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【白内障/硝子体手術の痛み💊】術中の不安を解消!最新の眼内手術 疼痛管理と麻酔法を専門医が解説

📖 この記事について

この記事は2部構成になっています。

🏥 一般患者さん向け:眼内手術の痛みについて

🌟 はじめに:手術の痛みが心配な方へ

📝 結論から言うと…

白内障手術や硝子体手術は、適切な麻酔と管理により、ほとんどの方が安心して受けられる手術です。最新の研究によると、手術中の痛みは10点満点で平均2.26点程度であり、多くの患者さんが「思ったより痛くなかった」と感じています[5]。

😟 手術前の不安、ありませんか?

こんな心配をお持ちの方は多いです。

  • 💭 「目の手術って痛いの?」
  • 💭 「麻酔は効くの?」
  • 💭 「手術中は何が見えるの?」
  • 💭 「術後はどれくらい痛むの?」
⚠️ 重要ポイント

実は「不安」そのものが痛みを強く感じさせる最大の原因です[16]。手術について正しく理解することで、不安が軽減され、痛みも和らぎます。

💉 どんな麻酔方法があるの?

🔹 笑気麻酔(低濃度)

どんな方法?:吸入するだけの簡単な方法です。

こんな方に向いています

  • ✅ 通常麻酔に追加して効果を実現したい方

メリット:注射が無いので痛くない、すぐに効く、回復が早い

🔹 静脈麻酔(局所麻酔)

どんな方法?:点滴をして気持ちを落ち着かせる方法です。

こんな方に向いています

  • ✅ 通常の局所麻酔では怖いと強く思う方

メリット:意識レベルが手術中に落ちるため、恐怖感が非常にすくない。(術中の厳重な管理が必用です。)

🔹 点眼麻酔(目薬タイプ)

どんな方法?:麻酔薬の目薬を数回さすだけの簡単な方法です。

こんな方に向いています

  • ✅ 通常の白内障手術
  • ✅ 手術時間が短い場合
  • ✅ 緊張しにくい方

メリット:注射がないので怖くない、すぐに効く、回復が早い

🔹 テノン嚢下麻酔(目の周りに麻酔薬を入れる方法)

どんな方法?:目の表面を少し切開し、目の周りの膜の下に麻酔薬を入れる方法です。

こんな方に向いています

  • ✅ 強い近視の方
  • ✅ 複雑な手術が必要な方
  • ✅ 緊張しやすい方

メリット:痛みをほぼ完全にブロック、安心感が高い

🔹 前房内麻酔(目の中に麻酔薬を入れる方法)

どんな方法?:手術中に目の中に直接麻酔薬を入れる方法です。

メリット:点眼麻酔と組み合わせることで、痛みを感じる可能性が60%減少します[12]。

📊 実際の痛みはどれくらい?

🏥 白内障手術の場合
表1:白内障手術後の痛みの推移
⏰ タイミング 😣 痛みを感じる方の割合 📝 説明
手術中 約10-15% ほとんどの方は軽い圧迫感程度
手術直後〜1時間 約34% 軽い違和感を感じる方もいます
翌日 約10% 目薬で対応できます
6週間後 約7% ほとんどの方は気にならなくなります

💡 ポイント:痛みを感じた方でも、その多くは「軽い痛み」であり、強い痛みを感じる方は少数です[1]。

🤔 両目の手術を予定している方へ

意外な事実があります。

⚠️ 2回目の手術の方が、1回目より少し痛みを感じやすいという研究結果があります[2]。

なぜ?
  • 1回目の経験から「次はこうなる」と予想できるため、感覚に敏感になる
  • 不安は減っても、痛みへの意識が高まる
対策
  • ✅ 2回目の手術は2週間以上間隔を空けることが推奨されています[18]
  • ✅ 医師と相談して、必要に応じて麻酔を強化することも可能です

💊 術後の痛み対策

🔹 処方される目薬

術後は以下のような目薬が処方されることが一般的です。

  • 💧 抗炎症目薬(痛みと腫れを抑える)
  • 💧 抗菌目薬(感染予防)
  • 💧 ステロイド目薬(炎症を抑える)

これらを指示通りに使用することで、痛みはしっかりコントロールできます。

🔹 痛みを和らげるコツ
  • 😎 明るい光を避ける:サングラスの使用がおすすめ
  • 🛏️ 十分な休息を取る:目を休ませることが大切
  • 🚫 目をこすらない:保護メガネを活用
  • 💧 目薬を忘れずに:処方された通りに使用

❓ よくある質問(FAQ)

手術中、目は見えているの?
明るい光が見える程度です。手術器具がはっきり見えることはありません。麻酔が効いているので、リラックスして受けられます。
痛みで手術が中断することはある?
追加の麻酔が必要になることは約7〜14%ありますが[12]、すぐに対応できますので手術が中断することはまずありません
どんな人が痛みを感じやすい?

