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Tecnis Odyssey テクニス オデッセイ

基本情報

メーカー Johnson & Johnson VISION社 (アメリカ)
発売年 2024年
種類 多焦点眼内レンズ
トーリック あり

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※「実臨床、自験例」は臨床結果を元にした、当院主任執刀医:野口三太朗医師独自の情報です。医師紹介を見る

メーカー情報

TECNISプラットフォームをベースとした新たな連続焦点IOLである、TECNIS Odysseyがアメリカに次いで2番目に日本で販売が開始される。
TECNIS OdysseyはFreeformテクノロジーによって光学部が最適化された新たな連続焦点 / Full Visual Range IOLです。

Tecnis Odysseyの表面はより高精度にデザインされています。

●Tecnis Odysseyの目指す特徴

  • 遠方から近方まで連続的範囲で視力を維持
  • 残余屈折に対する高い耐性
  • 夜間光視症の軽減
  • 昼夜を問わず質の高い見え方を目指す
(1)遠方から近方まで連続的範囲で視力を維持
ACEモデルにおける白色光下3mm瞳孔でのMTF測定値下面積から算出したデフォーカスカーブ
(2)残余屈折に対する高い耐性
単眼裸眼遠方視力20/25以上を達成した割合
(3)夜間光視症の軽減
Tecnis Odysseyと他3焦点IOLとの夜間光視床の比較
(4)昼夜を問わず質の高い見え方
Tecnis Odysseyと他3焦点では明所では1.4×、暗所では2.2×のイメージコントラストが期待できます。

実臨床、自験例

Tecnis Odyssey(Johnson & Johnson Vision社)は、エシェレット回折技術を進化させた最新のEDOFレンズ。シンフォニー(Symfony)→シナジーの後継モデルで、特に中間視力が強化されており、連続的な視力範囲を提供します。従来のEDOFレンズよりも近方視機能が向上していることが特徴。

TECNIS OdysseyはFreeformテクノロジーによって光学部が最適化された新たな連続焦点 / Full Visual Range IOL。Tecnis Odysseyの表面はより高面精度に作成されている。

図1 SynergyとOdysseyの回折格子

Synergyは中間距離、近方での視力が非常に良好で、現存する回折型多焦点IOLの中で、中間、近方に関してはトップクラスの数字上の視力が出やすい。Johnson&Johnsonらしい、数字上の視力にこだわった製品であった。しかし、同時に、遠方視力がたまに不良であることや、コントラストの悪化を自覚される症例の報告が上がっている。さらには、夜間のグレアが強めであることも報告されている。その中でも特にスターバーストが強めとされてきた。
このような問題点を解決するべく開発されたレンズがOdysseyである。

まず、変更点を一つずつ説明する。
❶回折格子の全体的なピッチと組み合わせ、デザインが変更となった。詳しくは述べないが、図のように肉眼的にみても異なることがわかる。
❷回折格子のエッジ部分が2/3 で鈍的になっている。これは、エッジグレアの発生を抑制しようとした結果ではないかと思われる。
❸回折格子の高さがSynergyよりも少し低くなっている(図1)。

変更とならなかった点として、
❶full diffraction designである。
❷テクニスオプティブルーがプラットフォームとなっている。
❸Toric モデルはシャープエッジハプティクスであるToric2であるということ。
❹いずれも色収差補正を目的としたデザインが組み込まれているということである。

Johnson&Johnsonの企業宣伝としては、夜間グレアの大幅な改善、屈折誤差の耐性がある、近方視力はSynergyと変わらないか若干悪い程度、Synergyの進化系レンズである。とのことであった。

臨床成績

以下のような傾向にあるようである。視力について、5mの遠方視力は非常に良好で従来のレンズよりも良い視力を提供する可能性がある。しかし、1mの視力の落ち込みと40~30cmでの視力が他の高加入他焦点眼内レンズよりも視力が弱いようである(図2)。

図2 Odyssey(DRV)とMF(多焦点レンズ)とDFR(Synergy)の全距離視力 DRNは症例数がまだ一定以下のためある程度参考値

視力の特性を活かし患者の要望にマッチさせるように選ぶ必要がある。夜間グレアはSynergyから臨床的にも改善している。Glareは変わらずある。レンズ代がリーズナブルであればかなりの数の患者に対して移植していけるレンズかと思われる。近方視力を強く希望する患者には不適かもしれないが、いい勘所、比較的良好なバランスを図っているように思われる。

デメリット

グレアに関して、残念ながら、全くグレアが消失しているということは無いようである。現状当院での成績では、Synergyとくらべ、少し、光源中心部分とやや離れた距離でのスターバースト、グレアが改善している。しかし、グレア自体はしっかりとあり、それがないということを目的に移植することは厳禁である。

遠方コントラストは比較的よく、多焦点IOLではあるが、遠方確保、遠方重視には良い選択肢となり得る。

メリット
  • 遠方視力1.0以上の実現率が高い
  • 長期安定性の高いテクニス、オプティブループラットフォーム
  • Glareが軽度軽減されている(Synergyと比較)
  • 0.7~0.4mの視力が連続的に0.6くらい (logMAR 0.2)
  • 高加入多焦点IOLの中で非常に高いコントラスト
  • 遠方視力1.0の実現率が高い
デメリット
  • 近方視力が物足りない0.3m 視力が0.5くらい(logMAR 0.3)でシナジーのような近方視力は得られない。 グレアはある程度しっかりでる
  • T2トーリックが無い
  • Glare環境コントラストやや不良