🌟 RayOne Galaxy IOL完全ガイド:世界初のAI設計スパイラル型眼内レンズ【2025年最新版】
📋 エグゼクティブサマリー
結論
RayOne Galaxyは、従来の三焦点レンズの視力範囲と強化単焦点レンズの視力質を組み合わせた、画期的な次世代眼内レンズです。
RayOne Galaxyは世界初のAI設計スパイラル型眼内レンズであり、2024年9月にバルセロナで開催されたESCRS会議で正式発表されました。従来の回折型多焦点レンズとは根本的に異なる非回折型スパイラル光学設計を採用し、0%の光損失で全距離視力を実現しながら、従来の三焦点レンズと比較してハロー・グレアを劇的に低減します。
2025年11月時点で既に6,000眼以上に移植され、臨床初期データは極めて良好ですが、査読付き論文はまだ発表されていません。米国FDA承認は2026年を見込んでいます。
⚡ 最重要所見
180眼の国際多施設評価で全距離視力が0.1 logMAR以下を達成、33%の患者がハローなし・74%がグレアなしと報告し、従来型三焦点レンズの光学的妥協点を大幅に改善する可能性を示唆しています。
👨⚕️ 眼科専門医としての見解
私の診療経験から見て、多焦点レンズの最大の課題は「視力の質」と「視力範囲」のトレードオフでした。特に従来の回折型三焦点レンズでは、優れた全距離視力を提供する一方で、ハローやグレアといった光学的副作用が避けられず、夜間運転を頻繁にする患者さんには慎重な対応が必要でした。
RayOne Galaxyの登場は、この長年の課題に対する新しいアプローチとして注目に値します。当院での症例検討においても、このようなスパイラル光学技術は理論的に非常に優れた特性を持つと考えています。ただし、長期的な臨床データの蓄積を待つ必要があることも事実です。本記事では、現時点で入手可能な全ての科学的エビデンスを基に、公平な評価を提供いたします。

- 🔬 技術仕様と革新的な光学設計
- 🔍 光学原理とメカニズム
- 📊 臨床試験データと視力成績
- 😊 患者満足度とQOLデータ
- ⚖️ 他の多焦点IOLとの比較データ
- 🏥 手術技術と臨床応用
- ✅ 適応症
- ⚠️ 合併症と対処法
- 🔬 最新研究動向と進行中臨床試験
- 📚 査読付き論文の状況
- 🔮 新興研究トピック
- 📅 長期アウトカムデータ
- 🌐 規制状況
- ⚠️ 研究の限界とギャップ
- 💡 結論と臨床的意義
- ❓ よくある質問(FAQ)
🔬 技術仕様と革新的な光学設計
💡 スパイラル光学アーキテクチャとは?
RayOne Galaxyの最大の特徴は、人工知能を用いて最適化されたスパイラル屈折光学系です。この設計は回折型でも従来型屈折型でもなく、レンズ表面にフェルマー螺旋パターンを統合した全く新しいアプローチを採用しています。

🎯 光学ゾーン構造の3層設計
レンズは3つの異なるゾーンで構成されます、
- 内側ゾーン(0-1.1mm半径):中間・遠方視力用の非スパイラル屈折ゾーン
- スパイラルゾーン(1.1-3.2mm半径):焦点深度延長を生成するスパイラル屈折パターン
- 外側ゾーン(3.2mm以上):遠方視力専用ゾーン
📐 数学的基礎
レンズ表面は以下の式で記述されます(Galinier et al., Optica 2024)、
C = 2c₁(1 + cos(Nφ + ηρ(r)²)) + 2c₂(1 – cos(Nφ + ηρ(r)²))
各パラメータの意味
- C = 曲率または標高関数
- c₁, c₂ = 表面変調振幅を制御する定数係数
- N = スパイラルアーム数(位相幾何学的パラメータ)
- φ = 角度位置(極座標)
- η (eta) = スパイラル「ねじれ」強度を制御する位相幾何学的荷電パラメータ
- r = 中心からの放射距離
- ρ(r) = r/R = 正規化半径関数
この数式により、連続的な焦点深度延長と瞳孔径に依存しない多焦点性が実現されます。
📊 技術仕様詳細
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| モデル番号 | RAO605G(非トーリック)、RAO615X(トーリック) |
| 度数範囲 | 球面度数:+5.0~+30.0D(0.5D刻み)、トーリック:SE +6.0~+30.0D、円柱+0.75~+4.5D |
| 材質 | Rayacrylハイドロフィリックアクリル(単一ピース) |
| 含水率 | 平衡状態で26% |