以下の方は痛みを感じやすい傾向があります[4,16]。

  • 手術前の不安が強い方
  • 女性
  • ドライアイがある方
  • 自己免疫疾患をお持ちの方

事前にお伝えいただければ、麻酔方法を調整できます

寝ながら手術受けられますか?
通常は局所麻酔で十分ですが、静脈麻酔可能です。ご相談ください。
痛みが長く続くことはある?
まれに術後数ヶ月間、ドライアイのような症状が続く方がいます(約34%)[3,4]。これは治療可能ですので、気になる症状があれば遠慮なくお伝えください。

🏥 当院での取り組み

当院では、患者さんの痛みと不安を最小限にするため、以下の取り組みを行っています。

  • 術前カウンセリング:手術の流れを丁寧にご説明
  • 個別の麻酔選択:お一人おひとりに最適な麻酔方法をご提案
  • リラックスできる環境:落ち着いた手術室でお迎えします
  • 笑気麻酔、静脈麻酔などの手厚い麻酔:気になることがあればいつでもご相談いただけます

👨‍⚕️ 眼科医向け:眼内手術における疼痛管理の最新エビデンス

Evidence-Based Pain Management in Intraocular Surgery: A Comprehensive Review for Clinical Practice

  1. 眼内手術における疼痛発生率の実態
  2. 麻酔法選択の臨床的意義
  3. 疼痛の予測因子と個別化戦略
  4. 第2眼手術における疼痛増加のパラドックス
  5. 多角的疼痛管理プロトコル
  6. 臨床実践への応用とリスク層別化
  7. 結論
  8. よくある質問(FAQ)— 眼科医向け

📋 エグゼクティブサマリー

眼内手術後の疼痛は、術後6週間以内に患者の10〜34%に影響を及ぼし、一部の患者では数ヶ月間持続する不快感を経験する[1]。これは従来認識されていたよりもはるかに一般的である。現代のエビデンスは、眼科手術における疼痛管理が、麻酔技術を手術の複雑さ、患者の不安レベル、個別のリスク因子に適切にマッチングさせることに決定的に依存することを明らかにしている。

特筆すべきは、第2眼手術が第1眼手術よりも有意に強い疼痛を引き起こすという驚くべき知見である(平均差0.69、10点スケール、P<0.00001)[2]。これは、患者の適応に関する従来の仮説に疑問を投げかけている。この分野は、局所麻酔ブロックのみに依存するアプローチから、局所NSAIDs、不安管理、個別化プロトコルを重視する多角的アプローチへとシフトしている。

📊 1. 眼内手術における疼痛発生率の実態

1.1 白内障手術後の疼痛

196例の白内障患者を対象とした前向き研究では、術後最初の数時間で34%の患者が疼痛を報告し、24時間後には10%、6週間後には7%に減少した[1]。重要なことに、疼痛を経験した患者のほとんどは軽微な不快感ではなく、有意な疼痛(NRS≥4/10)を経験していた。

さらに懸念されるのは、術後6ヶ月時点で34%の患者に持続性術後疼痛(PPP)が発現し、18%が重度の症状(DEQ5スコア≥12)を経験していることである[3,4]。これは歯科インプラントやヘルニア修復術後と同等の発生率である。

表1:白内障手術後の疼痛発生率と疼痛スコアの経時的変化
⏰ 評価時点 📊 疼痛発生率 📈 平均疼痛スコア 📚 文献
術中 VAS 2.26±0.85 [5]
術後1時間 VAS 0.40±0.69 [5]
術後24時間 10% 3.9±1.5 [1]
術後6週間 7% [1]
術後6ヶ月(PPP) 34% [3,4]

