え方を再現 |
| 形状 | 両面が外側に膨らむ形 | 特殊な反転メニスカス形状 |
🎨3つのモデルから選べます
ArtIOLsには、見え方の特徴によって3つのモデルがあります。
| モデル名 | 特徴 | こんな方に |
|---|---|---|
| Art25 | 遠くがくっきり見える | 遠方視力を最優先したい方、周辺視野を重視したい方 |
| Art40 | 遠く〜中間距離が見やすい | パソコン作業が多い方 |
| Art70 | 中間距離が特に見やすい | Art40と組み合わせて使う方 |
💡 両眼の組み合わせ戦略
Art40とArt70を左右の目に使い分けることで、遠くから約40cmまで連続的に見える範囲を実現できます。多焦点レンズのようなハロー・グレア(夜間の光のにじみ)が少ないのも特徴です。
📊どのくらい効果があるの?
👁️視力も良好!
「周辺視野が良くなる代わりに、真正面の視力が落ちるのでは?」という心配は不要です。
- ✅中心視力:平均1.0(20/20相当)を達成
- ✅従来の単焦点レンズと同等の優れた遠方視力
- ✅28名中28名が高い眼鏡非依存性を達成
🎯周辺視野の改善効果
臨床研究で証明された改善効果
| 🎯測定項目 | 改善効果 |
|---|---|
| 周辺の乱視 | 平均65%削減✅ |
| 👁️周辺のコントラスト感度 | 統計学的に有意に改善(p < 0.001)✅ |
| 🔍周辺のピントずれ | 平均1.5D改善✅ |
「統計学的に有意」とは、偶然ではなく、ArtIOLsの設計によって確実に周辺視野が改善されていることが科学的に証明されているという意味です。
🚗運転への実際の効果
2025年の最新研究では、運転シミュレータを使った実験が行われました。
- ✅ArtIOL装用者は、周辺のコントラスト感度が有意に優れていた
- ✅より適切な速度調整ができた(道路状況に応じて)
- ✅周辺視野の質と運転パフォーマンスに正の相関あり
💡 解釈
周辺視野の質が向上することで、運転中により自信を持って適切な速度管理ができるようになると考えられます。これは、高齢者の運転安全性向上にも寄与する可能性があります。
💡 夜間のハロー・グレアは?
多焦点レンズで心配される「ハロー・グレア(夜間の光のにじみ)」について。
- ✅ArtIOLsは屈折型レンズのため、ハロー・グレアは最小限
- ✅臨床研究でも「ハローや昼盲(明るいところでまぶしい)といった視覚障害を伴わない」と報告
- ✅夜間運転が多い方に特に適した選択肢
👨⚕️どんな方に向いている?
✅ArtIOLsが特におすすめな方
- 🚗車の運転をよくされる方
周辺視野の改善により、横断歩道の歩行者や脇道から出てくる車両をより早く発見できる可能性があります。特に高齢者ドライバーの安全性向上に寄与する可能性があります。
- ⚽スポーツや屋外活動が趣味の方
テニス、ハイキングなど、広い視野が必要な活動において、周辺視野の質の高さが活きてきます。ボール의動きや周囲の状況を把握しやすくなります。
- 🚶歩行が気になる高齢者の方
良好な周辺視野は、歩行時の障害物検出や足元の段差認識に重要です。転倒予防という観点からも、周辺視野の質は見逃せません。
- 💡多焦点レンズのハロー・グレアが心配な方
夜間の光のにじみに敏感な方、夜間運転が多い方には、ArtIOLsの方が適している可能性があります。
- 📚中程度の眼鏡非依存を希望される方
Art40/70の組み合わせにより、日常生活の多くの場面(遠方〜約40cm)を眼鏡なしで過ごせる可能性が高いです。
慎重な検討が必要な場合
以下のような状況では、眼科医と十分に相談する必要があります。
- ⚠️ 黄斑疾患(加齢黄斑変性、黄斑浮腫など)がある方
- ⚠️ 進行した緑内障がある方
- ⚠️ 角膜混濁や角膜疾患がある方
- ⚠️ ぶどう膜炎(虹彩・毛様体炎)の既往がある方
- ⚠️ 片眼のみの視力に頼っている方(Art40/70の組み合わせは両眼視が前提)
⚠️ 注意:これらは一般的な基準であり、個々の患者さんの状態によって判断が異なります。必ず眼科専門医の診察を受け、ご自身の目の状態に最適なレンズを選択してください。
❓よくある質問(FAQ)
- ArtIOLsは日本で受けられますか?