| 屈折率 | 1.46 |
| アッベ数 | 56 |
| 全体直径 | 12.5mm |
| 光学部直径 | 6.0mm |
| 光学部形状 | 両凸 |
| ハプティック | 抗ボールティングハプティック(AVH)技術搭載閉ループ型 |
| UV保護 | ベンゾフェノンUV吸収剤(380nmで10%カットオフ) |
| エッジデザイン | Amon-Apple 360°エンハンスドスクエアエッジ(後面) |
出典:Rayner技術仕様書、Galaxy製品パンフレット
🔍 光学原理とメカニズム
🌀 スパイラル光学渦技術
レンズはスパイラル化により光学渦を生成し、通過する光を「回転」させます。これにより以下の特性が実現されます、
- 漸進的焦点延長:離散的焦点ではなく連続的な焦点深度延長
- 光線経路ラッピング:周辺光線が光軸を「巻き込み」、3つの高密度集光ゾーンを形成
- 渦誘起型多焦点性:基本レンズ度数から双方向に焦点深度を延長
- 滑らかな度数遷移:急激な光学ゾーン境界を排除し、光散乱とディスフォトプシアを低減
📈 モジュレーション伝達関数(MTF)
- Through-focus MTF曲線で3つの明確なピーク
- 中間/基本焦点で中央ピーク
- 中央ピークから約±1.5Dに2つの周辺ピーク
- 回折型三焦点より滑らかなMTFプロファイル(波状パターンなし)
出典:Gatinel博士によるスパイラル光学解説
✨ 光分配と光損失:最大の革新
重要な特性
- 回折光損失0% – 従来の回折型多焦点レンズは通常15-20%の光損失
- 利用可能な光が全て網膜に到達
- 連続的分配パターン(離散的パーセンテージ割り当てではない)
- デフォーカス曲線は+0.5Dから-2.5Dにかけて滑らかなプラトー
- 約4.0Dの範囲で0.2 logMAR以下の両眼デフォーカス曲線視力
出典:Optica 2024論文
📊 臨床試験データと視力成績
🌍 国際多施設前臨床評価研究

研究デザイン
- 対象眼数:180眼以上(10カ国、10施設)
- 術者:10名の経験豊富な外科医
- IOL:RayOne GalaxyおよびGalaxy Toric
- フォローアップ:術後1ヶ月および3ヶ月
- 研究タイプ:市販後、実臨床評価
主要研究者
- Prof. Gerd U. Auffarth(ドイツ)
- Mr. Allon Barsam(英国、OCL Vision)
- Dr. Francesco Carones(イタリア)
- Mr. Sanjay Mantry(英国、Vision Scotland)
- その他欧州、トルコ、ニュージーランドの術者
👁️ 視力成績(3ヶ月時点)
単眼視力
| 距離 | 矯正視力 | 非矯正視力 |
|---|---|---|
| 遠方 | -0.01 logMAR | 0.09 logMAR |
| 中間 | 0.07 logMAR | 0.07 logMAR |
| 近方 | 0.10 logMAR | 0.12 logMAR |
両眼視力(3ヶ月時点)
| 距離 | 矯正視力 | 非矯正視力 |
|---|---|---|
| 遠方 | -0.04 logMAR | 0.02 logMAR |
| 中間 | 0.01 logMAR | 0.01 logMAR |
| 近方 | 0.04 logMAR | 0.06 logMAR |
機能的視力達成率(3ヶ月、両眼)
| 視力レベル | 遠方 | 中間 | 近方 |
|---|---|---|---|
| ≤0.2 logMAR | 100% | 100% | 96% |
| ≤0.1 logMAR | 96% | 96% | 88% |
重要所見:全距離で平均矯正・非矯正視力が0.1 logMAR以下(20/25以上に相当)
出典:Redefining Vision臨床報告、Ophthalmology Times Europe
📉 デフォーカス曲線特性
- 滑らかで連続的:三焦点レンズの波状パターンなし
- 範囲:約4.0D範囲で0.2 logMAR以下の視力
- プラトー:+0.5Dから-2.5Dまで滑らか
- 近点:-2.8D(36cmに相当)まで全範囲視力延長
🎯 屈折予測性(3ヶ月時点)
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 平均球面等価屈折 | -0.29D ± 0.35D |
| 予測誤差(Barrett Universal II使用) | -0.16D ± 0.33D |