1.2 硝子体手術後の疼痛

20ゲージ硝子体手術では、術後1日目に49.4%の患者が疼痛を報告した[6]。麻酔法により疼痛レベルに大きな差が生じる。テノン嚢下麻酔では中央値VAS 1(0〜100スケール)に対し、球後麻酔では中央値11.5(P<0.0001)と、臨床的に有意な差が認められた[7]。回復室での疼痛は100mmVASスケールで平均21.8、夜間には26.7に上昇した。

1.3 硝子体内注射の疼痛

硝子体内注射は侵襲性が低いものの、依然として有意な不快感を引き起こす。複数の研究で平均VASスコアは2.6〜4.8(0〜10スケール)の範囲であった[8]。注射部位により疼痛に有意差があり、上鼻側象限が最も疼痛が少なく(VAS 1.5±1.7)、上耳側が最も疼痛が強い(VAS 4.0±2.0、P<0.001)[9]。興味深いことに、抗うつ薬使用患者は有意に高い注射時疼痛を報告した(5.79±3.43 vs 4.52±2.70、P<0.05)[10]。

💉 2. 麻酔法選択の臨床的意義

2.1 点眼麻酔と前房内リドカイン

点眼麻酔は前房内リドカインの有無にかかわらず、最も一般的なアプローチとなっており、最近の調査では白内障手術の47.9%で使用されている[11]。欧州のレジストリでは2008年から2018年にかけて使用率が30%から76%に増加した。

Cochraneシステマティックレビュー(13のランダム化試験、2,355名)により、前房内リドカイン追加は点眼麻酔単独と比較して術中疼痛を10点スケールで0.26点減少させることが確立された(95% CI: -0.39〜-0.13、P<0.001、I²=0%)[12]。しかし、この差は統計学的に有意であるものの、臨床的に意味のある最小差1.0点を下回る可能性がある。疼痛の有無(二値アウトカム)については、前房内リドカインはオッズを60%減少させた(OR 0.40、95% CI: 0.29〜0.57、P<0.001)。

表2:麻酔法別の疼痛管理効果の比較
💉 麻酔法 😣 術中疼痛 📅 術後疼痛 📝 特記事項
点眼麻酔単独 基準値 低い 追加麻酔7-14.2%必要[12]
点眼+前房内リドカイン −0.26点 差なし OR 0.40 (疼痛あり)[12]
テノン嚢下麻酔 VAS中央値1 低い 50%が無痛[7,13]
球後/球周囲麻酔 VAS中央値11.5 同等 合併症リスク1-3%[14]

2.2 テノン嚢下麻酔の優位性

テノン嚢下麻酔は複雑症例や高リスク症例において優れた疼痛管理を提供する。301眼を対象とした比較研究では、テノン嚢下麻酔は点眼麻酔(P=0.0009)および前房内麻酔(P=0.0055)の両方と比較して有意に低い疼痛を示した[15]。

高度近視眼(−6D超)では、前房内麻酔がテノン嚢下麻酔と比較して有意に高い疼痛を示すため(P=0.0055)、この集団では局所麻酔ブロックが望ましい[15]。テノン嚢下麻酔はまた、優れた安全性プロファイルを示す。柔軟なカニューレ技術を用いた35,850例の手術では、視力を脅かす合併症はゼロであり、全シリーズを通じて生命を脅かす事象は「極めてまれ」と報告されている[13]。

2.3 球後麻酔vs球周囲麻酔

6つのRCT(1,438名)のCochraneレビューでは、両技術間の術中疼痛知覚に差はないことが示された[14]。しかし、球周囲麻酔はより多くの結膜浮腫を生じ(RR 2.11、95% CI: 1.46〜3.05)、追加注射を必要とする一方、球後麻酔はより多くの眼瞼血腫を引き起こす(球周囲RR 0.36、95% CI: 0.15〜0.88)[14]。球後麻酔は眼球穿孔、球後出血、まれに脳幹麻酔(0.29%の呼吸抑制率)を含む重篤な合併症のリスクが1〜3%ある[14]。

🎯 3. 疼痛の予測因子と個別化戦略

3.1 術前不安:最強の修正可能因子

術前不安は、他のどの測定因子よりも強く手術時疼痛と相関する。103名の白内障患者を対象としたマスク化前向き研究では、Visual Analog
Scale for Anxiety(VASA)が多変量回帰において疼痛強度の唯一の有意な予測因子
であった(R²=36.61%、P<0.001)、相関係数r=0.62(P<0.001)[16]。