- ArtIOLsは2019年4月にCEマーク(欧州の医療機器認証)を取得しており、ヨーロッパでは広く使用されています。日本国内での薬事承認については、最新情報を当院にお問い合わせください。海外承認済みの先進的な医療機器として、適切な手続きのもとで使用できる場合があります。
- 手術費用はどのくらいかかりますか?
- ArtIOLsはプレミアム眼内レンズに分類されます。費用は選択するレンズモデルや、片眼/両眼、その他の条件によって異なります。詳細な費用については、診察時に詳しくご説明いたしますので、お気軽にお問い合わせください。なお、白内障手術の基本部分は保険適用となる場合があります。
- 手術後、眼鏡は全く必要なくなりますか?
- Art40/70の組み合わせでは、多くの日常生活場面(遠方視、パソコン作業、スマートフォン使用など)で眼鏡なしで過ごせる可能性が高いです。ただし、完全に眼鏡が不要になるとは限りません。特に細かい文字を長時間読む作業などでは、眼鏡があった方が快適な場合もあります。「眼鏡への依存度を大幅に減らせる」とご理解ください。
- 夜間のハロー・グレア(光のにじみ)はどの程度ですか?
- ArtIOLsは屈折型レンズのため、回折型多焦点レンズと比較してハロー・グレアは最小限です。臨床研究でも、患者さんから「ハローや昼盲といった視覚障害を伴わない」と報告されています。ただし、個人差があり、完全にゼロというわけではありません。夜間運転が多い方には特に適した選択肢と考えられます。
- 従来の単焦点レンズと比べて、視力検査の数値は劣りませんか?
- いいえ、劣りません。ArtIOLsの臨床研究では、矯正遠方視力が平均でlogMAR 0.0(Snellen換算で1.0、つまり20/20)を達成しており、従来の単焦点レンズと同等の優れた中心視力が得られています。周辺視野が改善されながらも、中心視力が犠牲になることはありません。
- 白内障手術自体は通常の手術と同じですか?
- はい、基本的な手術手技は従来の白内障手術と同じです。ArtIOLsも2.2mmの小切開から挿入可能な折りたたみ式レンズですので、通常の日帰り白内障手術として施行できます。手術時間は片眼で約15〜20分程度です。
- 両眼同時に手術できますか?
- 当院では、感染リスクなどの安全面を考慮し、原則として片眼ずつの手術をお勧めしています。通常、1週間〜2週間程度の間隔をあけて、反対側の眼の手術を行います。Art40/70の組み合わせをご希望の場合も、この方法で行います。
- 高齢でも手術は受けられますか?
- はい、年齢だけで手術ができないということはありません。実際、80歳代、90歳代の方でも安全に白内障手術を受けていただいています。ただし、全身状態(心臓病、糖尿病など)や他の眼疾患の有無を総合的に判断します。詳しくは診察時にご相談ください。
- 術後どのくらいで日常生活に戻れますか?
-
翌日から軽い家事やデスクワークは可能です。ただし、以下の点にご注意ください。
- 💊 点眼薬を指示通り使用してください(約4週間)
- 🚫 目を強くこすらない
- 🚿 術後1週間は入浴・洗顔・洗髪に注意(目に水が入らないように)
- 🏋️ 重い荷物を持つ、激しい運動は術後2週間程度控える
- 🚗 車の運転は、担当医の許可が出てから(通常1週間後検診時)
- もし手術後の見え方に満足できなかったら、レンズを入れ替えることはできますか?
