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難症例 白内障手術 瞳孔拡張 カプセルサポート法 Xapnd

IOL&RSで執筆する機会がありました。数年前から私がおすすめしているデバイスと方法です。
覚え書きとして(*^_^*)

”XpandnNT X1 による瞳孔拡張とカプセルサポート”

白内障手術は最も多く行われる手術である。英国では33%が研修生によって白内障手術が施行されているとされる。さらに、白内障手術の1~3%は散瞳が不十分な小瞳孔(<4mm)に関連していると考えれており、通常術者にとっては瞳孔拡張デバイスの使用が必要とされている。小瞳孔の原因としては、術中フロッピー虹彩症候群(IFIS)、偽落屑症候群、虹彩後癒着、ぶどう膜炎などがこれに関連している。小瞳孔白内障手術では術中合併症が増加し、特に後嚢破損(PCR)の確率が2倍になるとされている1)。小瞳孔管理は薬理学的虹彩拡張、外科的切開拡張、または機械的虹彩拡大によって達成することが出来る。
虹彩低緊張を示すIFIS等については虹彩切開は禁忌で有り、また、手技の簡便さ等から近年は機械的虹彩拡大が好まれる傾向にある。虹彩拡大デバイスとしては瞳孔拡張リング、アイリスフック(アイリスリトラクター)が主である。中でも瞳孔拡張リングの使用が近年増えてきている。その理由としては操作が単純で余計な手術時間の延長が無いことがあげられる。瞳孔拡張リングにはMalyuginリング、i-Ring、XpandNT X1などが現在国内では用いやすい。中でもXpandはほかのリングよりも大きな可能性を秘めており、使用することになれていることは前眼部術者として重要かと思われる。

スペック
Nitirol ringで出来ており、継ぎ目が無く、一本のワイヤーリングからない形状記憶合金である。直径0.03mmの極細ワイヤーで形成されている。ポケット部分は0.8mmとやや幅広の形状である。8点で虹彩を保持する。6.7mmの瞳孔径を作成できる。

カプセルサポート法
瞳孔拡張リングとしては前述のようにほかにも2つほどがある。瞳孔を拡張させるという意味ではXpandはほぼ同じ機能である。素材の堅さ、使用後の眼内から眼外への弁出のし易さなどで選ばれるのもひとつであると思われる。しかし、Xpandにはもう一つの使い方がある。前嚢切開の切開縁と虹彩を一緒にXpandのポケットにかけることで、水晶体の硝子体腔への落下を防止することが出来る。

カプセルサポート法の臨床的意義
前嚢切開を施行後、切開縁に虹彩とともにかければ、前嚢が虹彩と一体となるため、水晶体嚢、水晶体が硝子体腔に落下するリスクが大きく低減できる。チン小帯脆弱例の多くは散瞳不良を併発していることも多く、一度瞳孔拡張として用いた虹彩下にかけたXpandをカプセルサポートとして使用することが出来る。Xpandは一人二役を演じることが出来る。

元々は瞳孔拡張リングとして開発されたデバイスではあるが、その素材形状の特徴を生かした、カプセルサポート法という非常に画期的な術式が開発された。白内障術者にはこれ以上無い術式では無いかと思われる。デバイスそのものは非常に小さく、持ち運び可能で、価格も非常に安価である。私自身もチン小帯脆弱症例の手術方法はカプセルサポート法でやりくりするようになった。水晶体処理は硝子体腔に落とすよりも前眼部で処理してしまった方が、圧倒的に短時間で済み、コストも安く眼にも優しい。

1)Narendran N., Jaycock P., Johnston R.L., Taylor H., Adams M., Tole D.M., Asaria R.H., Galloway P., Sparrow J.M.: The Cataract National Dataset electronic multicentre audit of 55 567 operations: risk stratification for posterior capsule rupture and vitreous loss. Eye 2009; 23: pp. 31-37.

XpandNT X1による瞳孔拡張とカプセルサポートIOL&RS 日本白内障屈折矯正手術学会雑誌 表紙

IOL&RS 日本白内障屈折矯正手術学会雑誌 目次

「野口三太朗のブログ」2023.01.07より再掲
https://ameblo.jp/noguchi-ophthalmologist/