| ±0.50D以内 | 78% |
| ±1.0D以内 | 98% |
| 残余乱視(トーリック) | -0.25D ± 0.28D |
出典:miVision Journal 2025年4月号
🔆 コントラスト感度
RALV前臨床研究(30名の健常者)
- 回折型三焦点レンズよりも良好なコントラスト感度(統計的有意差あり)
- 高空間周波数でも正常範囲内を維持
- 0%光損失により高空間周波数での低下が少ない
- 強化単焦点レンズと同等またはそれ以上
外科医報告(Dr. Sri Ganesh)
「術後1週目でもコントラスト感度は正常範囲内。高空間周波数でも三焦点レンズと比較して低下が少ない。光損失がないため正常範囲内に留まる」
出典:Cake Magazine、ACMIT RALV研究
😊 患者満足度とQOLデータ
✨ ディスフォトプシア(ハロー・グレア)プロファイル
多施設臨床評価(1ヶ月時点、n=52)
🎉 画期的な結果
- 33%の患者がハローなしと報告(三焦点IOLでは前例のない数値)
- 74%の患者がグレアなしと報告
- 症状がある患者の大多数は「軽度」と評価

📊 RALV前臨床研究比較
ハローサイズ
- Galaxy IOLのハローサイズは回折型三焦点よりも強化単焦点に近い
- 統計的有意差 Galaxy vs. 三焦点(p<0.001)
- 患者の主観的評価 全距離でGalaxy IOLを好む(p≤0.001)
出典:Redefining Vision臨床報告
💬 患者満足度(定性的報告)
外科医による患者フィードバック
- Dr. Fernando Llovet:「私の患者は非常に満足している。全距離で優れた視力があり、ディスフォトプシアもない」
- Mr. Allon Barsam:「圧倒的に肯定的なフィードバック。患者は眼鏡なしで読書でき、視力の質に感激している」
- Dr. Francesco Carones:「Galaxyは新たなマイルストーンを設定し、視力の質に関する妥協を最小限に抑えながら非常に高い眼鏡非依存性を提供する」
- Dr. Sri Ganesh(インド):「92%の患者が20/25以上の視力を達成」
⚠️ QOL質問票データの制限
重要な制限:利用可能な文献では検証済みQOL質問票データが確認されず。
- VF-14(Visual Function-14)データなし
- NEI-VFQ-25データなし
- PRIOデータなし
- 標準化された眼鏡非依存性率の正式データなし
出典:Ophthalmology Times Europe
⚖️ 他の多焦点IOLとの比較データ
🔬 RALV前臨床研究:直接比較(n=30)
研究デザイン
- Real Artificial Lens Vision(RALV)デバイス使用
- 健常被験者30名
- 散瞳下で3.55mm瞳孔収縮
- 実際のIOLを移植せずに比較
👁️ 視力比較結果(平均単眼logMAR)
| 距離 | Galaxy | 回折型三焦点 | 強化単焦点 | 統計的有意性 |
|---|---|---|---|---|
| 遠方 | -0.05 | 同等 | -0.05 | Galaxy = 単焦点(p=0.14)、Galaxy = 三焦点(p=0.993) |
| 中間 | 0.03 | 劣る | 劣る | Galaxy > 三焦点(p=0.005)、Galaxy > 単焦点(p≤0.001) |
| 近方 | 0.07 | 同等 | 劣る | Galaxy = 三焦点(p=0.315)、Galaxy > 単焦点(p≤0.001) |
📊 追加比較パラメータ
コントラスト感度
- Galaxy > 三焦点(統計的有意差あり)
- 高空間周波数でより良好
ハローサイズ
- Galaxy < 三焦点(p<0.001、有意に小さい)
- Galaxy ≈ 強化単焦点(同等サイズ)
患者嗜好
- 遠方・中間・近方全てでGalaxyを好む(p≤0.001)
- 「三焦点と比較してより自然で快適な光学系」
出典:ACMIT RALV研究
🏆 プレミアムIOL比較表
| 特徴 | RayOne Galaxy | 回折型三焦点(PanOptix等) | EDOF(Symfony等) | 強化単焦点(Eyhance等) |
|---|---|---|---|---|
| 視力範囲 | 全範囲(遠方~36cm) | 全範囲 | 遠方~中間(+機能的近方) | 遠方~中間 |