重度の不安を有する患者(VASA≥7、サンプルの18.5%)は、重度の疼痛(VAS≥7)を経験する可能性が10倍以上高かった[16]。不安スクリーニングの予測力は臨床的に有用であることが証明された。VASAスコア>4は、感度88.9%、特異度69.4%で重度疼痛を予測し、術前の高リスク患者の同定を可能にした。

表3:持続性術後疼痛(PPP)のリスク因子と多変量解析によるオッズ比
⚠️ リスク因子 📊 オッズ比 (95% CI) 📈 P値 📚 文献
自己免疫疾患 10.1 (1.07-96.4) 0.04 [4]
抗ヒスタミン薬使用 6.73 (2.23-20.4) 0.001 [4]
慢性疼痛疾患 4.29 (1.01-18.1) 0.06 [4]
ドライアイ(既往) 3.90 (1.59-9.54) 0.003 [4]
抗うつ薬使用 2.97 (1.12-7.90) 0.03 [4]
女性 2.68 (1.20-6.00) 0.01 [4]

3.2 併存疾患と薬剤の影響

持続性術後疼痛の最強予測因子は自己免疫疾患であり、驚異的な10.1倍のリスク上昇をもたらす(95% CI: 1.07〜96.4、P=0.04多変量解析)[4]。これには関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性硬化症が含まれる。これは炎症性疾患における疼痛処理の変化と既存の眼表面疾患を反映している可能性が高い。

薬剤プロファイルは持続性疼痛との予想外の関連を示す。抗ヒスタミン薬使用は最強の関連を示し、持続性疼痛のオッズが6.73倍に上昇する(95%
CI: 2.23〜20.4、P=0.001)[4]。PPP患者の34%が抗ヒスタミン薬を使用しているのに対し、対照群ではわずか8%である。これは眼表面に影響を与える基礎的なアレルギー性炎症またはアレルギー反応と疼痛反応の共通神経経路を反映している可能性がある。

抗うつ薬は持続性疼痛リスクを3倍にする(OR 2.97、95% CI: 1.12〜7.90、P=0.03多変量解析)[4]。PPP患者の37%が抗うつ薬を服用しているのに対し、対照群では15%である。抗うつ薬使用者はまた、硝子体内注射時により高い急性疼痛を報告する(5.79±3.43 vs 4.52±2.70、P<0.05)[10]。

🔄 4. 第2眼手術における疼痛増加のパラドックス

直感に反する「第2眼症候群」は複数の研究で一貫して現れている。8つの前向き観察研究のメタ解析では、第2眼手術が術後すぐにより高い疼痛スコアを示し、加重平均差0.69点(95% CI: 0.40〜0.98、P<0.00001)であった[2]。点眼麻酔下では特に、差が1.08点に増加する(95% CI: 0.79〜1.36、P<0.00001)[2]。

パラドックスなことに、不安は第2眼手術で減少する(SMD −0.40、95% CI: −0.64〜−0.16、P=0.001)[17]、それにもかかわらず疼痛は増加する。この解離は、単純な不安効果を超えたメカニズム、すなわち第1回手術経験からの疼痛処理の変化、最近の手術外傷からの感作の増加、または予想されることを知った後の感覚への意識の高まりを示唆している。

手術時期が第2眼の疼痛に決定的に影響する。466名の両側手術患者を対象とした研究では、術直後(P=0.043)と1日目(P=0.002)で第2回手術の疼痛スコアが有意に高かった[18]。重要な間隔は2週間と思われる。この間隔前に第2眼手術を行うと疼痛増加が最大となる。

⚠️ 推奨:疼痛悪化を最小限に抑えるため、2週間以内の第2眼手術は避けるべきである[18]。

💊 5. 多角的疼痛管理プロトコル

5.1 局所NSAIDsの中心的役割

局所NSAIDsは現代の術後疼痛管理の基盤を構成する。19のRCT(7,234名)のネットワークメタ解析により、薬剤を有効性別にランク付けした。疼痛緩和については、ネパフェナクが最も高い有効性を示し、次いでブロムフェナクとケトロラクであった[19]。炎症制御については、ジクロフェナクが第1位、次いでネパフェナク、ケトロラク、ブロムフェナク、フルルビプロフェンであった[19]。