- 技術的には、眼内レンズの入れ替え(交換)手術は可能です。ただし、再手術にはリスクも伴います。そのため、当院では術前に十分な説明と相談を行い、患者さんにとって最適なレンズを慎重に選択することを最も重視しています。ご不安な点は、遠慮なく何度でもご質問ください。
💬 受診前にご準備いただきたいこと
初診時にスムーズに相談できるよう、以下の点を事前に考えておいていただけると助かります。
- ✅ 日常生活で「見えにくい」と感じる場面(運転、読書、スマホ、階段など)
- ✅ よく行う趣味や活動(ゴルフ、パソコン作業、手芸など)
- ✅ 夜間の運転頻度
- ✅ 眼鏡使用に対するお考え(なるべく使いたくない / ある程度使っても構わない)
- ✅ 他の眼の病気の有無(緑内障、糖尿病網膜症など)
📝一般の方向けまとめ
🎯 ArtIOLsのポイント
- 周辺視野が改善される:従来の眼内レンズでは見過ごされてきた「周辺視野の質」を大幅に向上させます。周辺乱視を平均65%削減。
- 中心視力も妥協なし:平均視力1.0(20/20)を達成。従来の単焦点レンズと同等の優れた見え方です。
- 運転や歩行がより安心:周辺視野の改善により、横から来る車や足元の段差に気づきやすくなる可能性があります。
- 夜間も快適:ハロー・グレアが最小限で、夜間運転も安心です。
- 豊富な実績:2019年のCEマーク取得以降、2000例以上の使用実績があります。
💡 私が眼科医として考えること
視力検査の数値だけでなく、「患者さんが実際の生活で何を見たいか、何をしたいか」を大切にしたいと考えています。運転をよくされる方、活動的な生活を送りたい方、転倒が心配な方にとって、ArtIOLsのような周辺視野を重視したレンズは、これまでにない選択肢となる可能性があります。
もちろん、すべての方にArtIOLsが最適というわけではありません。患者さん一人ひとりの目の状態、生活スタイル、ご希望に応じて、最もふさわしいレンズを一緒に考えていきましょう。
執筆者(野口三太朗医師)への診察予約・お問い合わせは、記事の最後にご案内しています。
以下は医療従事者向けの専門的な内容です。
🔬ArtIOLsの光学設計と技術仕様
📚開発背景と学術的基盤
ArtIOLsは、スペイン・ムルシア大学のPablo Artal教授率いる研究チームによって開発された、周辺光学特性を最適化した非球面眼内レンズです。製造はスペインのVoptica SL社が担当し、2019年4月にCEマーク(CE 0120)を取得しています[5]。
Jaeken博士らの研究(2011年)により、従来の両凸型IOLを挿入した偽水晶体眼では、健常眼と比較して周辺部における非点収差(astigmatism)およびdefocusが著明に増大することが定量的に示されています[1]。この知見がArtIOLs開発の学術的根拠となっています。
⚙️技術仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 材質 | 高屈折率疎水性アクリル(紫外線・青色光フィルター付き) |
| 光学部直径 | 6.0 mm |
| 全体直径 | 13.0 mm |
| レンズタイプ | 単一ピース折りたたみ式 |
| 支持部(ハプティクス) | C-loop型 |
| 切開創サイズ | 2.2 mm(小切開手術対応) |
| 光学設計 | 反転メニスカス非球面設計(inverted meniscus aspheric design) |
| 承認状況 | CEマーク取得(2019年4月、CE 0120) |
🔍反転メニスカス設計の光学的根拠
人間の水晶体は、その独特な厚みと形状により像面湾曲(field curvature)特性を有しています。この特性により、広い視野において比較的高い像質を維持することが可能です[6]。
ArtIOLsの反転メニスカス形状は、この自然な水晶体の像面湾曲パターンを模倣しています。具体的なメカニズムは以下の通りです。
- 周辺部defocusの削減:像面と網膜形状の不整合を最小化
- 周辺非点収差の抑制:レンズ表面での光線屈折を最適化し、斜入射光線における非点収差発生を軽減
従来の両凸型IOLでは、周辺部において網膜前方に焦点が結ばれ(近視化)、同時に非点収差が増大します。ArtIOLsはこれらの光学的問題を、レンズ形状の工夫により解決しています[12]。
🎨製品ラインナップ:球面収差補正による3モデル
| モデル名 | 球面収差補正 | 焦点深度 | 臨床的特徴 |
|---|---|---|---|
| Art25 | 低レベルの負の球面収差 | 単焦点様 | 遠方視力優先、周辺視野重視 |