| 光損失 | 0% | 11-14% | 最小(Vivity: 0%) | 0% |
| デフォーカスパターン | 滑らか・連続的 | 波状(ピーク・谷あり) | 比較的滑らか | 限定的延長 |
| ハロー・グレア率 | 33%ハローなし、74%グレアなし | より高率 | 可変(Vivityが最低) | 最小 |
| ハローサイズ | 強化単焦点に近い | 大きい | 中程度~最小 | 小さい |
| コントラスト感度 | 三焦点より良好 | 単焦点より低下 | 良好~優秀 | 優秀 |
| 近方視力 | 優秀(0.07 logMAR) | 優秀 | 機能的~良好 | 限定的 |
| 神経適応 | より短期間(外科医報告) | 数週間~数ヶ月 | 中程度 | 最小 |
🏥 手術技術と臨床応用
💉 IOL挿入技術
デリバリーシステム
- RayOne完全プレロードインジェクター(Lock & Roll技術)
- 切開サイズ:ノズル1.65mm、2.2mmマイクロ切開
- ベベル角:45°
- デリバリー:片手プランジャー機構
手術手技
- RayOne EMVと同様の移植手技
- 重要:正しい向きのためレンズ展開に注意
- 最終位置への簡単な回転
- 標準的水晶体乳化吸引術と連続円形切開
- 学習曲線:他システムよりIOL排出が速い – 初期段階で認識向上が必要
特別な取扱い注意
- 粘弾性物質をカートリッジに注入(BSS不可)
- 特別な器具不要
- 嚢内での制御された展開
出典:Galaxy製品パンフレット、Review of Ophthalmology
🧮 IOL度数計算
推奨計算式とレンズ定数
| 計算式 | パラメータ | メーカー推定値 | IOLcon最適化値 |
|---|---|---|---|
| SRK/T | A定数 | 118.6 | 118.42 |
| Haigis | a0 | 1.044 | -0.365 |
| a1 | 0.40 | 0.379 | |
| a2 | 0.10 | 0.158 | |
| Hoffer Q | pACD | 5.32 | 5.16 |
| Holladay I | SF | 1.56 | 1.42 |
| Barrett Universal II | LF | 1.51 | 1.51 |
| DF | 3.5 | 3.5 |
推奨アプローチ
- Barrett Universal IIが多施設研究で最も一般的
- RayTrace Online Premium IOL Calculator使用を推奨
- 軽度残余遠視を目標(「first plus」)
- 初期結果に基づいて定数を個別化
出典:Rayner技術仕様書、RayTrace Calculator
✅ 適応症
👤 理想的な患者プロファイル
- 眼鏡非依存性を求める老視患者
- 信頼性の高い全距離視力が必要なアクティブライフスタイル患者
- 視覚アーチファクト(ハロー・グレア)に敏感で多焦点レンズに躊躇している患者
- 夜間運転者または精密作業・コンピューター作業従事者
- 片眼手術候補者(従来型多焦点より忍容性良好)
- 妥協を最小限に全範囲視力を望む患者
特定臨床シナリオ
- 白内障手術(通常および高級)
- 屈折矯正水晶体置換術(RLE)
- 角膜乱視1.0-4.5D(Galaxy Toricで)
- 多焦点レンズ不耐性の既往がある患者
🚫 禁忌
絶対的禁忌
- 活動性眼感染症・炎症
- コントロール不良緑内障
- 角膜拡張性疾患(円錐角膜等)
- トーリックIOLで矯正できない不正乱視
- 重度黄斑病変
- 非現実的な患者期待
相対的禁忌
- 大きな瞳孔(ディスフォトプシアリスク増加、ただし三焦点より軽減)
- 重度ドライアイ(術前最適化要)
- 弱視・斜視
- 過去の角膜屈折矯正手術(慎重な計算必要)
- 不安定屈折
- 神経適応に影響する認知障害
重要な患者選択注記:「全ての患者が候補ではない」 – 全ソースで強調
出典:Harley Vision比較記事、Specialty Vision
⚠️ 合併症と対処法
🔧 術中合併症
限定的データ(2024年9月発売、6,000眼以上移植済みだが重大合併症の広範な報告なし)
潜在的問題
- 急速なレンズ排出:他システムより速いデリバリー – 術者認識必要
- 嚢破損:標準的IOL手術リスク
- チン小帯離開:標準的リスク
- 後嚢破損:標準的リスク
🩺 術後合併症
後発白内障(PCO)
- まだ特定データなし(新しすぎる)