標準的な術後プロトコルは通常、NSAIDsとコルチコステロイドを組み合わせる。代表的なレジメンは、プレドニゾロン+ガチフロキサシン+ネパフェナクの配合点眼薬を1〜7日目に1日4回(術前2日から開始)、次いでプレドニゾロン+ネパフェナクを7〜28日目に1日3回、3週間かけて週1回ずつ減量する[20]。Cochraneレビューでは、NSAIDs単独がコルチコステロイド単独と比較してCMEリスクを74%減少させることが示された(RR
0.26、95% CI: 0.17〜0.41)[21]。

表4:主要な局所NSAID薬剤の特性比較
💊 薬剤 ⏰ 投与回数 📝 特徴 📚 文献
ネパフェナク0.1% 1日3回 角膜浸透性80%、疼痛緩和1位 [19,20]
ブロムフェナク0.09% 1日1回 COX-2選択性18倍、便利な投与 [19,20]
ケトロラク0.4-0.5% 1日4回 広く使用、疼痛緩和3位 [19]
ジクロフェナク0.1% 1日4回 炎症制御1位、CME予防 [19,21]

5.2 オピオイド使用の慎重な制限

現在の周術期オピオイド使用率は懸念が高まっているにもかかわらず依然として高い。20,116の眼科手術(76.1%が白内障手術)の解析では、監視下麻酔ケア中に79.5%の患者がフェンタニルを受けた[22]。しかし、フェンタニル使用は回復遷延と強く関連する。回復遷延患者の97.2%がフェンタニルを受けたのに対し、予想される回復時間の患者では77.5%であった[22]。

硝子体手術はより高い鎮痛薬要求を生じる。ランダム化試験では、対照群が最初の24時間でアセトアミノフェンを必要としたのが87.8%であったのに対し、先制投与では52.4%、予防投与では66.7%であった(P=0.008)[23]。2時間(P=0.008)および4時間(P=0.012)での疼痛スコアは先制/予防戦略で有意に減少した[23]。

5.3 ガバペンチノイドの役割

ガバペンチンとプレガバリンは特定の適用において有望性を示す。屈折矯正手術における6つのRCT(391名)のメタ解析では、プレガバリンが1日目(SMD −0.32、95% CI: −0.54〜−0.09)および2日目(SMD −0.55、95% CI: −0.85〜−0.25)に術後疼痛を減少させることが示された[24]。ガバペンチンは2日目に有意な疼痛減少を生じる(SMD −0.42、95% CI: −0.71〜−0.13)が1日目には効果がない[24]。

🏥 6. 臨床実践への応用とリスク層別化

6.1 術前スクリーニングプロトコル

エビデンスの統合により、体系的アプローチを通じた転帰改善の明確な機会が明らかになる。術前スクリーニングでは、検証された不安尺度(VASA、APAIS)を用いて高リスク患者を特定すべきであり、スコア>4は強化介入を必要とする[16]。

リスク層別化には、女性、自己免疫疾患、慢性疼痛状態、精神科薬物使用、既存のドライアイ、第2眼手術歴を含めるべきである[4]。これらの患者には、現実的な疼痛予想に関する積極的なカウンセリングと、点眼アプローチよりも局所麻酔の検討が必要である。

6.2 不安管理介入

疼痛とのr=0.62相関を考えると、不安管理介入は第一選択の地位に値する[16]。エビデンスに基づく選択肢には以下が含まれる[25]。

  • 🎬 術前教育ビデオ
  • 🎵 手術中の音楽療法
  • 🧘 リラクゼーション訓練
  • 🌸 アロマセラピー
  • 💊 術前60〜90分のメラトニン3〜10mg