| Art40 | 中レベルの負の球面収差 | 軽度延長(EDOF効果) | 遠方〜中間距離カバー、Mix & Match用 | Art70 | 高レベルの負の球面収差 | 中等度延長(EDOF効果) | 中間距離重視、Mix & Match用 |
💡 臨床的意義
Art40とArt70のMix & Match移植により、遠方から約40cmまでの連続的な焦点深度を実現しつつ、回折型多焦点IOLに伴うdysphotopsia(ハロー・グレア)を最小限に抑えることが可能です[7]。
📊臨床エビデンス:周辺視野性能の定量評価
👁️視機能成績
Hervella博士らの前向き臨床研究(2023年)では、30名60眼にArt40とArt70を両眼Mix & Match移植し、術後1〜3ヶ月での視機能を評価しています[7]。
| 測定条件 | 矯正遠方視力(CDVA) | Snellen換算 |
|---|---|---|
| Art40 単眼 | logMAR 0.00 | 1.0(20/20) |
| Art70 単眼 | logMAR 0.00 | 1.0(20/20) |
| Art40/70 両眼 | logMAR 0.00 | 1.0(20/20) |
28名の患者が高水準の眼鏡非依存性を達成し、ハローや昼盲といったdysphotopsiaを伴わず、全焦点距離での良好な視機能を報告しています[7]。
🎯周辺視野性能:定量的評価
Robles博士らの研究(2022年)では、ArtIOL25を移植した87眼と標準単焦点IOLを移植した51眼を比較し、40度偏心位における周辺光学性能を測定しています[8]。
| 測定項目 | ArtIOL群 | 標準IOL群 | 改善効果 |
|---|---|---|---|
| 周辺defocus | 1.2 ± 0.8 D | 2.7 ± 1.1 D | 平均1.5D改善 ✅ |
| 周辺非点収差(J0成分) | 0.8 ± 0.4 D | 2.0 ± 0.7 D | 平均1.2D改善(65%削減) ✅ |
| 周辺コントラスト感度 | log CS 0.52 ± 0.12 | log CS 0.38 ± 0.15 | 統計学的有意差 p < 0.001 ✅ |
全ての測定項目において、統計学的に有意な改善(p < 0.001)が認められています[8]。
📐周辺屈折(Peripheral Refraction)の評価
周辺屈折の評価には、Hartmann-Shack波面センサーを用いた高速走査型周辺波面センサーが使用されています[1]。測定は鼻側40度偏心位で実施され、以下のパラメータが評価されています。
- M(等価球面度数):周辺defocusの指標
- J0(直乱視/倒乱視成分):非点収差の主成分
- J45(斜乱視成分):非点収差の斜め成分
Simpson博士らのレビュー(2025年)では、ArtIOLsを含む先進的IOL設計について、像面湾曲の制御が周辺視野改善の鍵であることが理論的に解説されています[12]。
🚗運転パフォーマンスへの影響:シミュレータ研究
Casares-López博士らの最新研究(2025年)では、運転シミュレータを用いた実際の運転パフォーマンス評価が実施されています[9]。
📊研究デザイン
- 対象:ArtIOL移植群15名 vs 標準IOL移植群17名
- 評価項目:40度偏心位での周辺コントラスト感度、運転シミュレータでの速度調整行動
- 統計解析:Spearman順位相関係数による相関分析
📈研究結果
| 評価項目 | 結果 | 統計学的有意性 |
|---|---|---|
| 40度偏心位での周辺コントラスト感度 | ArtIOL群が有意に優位 | p = 0.003 |
| 単純道路環境での速度適応 | ArtIOL群でより適切な速度調整 | p = 0.037 |
| 周辺CS vs 速度適応の相関 | 正の相関 | ρ = 0.342, p = 0.006 |
💡 臨床的解釈
本研究結果は、周辺視野の光学性能向上が実際の運転行動改善に寄与することを示唆しています。特に高齢ドライバーにおいて、周辺視野の質が運転安全性に直接影響する可能性があり、IOL選択時の重要な考慮事項となり得ます。
Ball & Owsley(1993)のUseful Field of View(UFOV)研究[3]、およびOwsley & McGwin(2010)のVision and Driving研究[2]とも整合する結果であり、周辺視野機能と運転パフォーマンスの関連性を支持するエビデンスです。
🆚他のプレミアムIOLとの比較
📊各IOLタイプの特性比較
| 特徴 | ArtIOLs | 回折型多焦点IOL | EDOF(焦点深度拡張型) |
|---|---|---|---|