- PCO最小化設計機能:Amon-Apple 360°スクエアエッジ、6.0mm光学部、AVH技術
- 治療:発生した場合はNd:YAGレーザー後嚢切開
IOL偏心・傾斜
- 優れた安定性:3-6ヶ月で平均0.08mmオフセット
- AVH技術が安定性提供
- 閉ループハプティック設計
IOL回旋(トーリック)
- 平均回旋:3-6ヶ月で1.83°
- 優れた回旋安定性報告
ディスフォトプシア
- 陽性(ハロー・グレア):三焦点と比較して著しく軽減、発現時も軽度
- 一般的に神経適応で改善
- 陰性ディスフォトプシア:特に報告なし
😟 不満患者の管理
管理アルゴリズム
- 評価:残余屈折異常、PCO、ドライアイ、黄斑病変を除外
- 保存的管理:3-6ヶ月の神経適応期間、屈折矯正、ドライアイ治療
- 外科的介入(保存的治療失敗時):単焦点への交換、異なるプレミアムIOLへの交換
- 継続的カウンセリング
RayOne Galaxy特有データ
- 「圧倒的に肯定的」な患者フィードバック
- 92%が20/25視力達成
- 三焦点より低い不満率が予想される
出典:Eye and Vision誌、miVision Journal
🔬 最新研究動向と進行中臨床試験
🇺🇸 米国FDA IDE研究(登録完了)
研究名:RayOne Galaxy IOL治験機器免除研究
状況:登録完了(2025年2月)
研究詳細
- デザイン:前向き、多施設、ランダム化、マスク、実薬対照
- 対照:単焦点IOL
- 主要施設:Vance Thompson Vision(ミネソタ州)
- 登録期間:初回移植から最終登録までわずか18週間(IOL研究としては驚異的速度)
- フォローアップ:術後4-6ヶ月
- 期待データ公開:2026年(FDA申請と共に)
- FDA承認目標:2026年(暫定)
研究責任者フィードバック
- Dr. Deborah Ristvedt:「RayOne Galaxy IOLは真に画期的な進歩であり、この研究に参加できて非常に興奮している。患者の結果は非常に有望で、全員が良好である」
- Dr. Eric Donnenfeld:「私はこの多焦点レンズを約30眼に移植した…視力の質は優れており、患者は極めて満足している…非常に高品質のレンズであり、グレアとハローの訴えがほとんどない」
出典:Ophthalmology Management、Eyes On Eyecare
📢 学会発表
ESCRS 2024(バルセロナ、2024年9月)
主要発表イベント
- Raynerシンポジウム:「Galaxy Spiral IOL:世界初の臨床データ」(2024年9月8日)
- 8名の世界的術者による初期臨床所見発表
- RayOne Galaxy of 初公開プレゼンテーション
特定プレゼンテーション
- Amon et al. RALV研究
- 30名健常被験者での前臨床比較
- Galaxy vs. 三焦点 vs.強化単焦点
- Galaxyが三焦点に匹敵する視力範囲を提供
- ハローが有意に少ない
- RayPRO研究早期結果
- 26カ国、2,500人以上の患者
- 光現象(ハロー・グレア)が眼鏡非依存性より満足度に大きく影響
ESCRS 2025(コペンハーゲン、2025年9月)予定発表
確認済み今後のプレゼンテーション
- 「AI設計RayOne Galaxy多焦点IOL両眼移植後の臨床結果と患者満足度」
- 「Rayner Galaxy IOL両眼移植後の視力成績、ハロメトリー、患者報告アウトカム」
- 「RayOne GalaxyとRayOne Trifocal間の視力とディスフォトプシア現象の比較」
- 「早期・中期臨床成績:視力の質、コントラスト感度、デフォーカス曲線の前向き評価」
- 「4つの主要全範囲視力IOL(Galaxy、PanOptix、Odyssey、PureSee)の視力パフォーマンスとデフォーカス曲線」
APAO-AIOC 2025(ニューデリー、2025年1月)
インド発売シンポジウム
- Dr. Sri Ganesh(インド)、Dr. Aanchal Gupta(オーストラリア)発表
- 92%の患者が20/25視力達成
- 高空間周波数でもコントラスト感度正常範囲内
出典:Cake Magazine
📚 査読付き論文の状況
重要な制限:2025年10月時点でRayOne Galaxy IOLに特化した査読付き論文はゼロ
関連基礎研究
Galinier L, Renaud-Goud P, Brusau J, et al.
