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Clareon PanOptix Proの超速報と推論

極早期成績では

  • 有効光量 88%→94%
  • Continuous range of vision(中間視力↑)
  • 夜間Glareが改善している
  • コントラストが向上

といったところが、数年前から開発の段階で言われていいたことです。

PanOptix Proの構造は未公開
私が学会、文献などを見て思うこと、を最新の情報を含めて以下に書きます。

ENLIGHTEN® NXT Opticalテクノロジー

Clareon Panoptix ProのFDA市販前承認は、親モデル(Panoptix)に対する軽微な光学的変更に関するものです。この「軽微な光学的変更」が、光散乱を低減することが可能となっている可能性があります。問題は、この軽微な光学的変更の本質は何なのかということです。

光の散乱、ミー散乱の減少

ミー散乱では、光はあらゆる方向に散乱しますが、前方、つまり眼や回折型IOLの場合、網膜に向かう方向への光の強度が強くなります。したがって、眼科学では、前方散乱と後方散乱という2種類の光散乱が関係しています。光学的不均一性が大きい場合(回折段差やリング)、ミー散乱、つまり網膜上での光の前方散乱が発生し、患者のコントラストを低下させる「輝度のベール」を作り出します。これは光学的には迷光と呼ばれることが多く、特にグレアがある場合に視力を低下させます。

Panoptix Pro による「マイナーな設計変更」の可能性

回折型眼内レンズ(IOL)のステップやリングのエッジでは、光の散乱が主に発生することは広く認められています。これは驚くべきことではありません。回折とは、エッジにある障害物やスリットに当たった光が拡散することで生じる現象だからです。このスリットやステップ(IOLの場合)のエッジが十分に滑らかであれば、回折光の多くは不均一となり、網膜上で散乱します。これが「光のベール」を作り出し、グレアや光現象に大きく寄与する可能性があります。そのため、今日では多くの企業が回折型眼内レンズ(IOL)のステップやリングのエッジを滑らかにし、光の散乱を最小限に抑える取り組みに力を入れています。

PanOptixはもともと4焦点です。それを3焦点として販売しています。Panoptix Pro は、10 年前に発売されたオリジナルの Panoptix IOL から、回折ステップの直径 (4.5 mm)、ステップ数 (15)、回折要素/ブルズアイの中心のサイズ (1.164 mm) などの光学系の大幅な変更を受けていない可能性、つまり、4焦点に回帰したのではないか(ステップ数はそうなると一応少し増える)。大きなの違いは、迷光を作り出して患者のコントラストを低下させる可能性のある光のミー散乱を減らすためにステップを滑らかにしている可能性がある。

もう一つ、回折ステップを高くしている可能性があります。いわゆる色収差補正機能をもたせるということですが、これは昔からアルコンが取り組みたかった事項の一つでした。これを一部の回折リングに組み込んでいる可能性があります。

以上少ない情報を下に自分がアルコンならどうするかなと考えながらPanOptixProを予想してみました。多焦点市場において大きなインパクトとなるのは間違いないでしょう。

●当院取扱眼内レンズの情報は、こちらのページをご覧ください。

ASUCAアイクリニック 仙台マークワンは、眼内レンズ手術、硝子体手術、目の周りのまぶたなどを治療する手術専門クリニックです。
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記事監修者について

野口 三太朗

  • ASUCAアイクリニック 仙台マークワン 主任執刀医
  • 社会医療法人 三栄会 ツカザキ病院 眼科 医長
  • 日本眼科学会認定 眼科専門医

2006年、東北大学医学部卒業。その後、東北大学医学部眼科学教室、ツカザキ病院、石巻赤十字病院眼科などで経験を積む。2021年に大阪大学大学院博士課程修了。2022年、宮城県仙台市に位置する「ASUCAアイクリニック」の主任執刀医を務める。専門分野は白内障手術・網膜硝子体手術。
数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。
日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会ほかの各会員。医学博士。

免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。