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眼内レンズ交換に関する正確な情報の重要性

近年、全国から眼内レンズの入れ替えを希望する患者さんが増加傾向にあります。中には既に2回入れ替えを経験しながらも、合わないのでさらなる交換を望む方もいらっしゃいます。この現象の背景には、インターネット上の動画やウェブサイトで見られる情報があります。しかし、それらの情報の多くには誤りが含まれています。

現状の問題点

眼科クリニックのウェブサイトに掲載される情報は、しばしば眼内レンズを製造・販売する企業から提供されたデータや文章を基に作成されますが、これらにも不正確な内容が少なくありません。さらに懸念すべきは、レンズを販売する側や移植手術を行う眼科医の中にも、製品の特性や適応を十分に理解しないまま患者に説明し、手術を実施しているケースがあることです。
時間の経過した、眼内レンズの抜去自体は、ある程度の技術があれば施行は可能で有り、難しいことではありません。しかし、その後が最も重要であるということです。

初回挿入と二次挿入の重要な違い

特に重要なのは、「バージンアイ」(初めて眼内レンズを挿入する目)と「二次挿入」(既に眼内レンズが挿入されている目に対する交換)の区別です。二次挿入の場合、初回挿入と比較して臨床成績が著しく低下するレンズが複数存在します。このため、レンズ選択は患者の眼の状態によって大きく変わるべきものです。

眼内レンズ二次挿入の臨床的考慮点

医学文献によれば、二次挿入手術では以下のようなリスクが報告されています:

  • 解剖学的変化: 初回手術後、眼内の環境は変化しており、特に水晶体嚢(カプセル)の状態が二次挿入の成功率に大きく影響します。
  • 炎症リスクの増加: 再手術による組織へのストレスは炎症反応を促進させ、特に前回の手術から十分な時間が経過していない場合はその危険性が高まります。
  • 特定レンズの不適合: 一部の多焦点眼内レンズや調節性眼内レンズは、二次挿入においては期待通りの視機能改善が得られないことが複数の研究で示されています。
  • 合併症の発生率上昇: 嚢胞様黄斑浮腫、前房出血、続発緑内障などの合併症リスクが初回手術と比較して高くなることが知られています。

眼内レンズのみを固定する場合、初回固定よりも良い状況には絶対になりません。

適切な患者選択の重要性

眼内レンズ交換を検討する際は、以下の点を考慮すべきです:

  • 現在の視機能と不満の具体的内容を詳細に評価すること
  • 現在の眼内レンズタイプと眼内状態の詳細な検査
  • 二次挿入で期待できる現実的な視機能改善の範囲
  • やる場合とやらない場合のメリット、デメリットをしっかりと相談、理解
  • 代替手段(眼鏡、コンタクトレンズによる視力補正など)の検討

患者への適切な情報提供の必要性

患者が適切な意思決定を行うためには、手術のリスクとベネフィットについて明確で誤解のない情報が提供されるべきです。特に、マーケティング目的の情報と科学的根拠に基づく医学情報を区別することが重要です。
眼内レンズ交換の決断は、単に新しい技術への憧れや過剰な期待ではなく、個々の患者の眼の状態、生活スタイル、期待値を総合的に考慮した上で、眼科専門医との十分な相談を経て行われるべきものです。特に二次挿入を検討する場合は、その適応と限界について正確な理解が不可欠です。

上記のように、眼内レンズ単体での移植では限界があります。だからこそ、私達は新しい未来を開くため研究しているのです。
医学には限界が有り、100%満足させる、全てが完璧というものを作り上げることもまた、不可能です。