“Spiral diopter: freeform lenses with enhanced multifocal behavior”
Optica. 2024;11(2):238-244
DOI: 10.1364/OPTICA.507066
発行日:2024年2月
- スパイラルレンズ概念の一般的説明
- RayOne Galaxyに特化したものではない
- スパイラルディオプター技術の概念実証
- LP2N研究所(フランス)により独立開発
注意 この論文は類似スパイラル技術を説明していますが、RayOne Galaxy IOL開発との関連は確認されていません。Raynerは独自にDr. João Lyraと共にAIベース設計を用いてGalaxyを開発しました。
出典:ResearchGate、Optica News
🔮 新興研究トピック
特定された主要研究テーマ
- AI駆動型IOL設計:AIエンジンを使用した初のIOL、患者アウトカムで訓練されたAIによる最適化
- 非回折型全範囲視力:回折型多焦点技術からの脱却
- ディスフォトプシア低減:ハロー・グレア最小化への重点
- 光学渦技術:IOL設計への光学渦原理の新規応用
- 患者報告アウトカム(PROMs):RayPROデジタルプラットフォームによる実世界データ収集
- 比較有効性研究:三焦点IOL、EDOF、強化単焦点との直接比較
- 特殊集団:LASIK術後患者、高度近視患者、低角膜乱視患者
📅 長期アウトカムデータ
状況
まだ利用不可
現在のフォローアップ期間
- 最長フォローアップ:3-6ヶ月(2025年11月時点)
- 前臨床評価:1ヶ月および3ヶ月
- 米国IDE研究:4-6ヶ月(継続中)
期待される長期データ
- 米国IDE研究が12ヶ月データ提供(2026年予想)
- 欧州市販後サーベイランス継続中
- 2年以上のデータ 早くて2027年まで期待できない
注記 発売時期(2024年9月)を考えると、2年以上の長期データはまだ存在し得ません。
🌐 規制状況
🇪🇺 CEマーク(欧州)
- 承認済み、商業的入手可能
- 限定リリース:2024年10月~12月
- 全面商業リリース:2025年1月
- 移植レンズ数:2025年1月時点で6,000眼以上
🇺🇸 FDA(米国)
- 治験機器(IDE研究)
- IDE研究登録完了(2025年2月)
- 承認予想:2026年
- まだ米国では商業的入手不可
🇮🇳 インド
- 2025年1月発売(APAO-AIOC)
- 発売直後から全国で入手可能
出典:Rayner全面リリースニュース
⚠️ 研究の限界とギャップ
🔍 現在のエビデンスの重大な制限
- 査読付き論文なし:PubMed索引ジャーナルに発表された論文ゼロ(2025年10月時点)
- 検証済みQOL質問票なし:VF-14、NEI-VFQ-25、PRIOデータなし
- 短期フォローアップ:最長3-6ヶ月のみ
- 小サンプルサイズ:主要アウトカムで25-57患者
- 直接比較RCTなし:特定競合IOLとの研究なし
- レジストリーデータなし(新しすぎる)
- 合併症データ限定:摘出、再手術データなし
- 長期データなし:1年、5年アウトカムなし
📊 データ品質評価
エビデンスレベル
- 主にレベル4-5エビデンス(症例シリーズ、専門家意見、メーカーデータ)
- 学会発表はまだ査読されていない
- 業界スポンサー評価
🔬 必要な今後の研究
- 即時:前臨床評価データの査読付き論文発表
- 短期(2025-2026):米国IDE研究結果、12ヶ月アウトカム
- 中期(2026-2027):独立比較RCT、レジストリー研究
- 長期(2027以降):2年以上アウトカム、PCO率、摘出率
💡 結論と臨床的意義

🎯 主要所見の統合
RayOne Galaxy IOLは、老視矯正IOL技術における重要な進歩を代表する可能性があります、
技術的革新
- 世界初のAI設計スパイラルIOL
- 非回折型設計による0%光損失
- 瞳孔径に依存しない多焦点性
- 数学的に確立された光学原理(スパイラルディオプター)
臨床的有効性
- 全距離で0.1 logMAR以下の視力(96-100%達成)
- 約4.0D範囲で連続的な視力
- 三焦点レンズと比較してディスフォトプシア劇的低減(33%ハローなし、74%グレアなし)
- 三焦点より優れたコントラスト感度
- 高い初期患者満足度
比較優位性
- 三焦点の視力範囲 + 強化単焦点のディスフォトプシアプロファイル
