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小切開眼内レンズ摘出と交換方法

今の眼内レンズ(IOL)摘出と交換

白内障手術後に眼内レンズ(IOL)が挿入されることは周知であり、眼科手術において最も多くIOL挿入術が施行されている。しかし、挿入することも多いが、摘出しなければならないことも少なくない。IOLを摘出する原因としては、度数違いのIOLを摘出交換する場合1、術後屈折誤差による患者クレーム等がまずあげられる。また、近年では白内障手術は老視矯正手術としての位置づけとして多焦点眼内レンズが移植されることが多くなっているが、多焦点眼内レンズが原因dysphotopsiaや photic phenomenaが原因でIOL摘出になる症例も多くなってきている。さらにはアクリル樹脂眼内レンズの混濁によるコントラストの低下や視力の低下でのレンズ摘出、チン小帯脆弱例によるレンズの偏心や脱臼、硝子体腔への落下によりレンズの摘出が必要となってくることがある。

IOLの種類と摘出方法

現状、眼内に移植されているIOLはPMMA、シリコン、疎水性アクリル、親水性アクリル素材のものがほとんどである。しかし、それぞれIOLの特性、性状がことなり、対応方法が異なってくる。いずれも光学直径は6ミリであるものがほとんどである。もちろん、全例、6ミリ近い切開をもうければ、摘出は可能となる。しかし、惹起乱視、術中の前房の不安定などが出てくるため、極力切開は小さく終了させるのが理想である。

PMMAは素材が硬く、眼内で切断することが困難であるため、6ミリ程度の切開は必須となる。

そのほかのレンズについては、現在主流のフォーダブルIOLで、柔らかく、眼内で変形、切断が可能なものである。もちろん、小切開で摘出するのが好ましい。

従来の眼内レンズ摘出(IOL分割法)

切開創を拡大せずに取り出すため、多くの術式が眼内でIOL光学部を切断する方法をとっている。しかし、それは、同時に眼内操作が増えるために、水晶体嚢後嚢の破損や角膜内皮細胞の損傷と減少を発生させるリスクを伴っている。IOL摘出時における後嚢破損の発生率は3.6~12%ていど発生すると報告されている。また、分割している最中に硝子体腔にIOLが落下してしまうということも発生しやすい。また、親水性IOLはレンズボリュームが大きく眼内での操作がやや煩雑となりやすい。また、プレート型であると更にレンズは大きく、眼内組織を損傷しやすい。さらには、シリコンIOLに至っては、レンズがつるつるしており、レンズの厚みも暑く、切断すること自体が非常に困難である。

親水性レンズの摘出(レンズグラバー法)

プレート型親水性眼内レンズが今までのアクリル樹脂と比較して、レンズサイズが大きいこと、つまりレンズ長径が長い、レンズの厚みが厚い、非常に柔らかく、ちぎれやすい。そのため、レンズ摘出にはメイン創口を広げる、レンズを眼内で分割するなどの操作が必要となってくる。プレート型親水性レンズが保険適応となったため、世界的にも日本は移植枚数が飛び抜けて多くなることが予想される。しかし、IOLの摘出が必要となった際に、非常に困ることが予想される。

通常の眼内鑷子で小切開からプレート型親水性レンズを摘出しようとすると、柔らかく、ちぎれてしまう。厚みもあるために一塊として摘出するのは困難で、切開創を広げる等の処置が必要となることが多い。しかし、レンズグラバーを用いる場合は、IOLを横断2分割し、2.0mm切開から摘出可能となる(図2)。

さらに、近年移植枚数が多くなっている、Phakic IOLにたいしても、鑷子自体がスリムであるため、水晶体と角膜にタッチすること無く、IOLを把持することが出来る。しかも、ワンアクションで切断せずに摘出可能である。

小切開眼内レンズ摘出と交換方法

疎水性アクリルIOL、シリコンIOLとレンズグラバー法

手術手技

手術手技としては把持したときに鑷子先端から置く角膜輪部に2.2mm角膜切開を作成する。抜去するアクリル樹脂IOLを虹彩上に置き、前房をOVDで全置換する。レンズグラバーにてレンズを深く把持する。このとき、ハプティクスの根部を一緒に把持するようにする。鑷子で最大限深くまで把持するようにする。ゆっくりと創口に向かってIOLを把持しながら引き抜く。このとき、引き出す方向は創口と同じ方向になるようにする。IOLがロールするため、虹彩を巻き込まないようにIOLの後極側も十分にOVDで空間を作るようにしておく。創口内にIOLをゆっくりと更に眼外へと引き出す。このときに無理に引き出さず、ゆっくりと引いているとIOLがロールして、引き延ばされた状態から元に戻ろうとする力で眼外へと出てくる。摘出されたIOLを確認して破損がないか、眼内に断片が落ちていないかを確認してIOL摘出が完了する。

同様にして、シリコンIOLもワンアクションにて摘出が可能であることを確認している。

小切開眼内レンズ摘出と交換方法

レンズグラバーを用いたプレート型親水性レンズ摘出は簡便で安全性も高い。更に、レンズグラバー法によるレンズ摘出は創の拡大が2.2mm切開にても2.3~2.5mm程度とわずかであり、創口拡大、手術操作の簡便さより大きなメリットがある。

眼科グラフィックに執筆させていただく機会がありました。

眼科グラフィックに執筆しました

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IOL把持鑷子20G Lens Grabber
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「野口三太朗のブログ」2023.02.19より再掲
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