高品質の看護技術は大きな効果量(SMD −1.19)を生み出し、リソース要件にもかかわらず体系的な実施を正当化する[25]。

6.3 麻酔選択アルゴリズム

麻酔選択アルゴリズムは、技術を手術の複雑さと患者因子にマッチングさせるべきである。

表5:臨床状況別の推奨麻酔選択アルゴリズム
🏥 臨床状況 💉 推奨麻酔法 📝 追加考慮事項
標準白内障手術・低不安患者 点眼±前房内リドカイン 追加麻酔準備7-14%
高度近視(−6D超) テノン嚢下麻酔 前房内麻酔で有意に高い疼痛
高不安患者(VASA>4) テノン嚢下麻酔 術前不安管理介入を追加
複雑手術・硝子体手術 テノン嚢下麻酔 球後比でVAS中央値1 vs 11.5
第2眼手術 麻酔グレードアップ検討またはISBCS 2週間間隔避ける、疼痛+0.69点
抗凝固療法中 点眼またはテノン嚢下 球後/球周囲麻酔避ける

📝 7. 結論

眼内手術における疼痛は、急性術後不快感から治癒を超えて数ヶ月持続する慢性神経障害性症状まで、その結果が及ぶ患者のかなりの少数派に影響を与える。現代のエビデンスは、不安(r=0.62)[16]、女性(OR 2.68)[4]、自己免疫疾患(OR 10.1)[4]、慢性疼痛状態(OR 4.29)[4]、特定の薬剤(抗ヒスタミン薬OR 6.73、抗うつ薬OR 2.97)[4]がリスクを劇的に増加させることを示している。

麻酔選択は転帰を決定的に左右する。テノン嚢下麻酔は優れた疼痛管理(中央値VAS 1 vs球後11.5、P<0.0001)[7]と優れた安全性を提供する一方、点眼麻酔は約1点高い術中疼痛にもかかわらず標準症例で成功する[12]。局所NSAIDs(ネパフェナク、ブロムフェナク、ケトロラク)[19,20]、先制不安介入(音楽、教育、メラトニン)[25]、オピオイド節減全身鎮痛薬[22,23]を重視する多角的管理が現在のベストプラクティスを代表する。

第2眼手術が不安の低下にもかかわらず第1眼手術より有意に強い疼痛を引き起こすという予想外の知見(加重平均差0.69、P<0.00001)[2]は、連続的両側手術に対する強化プロトコルを必要とする。将来の進歩には、リスク層別化モデルの前向き検証、標準化された疼痛評価ツール、そして持続性術後疼痛を発症する34%の患者に対する標的介入が必要であり、疼痛管理を反応的治療から予防的予防へと変革する必要がある。

❓ よくある質問(FAQ)— 眼科医向け

点眼麻酔と前房内リドカインの併用は臨床的に意味があるか?
統計学的には有意だが(−0.26点、P<0.001)、臨床的に意味のある最小差(MCID)1.0点を下回る可能性がある。ただし、疼痛発生のオッズを60%減少させる(OR 0.40)ため、高リスク患者では検討価値がある[12]。
第2眼症候群への最善の対策は?
(1)2週間以上の間隔を空ける、(2)第2眼では麻酔法のグレードアップを検討、(3)両眼同日手術(ISBCS)も選択肢となる。不安は減少するが疼痛は増加するという解離に注意[2,17,18]。
持続性術後疼痛(PPP)のハイリスク患者をどう特定するか?
自己免疫疾患(OR 10.1)、抗ヒスタミン薬使用(OR 6.73)、慢性疼痛(OR 4.29)、ドライアイ既往(OR 3.90)、抗うつ薬使用(OR 2.97)、女性(OR 2.68)を術前に確認。これらの患者には積極的なカウンセリングと強化麻酔を検討
術後NSAIDの選択基準は?
疼痛緩和優先ならネパフェナク(角膜浸透性80%)、炎症制御優先ならジクロフェナクコンプライアンス優先ならブロムフェナク(1日1回投与)。CME予防にはNSAIDsがステロイド単独より優れる(RR 0.26)[19,21]。
術前不安スクリーニングは実際に有用か?
VASA>4は感度88.9%、特異度69.4%で重度疼痛を予測。不安と疼痛のr=0.62は非常に強い相関であり、修正可能な最大のリスク因子である。音楽療法、教育ビデオ、メラトニンなどの介入が有効[16,25]。

📚 参考文献
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本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です

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記事監修者について

野口 三太朗

  • ASUCAアイクリニック 仙台マークワン 主任執刀医
  • 社会医療法人 三栄会 ツカザキ病院 眼科 医長
  • 日本眼科学会認定 眼科専門医

専門分野は白内障手術・網膜硝子体手術。
数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。
日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会ほかの各会員。医学博士。

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