- RALV研究で中間視力が三焦点より有意に良好(p=0.005)
- ハローサイズが強化単焦点に類似(三焦点より有意に小さい、p<0.001)
🏥 臨床実践への含意
理想的な候補
- アクティブライフスタイルで全範囲視力が必要
- 夜間運転や精密作業従事者
- ディスフォトプシアに敏感で三焦点レンズに躊躇
- 高い眼鏡非依存性と良好な夜間視力の両立を希望
注意すべき点
- 長期データが限定的(最長6ヶ月)
- 査読付き論文なし
- 一部患者は細かい文字には眼鏡必要の可能性
- 慎重な患者選択と期待管理が重要
- 「全ての患者が候補ではない」
📈 研究品質評価
強み
- 多施設国際評価(10カ国、経験豊富な術者)
- RALV前臨床研究による客観的比較データ
- 複数の研究者間で一貫した肯定的所見
- 急速な臨床採用(6,000眼以上)
弱点
- 査読付き論文なし
- 短期フォローアップのみ
- 独立(非メーカースポンサー)研究限定
- 発表バイアスの可能性(肯定的早期結果のみ)
🎓 最終評価
RayOne Galaxy IOLは概念実証段階から早期臨床成功への移行期にある革新的技術です。初期データは極めて有望であり、三焦点レンズの視力範囲と強化単焦点/EDOFレンズの視力質を組み合わせるという長年の目標に近づいている可能性を示唆します。
しかし、確定的推奨には以下が必要
- 主要眼科学ジャーナルでの査読付き論文発表
- 1年以上の長期アウトカムデータ
- 確立されたプレミアムIOLとの独立比較RCT
- 実世界レジストリーデータ
- PCO率、摘出率、長期安全性プロファイル
👨⚕️ 臨床医への推奨
この技術は有望ですが、慎重な患者選択、徹底したインフォームドコンセント、現実的な期待設定、継続的な結果モニタリングが不可欠です。長期データが蓄積されるまで、early adopter surgeonは結果を慎重に追跡し、エビデンスベースに貢献すべきです。
当院では、患者さんと十分なカウンセリングを行い、このレンズの潜在的なメリットとリスクを説明した上で、個々の患者さんのライフスタイルや視力ニーズに最も適したIOLを選択するようにしています。
❓ よくある質問(FAQ)
- RayOne Galaxy IOLは従来の多焦点レンズとどう違うのですか?
- RayOne Galaxyは回折型ではなくスパイラル型の光学設計を採用しています。これにより、従来の回折型多焦点レンズで避けられなかった15-20%の光損失がゼロになり、ハローやグレアといった副作用を大幅に低減できます。臨床研究では、33%の患者がハローなし、74%がグレアなしと報告しており、これは従来の三焦点レンズでは達成できなかった数値です。
- どんな人に適したレンズですか?
- 以下のような方に特に適しています。
- 眼鏡なしで遠くから近くまで見たい方
- 夜間運転を頻繁にする方
- ハローやグレアに敏感な方
- コンピューター作業や精密作業をする方
- アクティブなライフスタイルで全距離での視力が必要な方
ただし、全ての患者さんが候補となるわけではありません。眼科医による詳しい検査と相談が必要です。
- 手術後どのくらいで視力が安定しますか?
- 臨床研究によると、術後1ヶ月で既に優れた視力が得られており、3ヶ月時点では全距離で0.1 logMAR以下(20/25以上に相当)の視力を達成しています。神経適応(脳が新しい視力に慣れること)は従来の多焦点レンズより短期間とされていますが、個人差があります。通常、数週間から数ヶ月で最適な視力に到達します。
- ハローやグレアは全くないのですか?
- 完全にゼロではありませんが、従来の三焦点レンズと比較して大幅に低減されています。研究では、33%の患者がハローなし、74%がグレアなしと報告しており、症状がある場合も大多数が「軽度」と評価しています。ハローのサイズも強化単焦点レンズに近く、三焦点レンズより有意に小さいことが確認されています(p<0.001)。
- 近方視力はどのくらいですか?眼鏡は必要ですか?
- 臨床研究では、両眼での非矯正近方視力が0.06 logMAR(約20/23に相当)、88%の患者が0.1 logMAR以下を達成しています。約36cm(読書距離)まで良好な視力が得られます。ただし、非常に細かい文字を読む場合や長時間の読書では、軽度の老眼鏡が必要になる可能性があります。個人のニーズや目標視力によって異なりますので、術前に眼科医と十分に相談することが重要です。
- 日本で手術を受けることはできますか?
