強膜内固定 固定位置での屈折 虹彩捕獲の違い
Journal of Clinical Medicine に強膜内固定術の報告がアクセプトされました。
https://www.mdpi.com/2077-0383/12/5/1815
眼内レンズが嚢内に固定できないということは多々あります。現状では強膜内固定術が一般的かと思います。勿論完璧なものではなく様々な疑問点が臨床的には残ります。
その中で私が今回臨床研究として報告したことは、レンズの固定位置により何が変わるのかということです。固定位置が変わると様々なことが変わってくるのではないかというのは臨床的に感覚的にわかってはいるが、数値としてどうかということはわかっていないのが現状でした。
詳しくは本文をお読みいただければと思いますが、簡単に内容を示します。
目的
強膜内固定フランジ法によるIOL固定で角膜輪部からの距離で固定位置や術後屈折、虹彩捕獲発生についての関係を調べること
方法
角膜輪部から1.5mmでの強膜内固定(ISF 1.5mm)は連続45症例、2.0mmの強膜内固定(ISF 2.0mm)は連続55症例、通常白内障手術(超音波乳化吸引術 PEA+IOL)、嚢内固定を行ったZCB00の連続50症例を対照とした。手術はすべて同一術者にて行われた。術後3ヶ月での、前眼部OCTを用いての前房深度(ACD)、SRK/T式での予測前房深度との差(ACD-SRK/T)、manifest refraction spherical equivalent(MRSE)とSRK/T式での予測屈折値との差(MRSE-SRK/T)、累積屈折誤差を計算した。また術後虹彩捕獲の発生した症例の有無についても検討した。統計学的検討はISF 1.5mmとISF 2.0mmの虹彩捕獲についてはカイ二乗検定、それ以外はTurkey Kramer testにてp<0.05を有意とした。
結果
ISF 1.5、ISF 2.0、ZCB (ISF1.5 vs ISF 2.0, ISF 1.5 vs ZCB, ISF 2.0 vs ZCB)について以下に示す。MRSE-SRK/Tは-0.59±0.15D、0.02±0.14D、0.00±0.14D(P<0.05, between ISF1.5 vs ISF 2.0 and ZCB))であった。ACDはで4.00±0.44mm、4.17±0.40mm、4.29±0.25mm( P<0.05, ISF1.5 vs ZCB)であった。ACD-SRK/Tは-2.03±0.60mm、-1.98±0.63mm、-1.60±0.33mm( P<0.05, between ZCB vs ISF1.5 and ISF 2.0)であった。累積屈折誤差の±1D以内の率については、69.77%、74.46%、97.88%であった虹彩捕獲はISF1.5mm群で男性4眼、ISF2.0mm群では男性2眼、女性1眼、ZCB群では0眼で両群に差は認められなかった(P=0.519)。
結論
ISFの1.5mmと2.0mmの屈折誤差と前房深度の違いは0.6D近く遠視で、0.17mm深化している。ISF2.0mmは嚢内固定と同程度の術後屈折になりやすく、屈折誤差はISF1.5mmよりも少なくなる。しかし、ISFで1.5mmと2.0mmで固定位置を変えても大きく虹彩捕獲発生をなくすことはできない。
ということで、臨床的にとても影響力のある内容かと思います。さらに手術をブラッシュアップし、より良い結果を患者さんに還元できるのでは無いかと思います。自分自身も新しい術式へと変遷しており臨書研究はとても大事だと思います。逆に臨床研究をしていないということは、臨床的に最先端ではないことは間違いないと思います。
先生方を含めて何か気になる点や質問などがあれば是非ご連絡いただければと思います。
また、これに続く臨床研究も始まっているのでどこかのタイミングでうまく報告できればとと思います。
「野口三太朗のブログ」2023.03.02より再掲
https://ameblo.jp/noguchi-ophthalmologist/