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水晶体嚢のA細胞、E細胞について

水晶体嚢の細胞は内障(PCO)の病態生理を理解するうえで重要な要素の一つです。特に、**A細胞(Anterior cells)とE細胞(Equatorial cells)**の役割が注目されています。

  1. A細胞
  2. E細胞
  3. A細胞・E細胞のPCOにおける役割の違い
  4. 臨床的意義

1. A細胞(Anterior cells)

  • 分布: 水晶体嚢の**前嚢(anterior capsule)**およびその付近の内側に存在。
  • 特徴:

    o扁平または立方体の上皮細胞。
    o代謝が活発で、水晶体の透明性維持に関与。
    o手術後、炎症やサイトカインの影響を受けやすく、線維芽細胞様変化(上皮間葉転換, EMT)を起こしやすい。

  • PCOとの関連

    o**線維性PCO(Fibrous PCO)**の主な原因。
    oこれらの細胞が手術後に増殖し、後嚢に線維化を引き起こす。

2. E細胞(Equatorial cells)

  • 分布: 水晶体嚢の赤道部(equatorial region)、すなわち水晶体嚢の縁の部分に位置。
  • 特徴:

    o未分化な細胞で、活発な細胞分裂能を持つ。
    o水晶体の成長と新しい線維の産生に寄与。
    o後極部へ移動しやすく、PCOの原因となる。

  • PCOとの関連

    o**嚢胞性PCO(Elschnig’s Pearls)**の主な原因。
    o水晶体嚢内に増殖し、後嚢の中心部分へ侵入することで視軸を遮る。

3. A細胞・E細胞のPCOにおける役割の違い

種類 位置 役割 PCOへの影響
A細胞 前嚢およびその付近 代謝活動、前嚢の維持 EMTにより線維性PCOを引き起こす
E細胞 赤道部 細胞分裂と水晶体線維形成 増殖により嚢胞性PCO(Elschnig’s Pearls)を形成

4. 臨床的意義

  • 手術時の対策

    oA細胞をできるだけ除去することで、線維性PCOを予防可能。
    oE細胞の増殖を抑えるため、IOLのデザイン(鋭利な後部エッジの採用)が重要。

  • PCOの治療

    o線維性PCO → Nd:YAGレーザーでの切開が必要。
    o嚢胞性PCO → YAGレーザー。可能なら洗浄除去。

A細胞とE細胞はそれぞれ異なる形で後発白内障(PCO)を引き起こす。前者は線維性PCOに、後者は嚢胞性PCOに関与するため、手術技術やIOLデザインの選択がPCO予防において重要となる。

「後発白内障って?また白内障になる? ~後発白内障 (Posterior Capsule Opacification, PCO) に関する総述~」の記事を見る

ASUCAアイクリニック 仙台マークワンは、眼内レンズ手術、硝子体手術、目の周りのまぶたなどを治療する手術専門クリニックです。
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記事監修者について

野口 三太朗

  • ASUCAアイクリニック 仙台マークワン 主任執刀医
  • 社会医療法人 三栄会 ツカザキ病院 眼科 医長
  • 日本眼科学会認定 眼科専門医

2006年、東北大学医学部卒業。その後、東北大学医学部眼科学教室、ツカザキ病院、石巻赤十字病院眼科などで経験を積む。2021年に大阪大学大学院博士課程修了。2022年、宮城県仙台市に位置する「ASUCAアイクリニック」の主任執刀医を務める。専門分野は白内障手術・網膜硝子体手術。
数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。
日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会ほかの各会員。医学博士。

免責事項本記事は教育・情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。眼科治療を検討される場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。医学情報は日々更新されるため、最新情報の確認も重要です。