- 2025年11月時点では、RayOne Galaxy IOLは欧州(CEマーク承認済み)、インド、その他80カ国以上で入手可能ですが、日本での承認状況については確認が必要です。米国ではFDA治験が進行中で、2026年の承認が見込まれています。日本での導入時期については、製造元のRayner社または日本の販売代理店にお問い合わせください。
- このレンズの長期的な安全性は確立されていますか?
- RayOne Galaxyは2024年9月に発売された新しいレンズであり、現時点(2025年11月)では最長6ヶ月のフォローアップデータのみです。2年以上の長期データは2027年まで期待できません。ただし、初期の臨床データ(6,000眼以上の移植)は非常に良好で、重大な合併症は報告されていません。レンズの材質や設計(Amon-Appleスクエアエッジ、AVH技術など)は後発白内障を最小限に抑える特徴を持っています。米国FDA研究の結果は2026年に公開予定です。
- 白内障手術と同時に入れることはできますか?
- はい、RayOne Galaxyは白内障手術時に使用する眼内レンズです。白内障で濁った水晶体を取り除いた後、その代わりにこのレンズを移植します。また、白内障がない場合でも、強度の老視矯正を目的とした屈折矯正水晶体置換術(RLE)にも使用できます。トーリックモデルもあるため、角膜乱視(1.0-4.5D)も同時に矯正可能です。
- 手術のリスクはありますか?
- RayOne Galaxyの移植は標準的な白内障手術と同様の手技で行われ、リスクも一般的な眼内レンズ手術と同程度です。潜在的なリスクには、感染症、眼内炎症、後嚢破損、IOL偏心などがありますが、経験豊富な眼科医が行えばこれらのリスクは非常に低いです。研究では優れた安定性(平均偏心0.08mm、回旋1.83°)が報告されています。ただし、全ての患者さんが候補となるわけではなく、緑内障、重度黄斑病変、角膜疾患などがある場合は禁忌となることがあります。
- 費用はどのくらいかかりますか?
- RayOne Galaxyはプレミアム眼内レンズに分類されるため、標準的な単焦点レンズより高額になります。具体的な費用は国や施設によって異なり、保険適用の有無も地域によって異なります。日本では多焦点レンズは選定療養として一部が保険適用となる場合がありますが、詳細は各医療機関にお問い合わせください。費用対効果を考える際には、眼鏡非依存性による生活の質の向上も考慮に入れることが重要です。
●多焦点眼内レンズRayOne Galaxyについてはこちらのページをご覧ください。
●当院取扱い多焦点眼内レンズ・単焦点眼内レンズについてはこちらのページをご覧ください。
📚 参考文献・情報源
本記事は以下の信頼できる情報源に基づいています。
メーカー公式文書
1. Rayner公式製品ページ
2. Galaxy製品パンフレット(PDF)
3. 技術仕様書(PDF)
4. 全面商業リリースニュース
5. RayTrace IOL計算機
臨床研究データ
6. Redefining Vision: 多施設臨床評価報告
7. Ophthalmology Times Europe記事
8. miVision Journal 2025年4月号
9. Cake Magazine: インド発売報告
学会発表
10. ACMIT RALV研究(ESCRS 2024)
11. ESCRS 2025予定発表
12. ESCRS 2024デビュー報告
臨床試験・規制
13. Ophthalmology Management: 米国IDE研究完了
14. Eyes On Eyecare: 研究登録完了報告
15. FDA MAUDE データベース
査読付き関連論文
16. Galinier L, et al. Spiral diopter. Optica. 2024;11(2):238-244
17. ResearchGate論文全文
18. DOI: 10.1364/OPTICA.507066
技術解説
19. Dr. Gatinelによるスパイラル光学解説
20. Optica ニュースリリース
業界ニュース・評価
21. Optometry Times
22. Ophthalmology Times
23. Eyewire News
24. Review of Ophthalmology: プレミアムIOLパイプライン
独立評価・比較
25. Southeast Eye Surgeon: Galaxy IOL評価
26. Harley Vision: 次世代視力矯正
27. Harley Vision: Galaxy vs. Odyssey比較
28. Specialty Vision記事
手術技術・IOL計算
29. Review of Ophthalmology: プレロードインジェクター
30. Barrett Universal II計算機
合併症管理
31. Eye and Vision誌: IOL合併症管理
32. EyeWiki: 後発白内障
本記事は医学的情報を提供することを目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。RayOne Galaxy IOLの適応については、必ず眼科専門医にご相談ください。本記事の情報は2025年11月時点のものであり、今後の研究により変更される可能性があります
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免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。