| 設計原理 | 反転メニスカス屈折型 | 回折光学 | 位相シフト/屈折型 |
| 周辺視野性能 | ◎ 設計目標として最適化 | △ 考慮されていない | △ 考慮されていない |
| Dysphotopsia(ハロー・グレア) | ◎ 最小限 | × 顕著(夜間運転に影響) | ○ 軽度 |
| 焦点深度 | ○ 中等度(Mix & Matchで40cm以上) | ◎ 広範囲(遠・中・近) | ○ 中等度 |
| コントラスト感度 | ◎ 良好 | △ 低下傾向あり | ○ 良好 |
| 適応患者 | 活動的、運転重視、dysphotopsia回避希望 | 完全眼鏡非依存を強く希望 | 中間距離作業が多い |
🔬回折型IOLとの光学的差異
Togka博士らの研究(2020年)では、多焦点IOLにおける周辺光学性能がコントラスト検出に与える影響が報告されています[10]。回折型IOLでは、回折次数間の光エネルギー分配により、周辺部においてもコントラスト感度低下が生じます。
Łabuz博士らの研究(2024年)では、回折光学に伴うグレア効果の定量的評価が行われており、presbyopia-correcting IOLにおけるdysphotopsiaの発生機序が詳細に解析されています[16]。
ArtIOLsは屈折型設計であるため、これらの回折光学特有の光学的副作用を本質的に回避しています。
📋IOL選択のアルゴリズム提案
ArtIOLsを積極的に考慮すべき症例。
- ✅ 高頻度の夜間運転を行う患者
- ✅ dysphotopsiaに対する懸念が強い患者
- ✅ 活動的なライフスタイル(スポーツ、屋外活動)の患者
- ✅ 転倒リスクの高い高齢患者
- ✅ 中等度の眼鏡非依存で満足できる患者
他のIOLタイプを優先すべき症例。
- ⚠️ 完全な近見視力を強く希望する患者 → 回折型多焦点
- ⚠️ デスクワーク中心で中間距離を重視する患者 → EDOF
- ⚠️ 黄斑疾患等により周辺視野の恩恵を受けにくい患者 → 標準単焦点
📝眼科医向けまとめ
🎯ArtIOLsの臨床的意義
ArtIOLsは、従来のIOL設計では見過ごされてきた周辺光学特性の最適化という新しいパラダイムを提示しています。反転メニスカス設計により、周辺非点収差の65%削減、周辺defocusの有意な改善が定量的に証明されており、これらの光学的改善が実際の運転パフォーマンス向上と有意に相関することがシミュレータ研究で示されています。
📊エビデンスサマリー
| 評価項目 | エビデンスレベル | 結果 |
|---|---|---|
| 中心視力(CDVA) | 前向き臨床研究 | logMAR 0.00(20/20相当) |
| 周辺非点収差削減 | 比較対照研究 | 65%削減(p < 0.001) |
| 周辺コントラスト感度 | 比較対照研究 | 有意に改善(p < 0.001) |
| 運転パフォーマンス | シミュレータ研究 | 速度調整能力の向上(p = 0.037) |
| Dysphotopsia | 前向き臨床研究 | 最小限(屈折型設計) |
| 臨床使用実績 | 市販後データ | 2000例以上 |
💡 IOL選択への示唆
周辺視野の質的向上は、運転安全性、転倒予防、QOL向上に寄与する可能性があり、特に活動的な高齢患者やdysphotopsiaを懸念する患者において、ArtIOLsは有力な選択肢となります。Mix & Match移植(Art40/70)により、回折型多焦点IOLに伴う光学的副作用を回避しつつ、実用的な焦点深度を確保できる点も臨床的に重要です。
今後、日本国内での使用経験の蓄積と長期成績データの集積により、より確固たるエビデンスの構築が期待されます。
⚠️医療情報に関する注意事項
本記事は、眼科専門医の立場から、医学論文などの科学的根拠に基づいて情報を提供するものです。ただし、個々の患者さんの状態によって最適な治療法は異なります。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。診断や治療については、必ず眼科専門医の診察を受け、ご自身の状態に合った適切な医療を受けてください。
本記事に記載された治療法や医療機器の情報は、記事執筆時点(2025年)のものです。医療は日々進歩しており、今後新しい知見が得られる可能性があります。最新の情報については、受診時に担当医にご確認ください。
●多焦点眼内レンズArtIOLsについてはこちらのページをご覧ください。
●当院取扱い多焦点眼内レンズ・単焦点眼内レンズについてはこちらのページをご覧ください。
📚 参考文献リスト
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